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ナポリ近郊に、2000年以上も前に栄えた古代都市ポンペイの遺跡があります。この遺跡は、1997年に世界遺産に指定されました。
ポンペイは古代ローマ時代に栄えた都市で、紀元79年8月24日にヴェスーヴィオ山の噴火で一晩にして火山灰に埋もれてしまいました。
1763年に発掘が開始されると、石畳で舗装された道路、プールを備えた運動場、公衆浴場、居酒屋、パン屋、洗濯屋、娼館、野外劇場、円形闘技場、神殿、富裕層の邸宅など、当時の人々の日常生活の様子が分かるような建物が次々と現れてきました。
発掘の際、火山灰で埋もれた遺体が腐って無くなった部分が空洞になっているところがありました。そこに石膏を流し入れて固まってから取り出したところ、亡くなった当時の姿が再現されました。その石膏像は1000体以上もあり、その一部は遺跡内に展示されています。
農業と商業で栄えていたポンペイでは、現代の私たちの生活と比べて人々はかなり享楽的な生活を送っていたようです。
当時の富裕層たちにとって美食と浪費がステイタス・シンボルで、豪華な邸宅で半日以上も昼風呂を楽しんだり、毎晩のように友人・知人を招いて奴隷が作ったご馳走を食べながらの宴会が催されていました。
富裕層だけではなく、一般市民の生活も快楽主義的なものでした。働くのは午前中だけで、昼食後は昼寝、その後は公衆浴場での入浴や屋外劇場での観劇をしたり、闘技場へ出かけたりしていました。
特に闘技場での剣闘士同士の戦いが一番人気で、ポンペイ市民のほとんどが見に行ったとか。一番人気の剣闘士が出場すると大盛況となり、人気の剣闘士が戦いで亡くなると町中の女性が泣いたという落書きが残っています。
公衆浴場には運動場も併設されており、まさに現代のスポーツクラブのようなものでした。利用料は、入浴料と合わせても1日のパン代より安く、市民の交流の場でありました。
市内の通り沿いには、パン屋、ケーキ屋、惣菜屋、居酒屋などの飲食店が200軒以上あり、特にワインと軽食を提供する居酒屋が多かったようです。
一般市民の住宅内にある台所には簡易なかまどや食器がある程度で、凝った料理ができるような設備が見られないことから、自炊はあまりせず外食をしたりパンや惣菜などを買ったりしていたのではと考えられています。
ポンペイ遺跡の中心部から外れたところに秘儀荘があります。
秘儀荘には大小様々な90もの部屋があり、ワイン製造所も発見されました。ここでの見どころは、建物内部の壁に描かれた「ポンペイ・レッド」と呼ばれる独特の赤色を背景に、「ディオニュソスの秘儀」の様子を描いたフレスコ画です。
ポンペイ遺跡へは、ナポリ中央駅地下のGaribaldi 駅からヴェスーヴィオ周遊鉄道のSorrento行きに乗り約40分、Pompei Scavi(Villa Misteri)駅で下車、そこから約100m のところに遺跡の入口があります。
ポンペイ遺跡は、かつてはひとつの都市だったので大変広いです。主要なところに絞って見学しても2~3時間はかかりますし、外れたところにある秘儀荘も入れてじっくり見学すると丸1日はかかるかと思います。
そのため、やみくもに見学するより、あらかじめ見学したいところをピックアップしておいて、計画的に周る方がいいと思います。
また遺跡内は広いだけではなく迷いやすいので、お目当ての見学箇所を見つけるのに思いのほか時間がかかったり、そのため歩き疲れて見どころを逃してしまう恐れがあります。特に夏は日陰が少ないので、炎天下で徒歩での見学は大変です。
注: 夏はミネラルウォーターなどの飲物、帽子、サングラス、日焼け止めをご用意ください。また、遺跡内には飲食のできるレストハウスが1ヵ所しかありませんので注意。
時間が無い方や自分でポンペイ遺跡まで行くのが不安な方は、ローマやナポリ発着の日本語ガイド付日帰りツアーが便利です。
ツアーなら主要なところに絞って短時間に効率よく見学できますし、日本語ガイドの説明で当時のポンペイの様子をより深く理解することができます。
自分の足で歩いて見学したい方には、下記の日本語ガイドを読むのもいいでしょう。
ポンペイ遺跡の日本語ガイド(ポンペイ文化財保護局著)
http://pompeiisites.org/wp-content/uploads/Pompeii_JA.pdf
2000年近くも昔に、現代のスポーツジムや銭湯、劇場、スタジアムのような施設が既にあり、仕事は午前中だけで午後は上記の施設に出掛けるなど、一般庶民でも我々より豊かな生活を送っていた古代のポンペイ市民。その暮らしぶりを垣間見ることのできる、大変興味深い遺跡と言えるでしょう。
ポンペイ遺跡は、添乗員付きのパック旅行にも含まれている定番の観光スポットです。考古学が好きな方はもちろん、そうでない方も楽しめる遺跡だと思います。
ポンペイ遺跡公式サイト(日本語)
http://pompeiisites.org/en/info/?l=ja
是非、ローマ、又はナポリ滞在中に訪れてみて下さい。
フィレンツェ近郊には斜塔で有名な人気の都市ピサに加え、魅力的な小都市が点在しています。サンジミニャーノはそのひとつで、中世の塔が建ち並んでいる歴史地区は1990年に世界遺産に指定されました。
塔は当時の富裕層が自身の富と権力を誇るために、また敵の侵入を見張るため次々と建てられ最高72本を数える時期もありました。現在はわずか14本しか残っていませんが、市内の歴史地区は中世の雰囲気がそのまま残されています。
主な見どころはチステルナ広場 Piazza della Cisterna、ドゥオモ広場 Piazza del Duomo、現在は市立美術館となっているポポロ宮、Palazzo del Popolo 等があります。
チステルナ広場の「チステルナ」とはイタリア語で井戸を意味し、その名の通りその広場中央には13世紀の古井戸があります。また、この広場の周囲には12~13世紀ごろの塔や建物があり中世の趣がよく残っています。
チステルナ広場から左に進むと、ドゥオモ広場 Piazza del Duomo があります。この広場も中世の雰囲気がよく残っており、その名の通りドゥオモ(参事会教会)と、13世紀建造のポポロ宮(市立美術館)があります。
ポポロ宮の脇には14世紀に建造された高さ54mの大きな塔 Torre Grosso がありますが、この塔には美術館内から上ることができます。塔からは、町を一望できる素晴らしい眺めが堪能できます。
イタリアのカーニバルといえばベネチアのが有名ですが、サンジミニャーノでも毎年2月の毎日曜日にカーニバルが開催されます。
サンジミニャーノのカーニバルについて(イタリア語)
https://www.sangimignano.com/it/eventi/carnevale-di-san-gimignano/
ベネチアのカーニバルは中世の衣装を纏い仮面を付けた人々が練り歩くというものですが、サンジミニャーノのは大きな山車のパレードが見ものです。この山車は、「パピエ・マルシェ」という紙粘土のような手法で作られています。
他にもサンジミニャーノでは、様々なイベントが開催されています。
サンジミニャーノ観光案内所 公式サイト(英語版)
https://www.sangimignano.com/en/
サンジミニャーノへの行き方ですが、鉄道駅が無いため公共交通機関で行くにはプルマン(中距離バス)しかありません。しかもフィレンツェからのプルマンは直通のものが無く、途中のポッジボンシというところで乗り換える必要があります。
また、時間帯や日によってはプルマンの乗り継ぎがあまり良くなく、ポッジボンシで無駄な待ち時間が生じる恐れがあります。特に日・祝日は平日に比べて、大幅にプルマンの本数が少なくなりますのでご注意を。(平日約15本、日・祝日約3本)
公共交通機関で行く場合は、サンジミニャーノ同様、フィレンツェ近郊のトスカーナの古都として世界遺産に指定されているシエナに1泊して、シエナから直通のプルマンで日帰りがいいのではと思います。フィレンツェからシエナへは、乗り換えなしのローカル列車やプルマンで行くことができます。
公共交通機関での移動が不安な場合は、フィレンツェ発着の日帰りツアーの利用が便利です。サンジミニャーノだけではなく、シエナも訪れることができます。
公共交通機関で、フィレンツェから日帰りでサンジミニャーノとシエナの両方を訪れるのは難しいですが、ツアーなら楽に簡単に2都市を観光できます。
アクセスがやや不便なサンジミニャーノですが、是非訪れてみてください。
フィレンツェ近郊に、世界遺産に指定されているトスカーナの古都シエナがあります。
中世の趣が色濃く残るこの町には、豪華な大聖堂(ドゥオモ Duomo)、イタリアで最も美しい広場と言われるカンポ広場 Piazza del Campo と、その広場に建つマンジャの塔 Torre del Mangia 、シエナ派の絵画が収められている各種美術館などの見どころがあります。
カンポ広場は上から見ると扇を開いたような形になっており、その付け根あたりに建つプッブリコ宮に向かって緩やかに傾斜しています。
プッブリコ宮の脇に建つマンジャの塔に上ると、広場の美しい形や周辺のパノラマを見ることができます。しかしマンジャの塔は約100m、エレベーターは無く約500段もの階段しかないので上る際はご注意を。
マンジャの塔の入場券は、プッブリコ宮(内部は現在、市庁舎と市立美術館になっています。)、サンタ・マリア・スカラ救済院との共通入場券となっています。
他に、シエナで絶対に見逃せないのはドゥオモ。
かつて敵国であったフィレンツェのドゥオモより立派なものを建てようということで造られただけのことはあり、冒頭の写真のように外観のファサード(前面装飾)だけではなく、内部の素晴らしい床面装飾を始めとする内装は大変美しく、意外と地味な内装のフィレンツェのドゥオモと比べると目を見張るほどです。
また、ドゥオモ内にある絢爛豪華なピッコロ―ミニ家の図書館 Libreria Piccolomini も必見です。館内には1400年代の聖歌隊用の楽譜などが展示され、ピントゥリッキオ作のフレスコ画「ピウス3世の戴冠」や「ピウス2世の生涯」で飾られています。
ドゥオモは外観だけではなく、是非入場見学することをおすすめします。(日・祝日の入場時間は午後からとなるので注意。)
ドゥオモの向かって右奥にある茶色の建物とそれに続くアーチは、かつて計画された新ドゥオモの名残で、現在はドゥオモ付属美術館となっています。この美術館の3階から展望テラスへ行くことができ、マンジャの塔やドゥオモ、トスカーナの丘陵地帯を眺めることができます。
この展望テラスへ行くには階段しかありませんが段数は多くないので、500段もあるマンジャの塔の階段を上るのはちょっと・・・という方にはこちらの展望テラスがおすすめです。
美術館は上述の市立美術館、ドゥオモ付属美術館以外にも国立絵画館もあります。いずれもシエナ派の傑作が展示されています。
シエナといえば、毎年7月2日と8月16日にカンポ広場で行われる、1633年から続く地元の伝統行事、「Palio パリオ」という競馬も有名です。
シエナの中心街はコントラーダ Contrada と呼ばれる17の地区に分かれており、それぞれの地区がいわば町内会のような位置付けになっていて、パリオはこの地区同士の町内対抗合戦となっています。
パリオは、最初に中世の衣装をまとった人々のパレードが行われ、その後にメインの競馬が始まります。その様子は、イタリア全国にTVで生中継されます。ご興味のある人は、パリオの日程に合わせてシエナ観光をしてみるのもおすすめです。
パリオの公式サイト(日本語)
https://www.ilpalio.org/paliojapan2.htm
イタリア語版の公式サイトでは、前年のパリオの様子が動画でも見ることができます。
https://www.ilpalio.org/
フィレンツェからシエナへは、乗り換えなしのローカル列車やプルマン(中距離バス)で約1時間半ですが、列車の場合シエナ駅から観光地区まで約2キロ弱あり、列車から降りて更に市バスに乗る必要があります。
プルマンなら観光地区まで徒歩圏のところまで行かれますが、外国人観光客には列車と比べて切符の買い方や乗り方が分かりにくいかもしれません。
そこで便利なのが、フィレンツェ発着の日帰りツアー。シエナのみのツアーはないですが、シエナ同様トスカーナの古都として世界遺産に指定されている、中世の塔が建ち並ぶサンジミニャーノも訪れるツアーです。
ツアーを利用せずご自身で公共交通機関で行く場合は、1日でシエナとサンジミニャーノの2都市訪問は時間的にやや厳しいので、シエナのみにした方がいいと思います。
フィレンツェからの日帰り観光や、1泊の小旅行に最適なシエナ。是非訪れてみてください。
フィレンツェ近郊の日帰り観光都市として添乗員付パックツアーでも定番の、斜塔で有名なピサの町をご紹介します。
ピサはトスカーナの海岸近くに位置し、かつてベネチア、アマルフィ、ジェノヴァと並ぶ海洋王国として繁栄しました。また、天文学の父と言われるガリレオ・ガリレイの生誕地でもあります。
ピサ大学で学んだガリレオは、斜塔から大小2つの鉛の球を同時に落とし「落下の法則」を証明したり、ドゥオモ内にある天井から吊り下げられた大きなランプの揺れを見て、「振り子の法則」を発見したと言われています。(あくまで言い伝えであり、真偽は定かではありませんが。)
斜塔は、1987年に世界遺産に指定されたドゥオモ広場 Piazza del Duomo、別名「奇跡の広場 Piazza dei Miracoli」と呼ばれるところに建っています。同じ広場にはドゥオモ (大聖堂)と洗礼堂もあり、3つの白く輝く大理石の建造物は広場の芝生の緑色と見事に調和し、まさにその名の通り奇跡の美しさと言えるでしょう。
ピサでは、斜塔を支えるポーズで写真を撮るのがお約束。広場は、このポーズで記念写真を撮る観光客でにぎわっています。
斜塔 Torre Pendente は1173年に建築が開始されましたが、建築中から傾き始めたため工事を一旦中止。その後、上層階の中心軸をずらしながら建築を再開し14世紀に完成するも、再び倒壊の危機となったことから1990年より倒壊防止工事が行われました。
倒壊の危機にあった頃は上れなかった斜塔は、工事終了後の2001年12月より上れるようになりました。
ピサ観光は斜塔だけではありません。ドゥオモ(大聖堂) Duomo の入場見学もおすすめです。内装は大変美しく、特に金色に輝くモザイクで飾られたドームは必見です。
更に時間と興味があれば、洗礼堂やドゥオモ付属美術館、シノピエ美術館など、見どころは他にもあります。
ドゥオモ付属美術館 公式サイト(英語)
https://www.opapisa.it/en/square-of-miracles/opera-del-duomo-museum/
シノピエ美術館 公式サイト(英語)
https://www.opapisa.it/en/square-of-miracles/sinopie-museum/
斜塔に上るには必ずしも予約が必要ではありませんが、1回ごとの入場時間は約30分、人数は1回あたり40名までと制限があるため、着いてすぐに上れるとは限りません。特に観光客の多い春・夏のハイシーズンは、何時間も待たされる恐れがあります。
事前に予約しておくか、予約無しで行ってみてかなりの待ち時間が生じるようであれば、その待ち時間中にドゥオモや洗礼堂、美術館など、斜塔以外の他の観光スポットの入場見学をするという方法もあります。(後者の場合は、丸1日ピサ観光に充てた方がいいと思います。)
斜塔の入場予約は、下記の公式サイトからできます。
https://www.opapisa.it/en/(英語)
ピサへの行き方ですが、フィレンツェSMN駅から乗り換えなしの直通ローカル列車で約1時間~1時間半ぐらい(一部、要乗り換えのものもありますので注意)、ピサ中央駅 Pisa Centrale で下車、そこから斜塔のある奇跡の広場までは徒歩で約20-30分(駅から道なりにほぼまっすぐで約2㎞)、又は駅前から出ている市バスの利用となります。
※Pisa San Rossore (サン・ロッソーレ)駅の方が斜塔に近いのですが、フィレンツェ発着の列車の多くが要乗り換えで直通列車は非常に本数が少ないです。
ピサ中央駅から奇跡の広場まで歩いて行くと、途中のアルノ川にかかる橋のたもとに小さくて可愛らしいサンタ・マリア・デッラ・スピーナ教会 Santa Maria della Spina があります。
また、この教会の川を挟んで斜め向かいに、王宮博物館 Museo Nazionale di Palazzo Reale があります。
王宮博物館について(英語)
https://www.terredipisa.it/en/attrazione/nazional-museum-of-palazzo-reale/
駅から徒歩で斜塔まで行く場合は、途中でこの小さくて可愛らしい教会や、博物館に立ち寄って見学するのもいいかと思います。
公共交通機関で行く以外に、フィレンツェ発着のピサ日帰りツアーを利用する方法もあります。午前又は午後半日で日帰りできますので、時間が無い方や公共交通機関で行くのが不安な方はツアーの利用が便利です。(公共交通機関では、フィレンツェから半日でピサ観光は時間的にキツイかと思います。)
ツアーは斜塔入場ありと無しと両方のコースがあり、入場予約はツアー会社の方でしてくれます。斜塔にエレベーターは無く約250段の階段のみで上りますので、足腰に自信がない人は斜塔入場なしのコースがいいでしょう。
フィレンツェから日帰りの観光地として、定番中の定番であるピサ。まだ行ったことがない方は、是非行ってみてください。
2019-02-16
古代都市にタイムスリップ ポンペイ遺跡
ナポリ近郊に、2000年以上も前に栄えた古代都市ポンペイの遺跡があります。この遺跡は、1997年に世界遺産に指定されました。
ポンペイは古代ローマ時代に栄えた都市で、紀元79年8月24日にヴェスーヴィオ山の噴火で一晩にして火山灰に埋もれてしまいました。
1763年に発掘が開始されると、石畳で舗装された道路、プールを備えた運動場、公衆浴場、居酒屋、パン屋、洗濯屋、娼館、野外劇場、円形闘技場、神殿、富裕層の邸宅など、当時の人々の日常生活の様子が分かるような建物が次々と現れてきました。
イシス神殿
フォロ(政治、経済の中心だった公共広場)に建つ柱廊
石畳で舗装された道路
雨が降った時足が濡れないよう、飛び石が置かれていました。
飛び石の間には、馬車が通った轍も残っています。
雨が降った時足が濡れないよう、飛び石が置かれていました。
飛び石の間には、馬車が通った轍も残っています。
発掘の際、火山灰で埋もれた遺体が腐って無くなった部分が空洞になっているところがありました。そこに石膏を流し入れて固まってから取り出したところ、亡くなった当時の姿が再現されました。その石膏像は1000体以上もあり、その一部は遺跡内に展示されています。
農業と商業で栄えていたポンペイでは、現代の私たちの生活と比べて人々はかなり享楽的な生活を送っていたようです。
当時の富裕層たちにとって美食と浪費がステイタス・シンボルで、豪華な邸宅で半日以上も昼風呂を楽しんだり、毎晩のように友人・知人を招いて奴隷が作ったご馳走を食べながらの宴会が催されていました。
富裕層の邸宅の壁に描かれた「ビーナス」のフレスコ画
床のモザイク画と中庭にある牧神の彫像
(彫像はレプリカで、オリジナルはナポリの考古学博物館にあります。)
(彫像はレプリカで、オリジナルはナポリの考古学博物館にあります。)
富裕層だけではなく、一般市民の生活も快楽主義的なものでした。働くのは午前中だけで、昼食後は昼寝、その後は公衆浴場での入浴や屋外劇場での観劇をしたり、闘技場へ出かけたりしていました。
特に闘技場での剣闘士同士の戦いが一番人気で、ポンペイ市民のほとんどが見に行ったとか。一番人気の剣闘士が出場すると大盛況となり、人気の剣闘士が戦いで亡くなると町中の女性が泣いたという落書きが残っています。
公衆浴場には運動場も併設されており、まさに現代のスポーツクラブのようなものでした。利用料は、入浴料と合わせても1日のパン代より安く、市民の交流の場でありました。
市内の通り沿いには、パン屋、ケーキ屋、惣菜屋、居酒屋などの飲食店が200軒以上あり、特にワインと軽食を提供する居酒屋が多かったようです。
パン屋の粉挽き器とかまど
居酒屋のカウンター
カウンターの穴に飲物が入った壺を入れていました。
カウンターの穴に飲物が入った壺を入れていました。
一般市民の住宅内にある台所には簡易なかまどや食器がある程度で、凝った料理ができるような設備が見られないことから、自炊はあまりせず外食をしたりパンや惣菜などを買ったりしていたのではと考えられています。
ポンペイ遺跡の中心部から外れたところに秘儀荘があります。
秘儀荘には大小様々な90もの部屋があり、ワイン製造所も発見されました。ここでの見どころは、建物内部の壁に描かれた「ポンペイ・レッド」と呼ばれる独特の赤色を背景に、「ディオニュソスの秘儀」の様子を描いたフレスコ画です。
ポンペイ遺跡へは、ナポリ中央駅地下のGaribaldi 駅からヴェスーヴィオ周遊鉄道のSorrento行きに乗り約40分、Pompei Scavi(Villa Misteri)駅で下車、そこから約100m のところに遺跡の入口があります。
ポンペイ遺跡は、かつてはひとつの都市だったので大変広いです。主要なところに絞って見学しても2~3時間はかかりますし、外れたところにある秘儀荘も入れてじっくり見学すると丸1日はかかるかと思います。
そのため、やみくもに見学するより、あらかじめ見学したいところをピックアップしておいて、計画的に周る方がいいと思います。
また遺跡内は広いだけではなく迷いやすいので、お目当ての見学箇所を見つけるのに思いのほか時間がかかったり、そのため歩き疲れて見どころを逃してしまう恐れがあります。特に夏は日陰が少ないので、炎天下で徒歩での見学は大変です。
注: 夏はミネラルウォーターなどの飲物、帽子、サングラス、日焼け止めをご用意ください。また、遺跡内には飲食のできるレストハウスが1ヵ所しかありませんので注意。
時間が無い方や自分でポンペイ遺跡まで行くのが不安な方は、ローマやナポリ発着の日本語ガイド付日帰りツアーが便利です。
ツアーなら主要なところに絞って短時間に効率よく見学できますし、日本語ガイドの説明で当時のポンペイの様子をより深く理解することができます。
自分の足で歩いて見学したい方には、下記の日本語ガイドを読むのもいいでしょう。
ポンペイ遺跡の日本語ガイド(ポンペイ文化財保護局著)
http://pompeiisites.org/wp-content/uploads/Pompeii_JA.pdf
2000年近くも昔に、現代のスポーツジムや銭湯、劇場、スタジアムのような施設が既にあり、仕事は午前中だけで午後は上記の施設に出掛けるなど、一般庶民でも我々より豊かな生活を送っていた古代のポンペイ市民。その暮らしぶりを垣間見ることのできる、大変興味深い遺跡と言えるでしょう。
ポンペイ遺跡は、添乗員付きのパック旅行にも含まれている定番の観光スポットです。考古学が好きな方はもちろん、そうでない方も楽しめる遺跡だと思います。
ポンペイ遺跡公式サイト(日本語)
http://pompeiisites.org/en/info/?l=ja
是非、ローマ、又はナポリ滞在中に訪れてみて下さい。
2019-02-14
フィレンツェから小旅行 美しき塔の町サンジミニャーノ
フィレンツェ近郊には斜塔で有名な人気の都市ピサに加え、魅力的な小都市が点在しています。サンジミニャーノはそのひとつで、中世の塔が建ち並んでいる歴史地区は1990年に世界遺産に指定されました。
塔は当時の富裕層が自身の富と権力を誇るために、また敵の侵入を見張るため次々と建てられ最高72本を数える時期もありました。現在はわずか14本しか残っていませんが、市内の歴史地区は中世の雰囲気がそのまま残されています。
主な見どころはチステルナ広場 Piazza della Cisterna、ドゥオモ広場 Piazza del Duomo、現在は市立美術館となっているポポロ宮、Palazzo del Popolo 等があります。
チステルナ広場の「チステルナ」とはイタリア語で井戸を意味し、その名の通りその広場中央には13世紀の古井戸があります。また、この広場の周囲には12~13世紀ごろの塔や建物があり中世の趣がよく残っています。
チステルナ広場から左に進むと、ドゥオモ広場 Piazza del Duomo があります。この広場も中世の雰囲気がよく残っており、その名の通りドゥオモ(参事会教会)と、13世紀建造のポポロ宮(市立美術館)があります。
ポポロ宮の脇には14世紀に建造された高さ54mの大きな塔 Torre Grosso がありますが、この塔には美術館内から上ることができます。塔からは、町を一望できる素晴らしい眺めが堪能できます。
イタリアのカーニバルといえばベネチアのが有名ですが、サンジミニャーノでも毎年2月の毎日曜日にカーニバルが開催されます。
サンジミニャーノのカーニバルについて(イタリア語)
https://www.sangimignano.com/it/eventi/carnevale-di-san-gimignano/
ベネチアのカーニバルは中世の衣装を纏い仮面を付けた人々が練り歩くというものですが、サンジミニャーノのは大きな山車のパレードが見ものです。この山車は、「パピエ・マルシェ」という紙粘土のような手法で作られています。
他にもサンジミニャーノでは、様々なイベントが開催されています。
サンジミニャーノ観光案内所 公式サイト(英語版)
https://www.sangimignano.com/en/
サンジミニャーノへの行き方ですが、鉄道駅が無いため公共交通機関で行くにはプルマン(中距離バス)しかありません。しかもフィレンツェからのプルマンは直通のものが無く、途中のポッジボンシというところで乗り換える必要があります。
また、時間帯や日によってはプルマンの乗り継ぎがあまり良くなく、ポッジボンシで無駄な待ち時間が生じる恐れがあります。特に日・祝日は平日に比べて、大幅にプルマンの本数が少なくなりますのでご注意を。(平日約15本、日・祝日約3本)
公共交通機関で行く場合は、サンジミニャーノ同様、フィレンツェ近郊のトスカーナの古都として世界遺産に指定されているシエナに1泊して、シエナから直通のプルマンで日帰りがいいのではと思います。フィレンツェからシエナへは、乗り換えなしのローカル列車やプルマンで行くことができます。
公共交通機関での移動が不安な場合は、フィレンツェ発着の日帰りツアーの利用が便利です。サンジミニャーノだけではなく、シエナも訪れることができます。
公共交通機関で、フィレンツェから日帰りでサンジミニャーノとシエナの両方を訪れるのは難しいですが、ツアーなら楽に簡単に2都市を観光できます。
アクセスがやや不便なサンジミニャーノですが、是非訪れてみてください。
2019-02-13
フィレンツェから小旅行 トスカーナの古都シエナ
フィレンツェ近郊に、世界遺産に指定されているトスカーナの古都シエナがあります。
中世の趣が色濃く残るこの町には、豪華な大聖堂(ドゥオモ Duomo)、イタリアで最も美しい広場と言われるカンポ広場 Piazza del Campo と、その広場に建つマンジャの塔 Torre del Mangia 、シエナ派の絵画が収められている各種美術館などの見どころがあります。
カンポ広場は上から見ると扇を開いたような形になっており、その付け根あたりに建つプッブリコ宮に向かって緩やかに傾斜しています。
プッブリコ宮の脇に建つマンジャの塔に上ると、広場の美しい形や周辺のパノラマを見ることができます。しかしマンジャの塔は約100m、エレベーターは無く約500段もの階段しかないので上る際はご注意を。
マンジャの塔の入場券は、プッブリコ宮(内部は現在、市庁舎と市立美術館になっています。)、サンタ・マリア・スカラ救済院との共通入場券となっています。
他に、シエナで絶対に見逃せないのはドゥオモ。
かつて敵国であったフィレンツェのドゥオモより立派なものを建てようということで造られただけのことはあり、冒頭の写真のように外観のファサード(前面装飾)だけではなく、内部の素晴らしい床面装飾を始めとする内装は大変美しく、意外と地味な内装のフィレンツェのドゥオモと比べると目を見張るほどです。
また、ドゥオモ内にある絢爛豪華なピッコロ―ミニ家の図書館 Libreria Piccolomini も必見です。館内には1400年代の聖歌隊用の楽譜などが展示され、ピントゥリッキオ作のフレスコ画「ピウス3世の戴冠」や「ピウス2世の生涯」で飾られています。
ドゥオモは外観だけではなく、是非入場見学することをおすすめします。(日・祝日の入場時間は午後からとなるので注意。)
ドゥオモの向かって右奥にある茶色の建物とそれに続くアーチは、かつて計画された新ドゥオモの名残で、現在はドゥオモ付属美術館となっています。この美術館の3階から展望テラスへ行くことができ、マンジャの塔やドゥオモ、トスカーナの丘陵地帯を眺めることができます。
この展望テラスへ行くには階段しかありませんが段数は多くないので、500段もあるマンジャの塔の階段を上るのはちょっと・・・という方にはこちらの展望テラスがおすすめです。
美術館は上述の市立美術館、ドゥオモ付属美術館以外にも国立絵画館もあります。いずれもシエナ派の傑作が展示されています。
シエナといえば、毎年7月2日と8月16日にカンポ広場で行われる、1633年から続く地元の伝統行事、「Palio パリオ」という競馬も有名です。
シエナの中心街はコントラーダ Contrada と呼ばれる17の地区に分かれており、それぞれの地区がいわば町内会のような位置付けになっていて、パリオはこの地区同士の町内対抗合戦となっています。
パリオは、最初に中世の衣装をまとった人々のパレードが行われ、その後にメインの競馬が始まります。その様子は、イタリア全国にTVで生中継されます。ご興味のある人は、パリオの日程に合わせてシエナ観光をしてみるのもおすすめです。
パリオの公式サイト(日本語)
https://www.ilpalio.org/paliojapan2.htm
イタリア語版の公式サイトでは、前年のパリオの様子が動画でも見ることができます。
https://www.ilpalio.org/
フィレンツェからシエナへは、乗り換えなしのローカル列車やプルマン(中距離バス)で約1時間半ですが、列車の場合シエナ駅から観光地区まで約2キロ弱あり、列車から降りて更に市バスに乗る必要があります。
プルマンなら観光地区まで徒歩圏のところまで行かれますが、外国人観光客には列車と比べて切符の買い方や乗り方が分かりにくいかもしれません。
そこで便利なのが、フィレンツェ発着の日帰りツアー。シエナのみのツアーはないですが、シエナ同様トスカーナの古都として世界遺産に指定されている、中世の塔が建ち並ぶサンジミニャーノも訪れるツアーです。
ツアーを利用せずご自身で公共交通機関で行く場合は、1日でシエナとサンジミニャーノの2都市訪問は時間的にやや厳しいので、シエナのみにした方がいいと思います。
フィレンツェからの日帰り観光や、1泊の小旅行に最適なシエナ。是非訪れてみてください。
2019-02-12
フィレンツェから小旅行 ピサの斜塔
フィレンツェ近郊の日帰り観光都市として添乗員付パックツアーでも定番の、斜塔で有名なピサの町をご紹介します。
ピサはトスカーナの海岸近くに位置し、かつてベネチア、アマルフィ、ジェノヴァと並ぶ海洋王国として繁栄しました。また、天文学の父と言われるガリレオ・ガリレイの生誕地でもあります。
ピサ大学で学んだガリレオは、斜塔から大小2つの鉛の球を同時に落とし「落下の法則」を証明したり、ドゥオモ内にある天井から吊り下げられた大きなランプの揺れを見て、「振り子の法則」を発見したと言われています。(あくまで言い伝えであり、真偽は定かではありませんが。)
斜塔は、1987年に世界遺産に指定されたドゥオモ広場 Piazza del Duomo、別名「奇跡の広場 Piazza dei Miracoli」と呼ばれるところに建っています。同じ広場にはドゥオモ (大聖堂)と洗礼堂もあり、3つの白く輝く大理石の建造物は広場の芝生の緑色と見事に調和し、まさにその名の通り奇跡の美しさと言えるでしょう。
ピサでは、斜塔を支えるポーズで写真を撮るのがお約束。広場は、このポーズで記念写真を撮る観光客でにぎわっています。
斜塔 Torre Pendente は1173年に建築が開始されましたが、建築中から傾き始めたため工事を一旦中止。その後、上層階の中心軸をずらしながら建築を再開し14世紀に完成するも、再び倒壊の危機となったことから1990年より倒壊防止工事が行われました。
倒壊の危機にあった頃は上れなかった斜塔は、工事終了後の2001年12月より上れるようになりました。
ピサ観光は斜塔だけではありません。ドゥオモ(大聖堂) Duomo の入場見学もおすすめです。内装は大変美しく、特に金色に輝くモザイクで飾られたドームは必見です。
更に時間と興味があれば、洗礼堂やドゥオモ付属美術館、シノピエ美術館など、見どころは他にもあります。
ドゥオモ付属美術館 公式サイト(英語)
https://www.opapisa.it/en/square-of-miracles/opera-del-duomo-museum/
シノピエ美術館 公式サイト(英語)
https://www.opapisa.it/en/square-of-miracles/sinopie-museum/
洗礼堂 Battistero
斜塔に上るには必ずしも予約が必要ではありませんが、1回ごとの入場時間は約30分、人数は1回あたり40名までと制限があるため、着いてすぐに上れるとは限りません。特に観光客の多い春・夏のハイシーズンは、何時間も待たされる恐れがあります。
事前に予約しておくか、予約無しで行ってみてかなりの待ち時間が生じるようであれば、その待ち時間中にドゥオモや洗礼堂、美術館など、斜塔以外の他の観光スポットの入場見学をするという方法もあります。(後者の場合は、丸1日ピサ観光に充てた方がいいと思います。)
斜塔の入場予約は、下記の公式サイトからできます。
https://www.opapisa.it/en/(英語)
ピサへの行き方ですが、フィレンツェSMN駅から乗り換えなしの直通ローカル列車で約1時間~1時間半ぐらい(一部、要乗り換えのものもありますので注意)、ピサ中央駅 Pisa Centrale で下車、そこから斜塔のある奇跡の広場までは徒歩で約20-30分(駅から道なりにほぼまっすぐで約2㎞)、又は駅前から出ている市バスの利用となります。
※Pisa San Rossore (サン・ロッソーレ)駅の方が斜塔に近いのですが、フィレンツェ発着の列車の多くが要乗り換えで直通列車は非常に本数が少ないです。
ピサ中央駅から奇跡の広場まで歩いて行くと、途中のアルノ川にかかる橋のたもとに小さくて可愛らしいサンタ・マリア・デッラ・スピーナ教会 Santa Maria della Spina があります。
また、この教会の川を挟んで斜め向かいに、王宮博物館 Museo Nazionale di Palazzo Reale があります。
王宮博物館について(英語)
https://www.terredipisa.it/en/attrazione/nazional-museum-of-palazzo-reale/
駅から徒歩で斜塔まで行く場合は、途中でこの小さくて可愛らしい教会や、博物館に立ち寄って見学するのもいいかと思います。
公共交通機関で行く以外に、フィレンツェ発着のピサ日帰りツアーを利用する方法もあります。午前又は午後半日で日帰りできますので、時間が無い方や公共交通機関で行くのが不安な方はツアーの利用が便利です。(公共交通機関では、フィレンツェから半日でピサ観光は時間的にキツイかと思います。)
ツアーは斜塔入場ありと無しと両方のコースがあり、入場予約はツアー会社の方でしてくれます。斜塔にエレベーターは無く約250段の階段のみで上りますので、足腰に自信がない人は斜塔入場なしのコースがいいでしょう。
フィレンツェから日帰りの観光地として、定番中の定番であるピサ。まだ行ったことがない方は、是非行ってみてください。