2008-05-31

Ko8 田舎風家庭料理を食べよう

初夏のソウル。
街角に爽やかな夏の気配を感じる頃になると、食欲がグンと増してくる。
「久々に、田舎風家庭料理が食べたいね」
ソウルでは今、インサ洞で田舎風家庭料理を食べるのがトレンド。インサ洞には昔からの古風な骨董の店もあるが、今は若者も多く見かける。

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夕暮れ時、ホテルからタクシーに乗り込み、韓国伝統の街インサ洞を目指す。芸術の道を走り抜けると、古風な門構えのレストラン「D」に到着。

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玄関で、黄金色のチマチョゴリを着た、馴染みのアジュマが笑顔で出迎える。いにしえの韓風情の中で味わう田舎風家庭料理。また室内には古書画がよりいいムードを醸し出している。だからこそ外国人がこの店を多く訪ねるのだろう。
「コース料理を二人分お願いします」
「はい、いつものですね」

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しばらくの間、マックスビールを飲みながら、ここ2,3年でソウルの街並みが変わり、若者が増えた、日本に雰囲気が似てきた、キムチ臭さが消えたことなどを話す。

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田舎風家庭料理の定番は、メインが牛鍋で、魚料理、脇役の王様キムチ。数種類の野菜のおかず、汁ものである。各店でコンセプト、その味は異なるが、その昔、韓定食のルーツは北方騎馬民族が韓半島に持ち込んだらしい。

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他の店では、牛鍋の代わりにプルコギを出す店も多い。さらに特徴を出すために、西海岸から直送の浜辺の香りが新鮮なアサリ汁。また他の店では、田舎の納豆の臭いがぷんぷんするチョンクジャン汁を出す店もある。

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田舎風家庭料理の甘い香りが混ざり合い漂ってくる。あァ、たまらん。待ちきれない。しびれをきらせながら待っていると、先付けとボッサムキムチに続き、次々と鉄板焼き肉、焼き魚、渡りガニ、トマトサラダ、ねぎパジョン、豆腐汁と運ばれてくる。

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まずは、鉄板焼きの牛肉を、口いっぱいに頬張る。柔らかな食感。甘辛のコクのある味に一言。あァ、絶品。

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「生きてて、よかったーッ」
カミさんとぼくの笑顔とため息。
香しい匂いと懐かしい味。ソウルの夜がそろりそろりと更けていく。(続) 

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2008-05-20

Ko7 真夏に ビビンバ!

真夏のソウル。
5月の透明な日差しの中で、南大門の近くのビルのガラス窓が、青空を映して群青色に光り輝いている。ぼく達は、南大門の近隣にあるHホテルの最上階のレストランから、活気あふれる街を見下ろしていた。

今日はカミさんと2人で昼食を兼ね、石焼きビビンバを試食していた。東京の友人がオーナーの韓国レストラン・チェーンMの依頼で、「ミレニアム・キャンペーン」と銘打った昼食時の看板メニューを選んでいるのである。

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ビビンバといえば、一般的には黒光りの石の器に御飯を入れ、その上に牛肉、ナムル類、生卵を乗せたものを指す。昼時の手軽なメニューとして韓国では一般的であり、近頃では韓流ブームにのり日本でもかなりポピュラーになった。

御飯と具を別々の器に入れて出すのが古くからの流儀であると聞いたことがあるが、近年では、ブッフェスタイルでテーブルに具を並べ、ゲストが好きなものをとれるようにしているところもある。しかし、僕らが本場全州で何回か食べたビビンバは、観光客向けだったのかも知れないが、最初から丼に盛られていた。

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一口にビビンバといっても、乗せる具によってもさまざまな種類がある。生牛肉を乗せたユッケビビンバ。さらに、鯛、ヒラメ等の高級魚をのせ、酢入りコチュジャンをかけてよくかき混ぜるという海鮮ビビンバも有名である。

めずらしいところでは、野菜を乗せた上に辛口の味噌汁をかけるテンジャンビビンバ。また、ヘルシー志向を反映したオリーブオイルとバルサミコ酢かけ生野菜のビビンバは、若い女性に絶大な人気である。そう言えば、近年のソウル繁華街は、若い女性が、髪をなびかせて歩く姿が目につく。

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一方、日本で石焼きビビンバと言えば、黒光りの専用容器を高温で加熱し、牛肉、千切り野菜等の具材を入れ、生たまごを乗せ、まぜて、まぜて、アツアツのまま食べられること、特におこげの香ばしさが喜ばれている。

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「やっぱり、これが美味しいね、これが1番うけるんじゃない」
それは何処にでもありそうなごく普通のビビンバである。カミさんの一言でミレニアム・キャンペーンは決まった。海を越えての食材探しの旅は、こうして毎年続くのである。 (続)

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2008-05-17

Ko6 ハルモニ パジョン

初夏のソウル。
5月になり、カミさんと2人、蒸し始めた初夏の東京から、カラッと爽やかな風薫る花の都ソウルに飛んだ。いつもの羽田空港発JAL8831便である。

金浦空港からタクシーに乗り込み、昼時の南大門の食堂街を目指す。馴染みのパジョンの店に直行し、懐かしい葱パジョンを堪能するのだ。

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ソウルのパジョンといえば葱パジョンが定番である。日本ではチジミの方が通りがよい。ステンレスのボウルの中に、キャベツ、万能ネギ、ニラ等の生野菜の間に、細切り牛肉、アサリ、緑豆、生ニンニク等が、渾然一体となり、クリーム状のパジョンのもとが、なみなみと入っている。

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あまりもの量なので、ハルモニ(おばさん)にお願いし、ザッザッとかき混ぜてもらう。巨大な大阪のお好み焼きのもとのようなものが出来上がる。

鉄板の上に葱パジョンのもとを中心から円を描くようにのせていく。焼き始めると肉汁の匂いに混じり、ほのかに長ネギの香りが立ち上る。その食欲を刺激する甘い香り。あァ、うまそう。待ちきれない。

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ぎゅぎゅっと、焼きたてのパジョンを立て長に切り、取り皿に乗せ、少し冷めた頃を見計らって口一杯に頬張る。ハフッ、ハフッ。あつい!けどうまい。柔らかな食感の中に、牛肉のうま味と長ネギの甘みが広がる。ああ、絶品。

「久しぶりだね」
笑顔がよみがえり、至福の時が流れる。フーッ、と葱パジョンを食べ尽くし一息いれる。少し物足りない。ハルモニ(おばさん)に、キムチパジョンの追加をオーダーする。アサリ、牡蠣、イカ、などの海鮮具材いりである。

出てきたのは赤唐辛子にまみれたキムチ入りパジョンの元。じっくりと焼き色がつくのを待ち、しょう油ダレであっさりと食べる。噛めば噛む程、キムチの酸味と海の幸の甘みがジワッと口の中に広がる。

涙の出そうな辛さとサッパリした後味に、美味すぎて目が点。いつものように夫婦の会話が一瞬止まる。美食探訪に国境はない。

旅の道連れにはカミさんの笑顔が嬉しい。仕事ずくめの日常から離れ、家庭サービスを兼ねたソウルグルメ探訪は、こうして毎年続くのである。(続)

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2008-05-08

Ko5 冷麺を食べて帰ろ

新緑のソウル。5月の昼下がりである。ぼく達夫婦は3泊4日のソウルグルメツァーの最終日、夕方のフライトで東京へ帰ろうとしていた。

「久しぶりに、民族村に寄ってみようか?」
午前中に、利川(イチョン)の窯元で、海剛先生の最盛期の頃の作品「ぐい飲みの青磁」を買った。その新しい「家宝」が5個入った木箱を大事に抱え、昼食までの時間調整の為に、空港へ向かう途中にある民族村に寄ることにしたのである。

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民族村の中は、平日の所為か、閑散としており、若い職人が、竹で編んだ民芸品、笊などを、黙々と編んでいた。

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中庭には、茅葺きの日本では、弥生時代前期の韓半島の家という小屋の復元があって、中に入って見ると涼しく、昔でも意外と快適に暮らしていたのかな、と思えた。

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もともと日本と違って、韓国は大陸性気候で、湿度が低いため、カラッとしており、夏でも日陰に入ればすごしやすい。ぼく達は、時間を気にしながら裏口から出て、駐車場に向かった。

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その後、遅い昼食ではあるが、楽しみに取っておいた激辛冷麺を味わうために、冷麺専門店「R」に立ち寄った。地元で定評のあるその店の中は、地元客で立て込んでいたが、日本人観光客は見当たらない。

「すみません、日本語できますか」  
近くにいた若い女性店員に声を掛ける。
「イルボンマル、ネー、チャッカンマョ」
しばらくすると中年の女性店員が、ハングル文字のメニューを差し出し、日本語で、「これ、おすすめね。うまいよ」

その中の一行の ハングル文字を指した。笑顔のえくぼが可愛い。え?なんだ?ようわからん。写真でもあればわかるけど。まいったな。

結局、カミさん持参の旅行ガイドの写真を開く。真っ赤な唐辛子ミソで和えた汁なしのビビム冷麺と、普通のよく見かける牛骨スープ入りのムル冷麺を指さし、「これと、これね」と注文する。

OBビールを飲みながらしばらく待つこと10分。まずは甘い梨の香りと共に、澄んだ牛骨スープの真ん中に、ごまそば風の麺がギュッと凝縮したムル冷麺が出てくる。

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お先に、と一口味わう。微かに牛骨の匂うスープ。腰の強い麺。サッパリしたきゅうりの食感。ボッサムキムチのコクある味わい。ああ旨い。ヤッパリ、本場のユクスムルネンミョンは違うな。

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一方、カミさんは真っ赤な唐辛子ミソの中に麺が見え隠れする超激辛のビビムパプネンミョンと悪戦苦闘している。舌を出し、ハッ、ハッ、と苦しそうに息をする。無言。ゲホッ、辛さにむせ返っている。フーッ、と一息ついたところで、ようやく笑顔に戻る。何、何だ?そうか、なんとか頑張って完食したのだ。

「わァー、きつーッ」
ついにカミさんは、究極の超激辛ビビン冷麺を征服した。食いしん坊バンザイ。グルメタウンソウルの旅は、こうして帰国ギリギリまで続くのである。(続)

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