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【2018-07-06 ご出発】 【担当コンシェルジュ】伊奈 典子

S様/高雄の友人O君を東京に招待する旅 第1弾「迎えに行く」

ウェブトラベル 伊奈様。

いつも台湾旅行でお世話になっております、Sです。
ご報告が大変遅くなりまして済みません。
やっと画像の整理をする余裕ができました。
今回はこれまでのご相談の中でも、一番厄介な旅行をご支援いただきまして、どうもありがとうございました。

転倒して脊椎損傷し、歩けなくなった台湾・高雄のO君。
O君が歩けなくなる前、ネットで知り合ったばかりの頃、
私達はお互いの国へ行って、観光案内をし合う約束をしました。
この6月、私は新居への引越しが完了したので、一番大きな最後の約束を果たす時が来た、と思いました。

人一倍体の大きく車椅子生活のO君。
問題は、どうやって東京へ連れて来るか、でした。
歩けなくなってから体重が増加し、160kgに達したO君。
相撲取り並みの体重です。しかも一人で動けない。
座席は1席で収まらないのが判っているので、最初から2席を確保していただきましたね。

しかし、機内用車椅子がO君の体重に耐えられるのか?
搭乗口から座席まで運べないのではないか?
O君の誕生日の7/6(金)、私は台湾・高雄へ飛びました。
正直、不安だらけの台湾行きでした。
初海外・初台湾の時以来の不安感です。

7/8(日)朝、頼んであった車椅子タクシーでO君宅から高雄空港へ移動。
待機列でJALのカウンターが開くのを待ちます。
すると、カウンターの開く少し前に、JALのスタッフの方が声をかけて下さいました。
赤ちゃん連れや障害者など「色々と大変な人用」と思われるカウンター前に案内され、そこで待つよう言われました。
伊奈様からご連絡いただいていたS様に、そこでお会いすることができました。
日本語で話ができたので、かなりホッとしたのを覚えています。

搭乗口まではO君の車椅子で移動し、そこから機内用の車椅子に乗り換えて座席まで移動、O君の車椅子は荷物として預ける、との段取りです。
空港の男性職員の方が2名、付いて下さいました。
手荷物検査は私達二人纏めて対応していただきました。
しかし、セキュリティチェックのゲート、O君の車椅子を押して通過しようとしたら、
幅が狭くて通りませんでした・・・
接触した車椅子で、危うくゲートを押し倒してしまうところでした。
あのゲートは意外と簡単に動く物なんですね。
コントのセット並みに簡易な設備のようです(失礼な感想だ)。

続く出国手続きで、台湾人のO君は空港の職員さんに誘導いただいて、
私は外国人列へ・・・は行かなくていいんですか?
車椅子が通れる左端のゲートで、O君と一緒に手続きしていただきました。
これは有難いです。
出国のスタンプを押してもらって審査場を抜けます。
ステンドグラスの通路に出て、今度はS様に出発便の搭乗ゲートまでO君の車椅子を押していただきました。

そこで搭乗案内の時間まで自由に過ごすよういわれます。
一番端のゲートまで行ったり、免税店で土産を買ったりして、搭乗案内を待ちます。
「心配です。緊張しています」
正直だね、O君。実は私もだよ。
二人でおむつの心配などしていたら、O君が年配の空港職員さんから話しかけられました。
台湾語でやり取りをしているので内容は解りませんが、車椅子や手順の話をしているようです。
職員さん、他の職員さん達に今の内容を伝えに行きました。
O君が私に言いました。
「あの職員さん、日本の芸人に似ています」
はい~?! いきなり何の話??
私はお笑いには明るくないんだけど・・・
「志村けん」
台湾でもドリフ大爆笑やだいじょうぶだぁは放送されてたのかな?
・・・いや、違う、そうじゃなくて。
えぇと、O君、緊張してると言ってなかったっけ?
O君の顔を見ると、ニコニコしています。
そういえば、昨年亡くなられたお祖父さんにとても可愛がられていたと言ってたなぁ。
お祖父さん子だったO君、年配の職員さんと話をしたことで緊張が解けたようです。

そろそろ時間ですか、いよいよ搭乗・・・あれ?

男性職員さん、増えてる・・・!!

O君の巨体を見て増員が必要と思われたのでしょう、計5名の職員さんに囲まれています。
車椅子を押されて搭乗口への通路を進むO君。
時々、両側の職員さん達を見上げて話しをしています。
ビジュアル的に、私は連行される宇宙人の写真を思い出しました。

搭乗口に着くと、打合せ通り、機内用の車椅子が準備されていました。
S様から「今後のために搭乗の様子を撮影させていただきます」と言われました。
もちろんです。戻ってきた時にもお世話になると思います。よろしくお願いします。
O君、職員さん達の助力でなんとか機内用の車椅子に乗り換えます。
しかし。
O君の巨体がつかえてしまい、通路に入ることができません・・・!!
機内用車椅子の使用は断念し、床を引き摺ってO君を運ぶことになりました。
通路の床に毛布が敷かれ、横幅のあるO君、横向きの直立不動の姿勢になります。
CAさんが毛布をよじってロープ代わりにして、O君の体に引っ掛けます。
イー・アル・サン!!
掛け声とともに、少しずつ床を移動していくO君の体。
職員さん達が座席の間を移動して、エコノミーの座席までO君の体を引き摺っていきます。
既に搭乗案内の時間が過ぎてしまっていました。
2つの通路のうち、O君で塞がれていない通路は、他のお客さんを通しています。
最後の大仕事で、職員さん達がO君の巨体を床から座席に持ち上げました。

座った・・・!!
これで、これでO君を日本に連れて行けます。

CAさんから座席に座るよう言われました。
時間が押しています。
職員さん達へのお礼を言う暇も無く、急いでシートベルトを締めます。
エコノミーの2座席に収まったO君ですが、座席の間にある跳ね上げた肘掛けが当たり、背中が痛いと言います。
それを伝えたら、CAさんがクッションをいくつか持ってきて下さいました。

アナウンスが流れます。
「お客様へのご案内が遅れまして(以下略)」
うわあああああぁぁぁぁぁ!!!
それ、間違いなく原因は私達のせいです。
JL812便の乗客の皆さん、ごめんなさい、ごめんなさい。
もう、心の中で平謝りです。

飛行機が離陸し、私が平静さを取り戻した頃、対照的にO君が目を閉じて歯を食いしばっているのに気付きました。
O君が汗ばむ手を伸ばして私の手を掴みます。
また手術跡の背中が痛むのかと思ったら、そうではないと言います。
高い場所が苦手なO君、フワフワして揺れる飛行機が怖いようです。
初めての飛行機、初めての海外。無理もありません。
O君が飛行機の揺れに慣れるまで、少し時間が必要でした。

離陸して少しすると、CAさんが機内食を配り始めます。
おむつが一杯になってしまうのを心配して、O君はずっと水分を控えていましたが、
全く摂らないのも体に良くありません。
機内食も「食べない」と言いましたが、一口ずつ食べさせ、水も一杯だけ飲ませました。

3時間半。飛行機が成田空港に到着。
とうとう日本に着いたよ、O君。
怖くて空の上ではほとんど目を閉じて寝ていたO君、ホッとしたようです。
おしっこが一杯のようで、飛行機を降りたら早くおむつを交換したいと言います。
頑張ったね。
しかし、ここからO君はまだ頑張らなければいけませんでした。

他のお客さんが全員降りた後、成田空港の職員さん達が来て下さいました。
車椅子とリクライニングしかけのストレッチャーのような、変わった機材を持参されています。
おお、さすが成田空港、これでO君を運び出すんですね。
O君を座席から乗せ換え、通路を移動・・・しようとしましたが、できませんでした。
入る時と同様、O君の巨体がつかえてしまって、通路を移動することができません。
降りる時もまた、O君は床を引き摺って通路を移動することになりました。
CAさん達が再び、毛布をよじって準備して下さいます。
気がつけば、CAの皆さんと機内清掃のために入って来られた清掃員の皆さんが、総出でO君の運び出しを見守る状態に。
通路の床を引き摺られて乗り降りする乗客は・・・珍しいというか、まぁ、いないですよね、普通。

O君が搭乗口まで移動して行くのを見て、私もO君のサンダルを抱えて搭乗口に向かいました。
搭乗口まで届けられていたO君の車椅子を手早く組み立てます。
職員さん達がO君を床から車椅子に引き上げました。皆さん汗だくです。
ここまで手のかかる乗客は初めてではないでしょうか。お手数をおかけしました。


職員さんに車椅子を押されて搭乗口を後にします。
O君、とにかくすぐにおむつを交換したいと訴えます。
職員さん達に相談すると、一番近い車椅子対応のトイレに向かって下さいました。
中を見ると、簡易な折り畳みのベッドが付いています。
これならなんとかおむつ交換ができそうです。
床を引き摺られる際におむつも相当ずれたからでしょう。
ズボンもパンツも濡れてしまっていました。
ただ、簡易ベッドは狭く、O君の体の大きさでは寝返りできません。
外で待っていただいている男性職員さん達に声をかけて、O君の体を持ち上げるのを手伝っていただき、
なんとかおむつを交換して新しいパンツとズボンを履かせました。
ここでも職員さん達にご面倒をおかけしてしまいました。

入国審査も車椅子対応のゲートへ案内していただき、O君と私は一緒に通ることができました。
男性職員さんがお一人、最後まで付き添って下さいました。
エレベーターで降り、預けた荷物を引き取って宅配便で発送して、スカイライナーに乗るための京成の改札までずっとご一緒して、誘導していただきました。
O君はとても嬉しかったようで、記念に写真を撮らせていただきました。
その後、京成・JR・京急・都営地下鉄の職員さん達にもお世話になり、無事に東京の自宅までO君を連れて来ることができました。

JALのS様、CAの皆さん、高雄空港の職員さん達、成田空港の職員さん達、本当にたくさんの人達のお世話になりました。
伊奈様がチャイナエアさんからJALに調整先を切り替えて下さったおかげで、O君は土壇場で搭乗を断られることもなく、日本に降り立つことができたわけです。
どうもありがとうございました。

長いので、一度切ります。続きます。



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