2008-09-23

地方都市を旅する☆トスカーナの田園を抜けてシエナへ!


私の企画でご旅行される人というのは
イタリア好きが多い

私は、このブログの中で「好き」という言葉をよく使う

「好きなのかどうか」
「本当にやりたいのかどうか」
そういう姿勢は、イタリアに来てから学んだ大切なことだ

「好き」であるかどうかということは
日常的な心の確認作業である

「イタリア大好き!」 という人はたくさんいるが
それ以上の表現は、なかなかちょっとない

でも、このHさんの奥様がそうだった
この方は、"LOVE"という言葉をよく使う

ご旅行名が『LOVE・ITALIA』だった

私はこういう人が好きで (←ああ、また言ってる(笑)) 
力になりたいと直感的に思ったが
あいにく、当初はかなりのお急ぎだった

「明日までに・・・」と、プランニングを迫られたのである
そのときの私には、無理な話だった

ご要望もちょっと難しいもので・・・
地方都市をいくつも取り入れたプランは
単純計算では到底できないものだった

そんなわけで、どうしても無理なので
私のほうでお断りさせてもらうことにした


でも実際のところ
Hさんはお困りの状況だった

他社で2つのプランをもらったらしいが
どちらにも満足を得ないというのだ

たしかに難しいご要望だったし
そもそも・・・
"LOVE"に応えるには
かなりの労力が要る(笑)

私のプロフィールやこのブログの過去の記事を
読んでくださっていたHさんは

私に何とかやってもらいたいということだったので
何とかお待ちいただくようお願いした


ようやくプランができあがった!

「私たちの要望をよくここまで・・・感服しました!」
「待ったかいがありました!」
という嬉しいお言葉をいただいて
実現のものとなった

ご自身の運営するブログの中で
胸のうちを綴った記事も拝見させていただき
とても嬉しくなったものだ☆


そのHさんに、先日シエナでお会いした

ここは、もちろん世界遺産にもなっているけれども
そんな勲章など、かすんで見える

あえて「世界遺産都市シエナ」と
いまさら声を張り上げていう必要もない

ずっと長いことそこにあり
ずっと価値を保ち続けてきた街だ


null
by Akiko Sugesawa



Hさんの奥様は、想像したとおり
目がキラキラ、ときめいてらっしゃる方で
ものすごく、LOVEパワーを感じた☆

元気なパラリーガルのこの方は
夏じゅう休まずにお仕事されて
ご主人とのイタリア旅行を楽しみにされていたとのこと

イタリアが初めてというジャーナリストのご主人は
日本の地方について記事を書いていらっしゃるそうだ

私も学生のときに読んでいた有力新聞社の記者さんに
こんなところでお会いできるとは不思議な縁だ☆

でも、シエナというトスカーナの地方都市については
ほとんどご存じなかったので
まったく無欲のプライベート・ヴァカンスだったようだ

「そういうことなら、シエナはとても面白いですよ」
と私は言って、話を始めた

かの名高いカンポ広場でのことである



by Akiko Sugesawa



シエナは興味の尽きない街である

「都内の行政の人たちが
視察研修にきたこともあるんですよ」という話もした

2年前に視察団をコーディネートをした経験がある
企画段階から携わったのだが
税金をかけての視察は、真剣そのものだった

イタリアの地方都市は
ここ数年、日本からの注目を集めている

フィレンツェからシエナへは
バスの車窓から見える景色が良かったそうで
奥様が「何かこう、日本の田舎にも似ているような・・・」
とおっしゃったので
「なつかしいような・・・?」と私が言った

日本各地にお住まいになった経験を持つご夫妻は
地方都市がお好きなんだそうだ


私はHさんご夫妻に会った数日後
日本から持ってきた一冊の本を読んだ

この6月に東京で刊行されたものだ

対談式のシリーズ本の初回
ホストは文化人類学者で、毎回ゲストが変わる

初回のゲストとして迎えられていた人が
おそらくはイタリアの田舎ブームを引き起こした女性である

話題を呼んだ2000年の著作を書くまでは
イタリアの田舎のことなど語れなかったらしい

それが今や、関心の的である

私も、地方都市に関する記事の連載など
いくつかの依頼を受けたことがある

実際、イタリアに住んでいる日本人は増えているが
観光情報以上のものを書ける人が
なかなか見つからないんだそうだ

なるほど、そう指摘されてみれば
私の意識はもっと別のところにあることに
あらためて気づかされる

             →初めての方は、プロフィールをお読みください



この女性は「スローフード」という
イタリア製英語を日本へ持ち込んだ人物である

先日、エコロジーの「エコ」という言葉が
商法として乱用されているという悲観記事を読んだが
その前に日本で流行った類語が、これだ

ブームが過ぎ去った今
「スローフード」の真髄を語ろうというものである

小さくて、手にとってみてもフワッと軽いこの本には
見かけによらず、すごいことがいっぱい書いてあった

食の話から始まり
ライフスタイル・子供の教育・環境汚染・
経済・政治・歴史・産業・過疎化・グローパリズム・・・

日本とイタリアを行ったり来たりしながら
あらゆるものの見えない繋がりを語っているのが
この本である

私たちを取り巻く日常の知られざる
怖い話がいっぱいあるのだけれど
読んだあとには爽快感がある

明るい未来の兆しが見えてくるのだ☆

そして、これからのキーワードは
「地方」「地元」「ローカル」である


このスローフーダーは、とってもすごい女性だ☆

イタリアへ行って開眼しているところが興味深い
イタリアの都市ではなく、地方の小さい町や
農村に行ってからのことである

単なるイタリア好きではなく
日本の、そして地球の未来を考えている人だ

志が高い☆

私とこの人の見てきたイタリアには10年位の差がある
もちろん、見てきた地域の差もある

誰とどう過ごしてきたかも違う
何にエネルギーを注いできたのかも違う
そして、日本で生まれ育った環境もかなり違う

それでも、かなり共感した☆

日本での地方の見直しが
イタリアと深く関わっていることが面白い


私よりもずっと先輩のHさんご夫妻からも
「地方」や「田舎」という話が出てきたのは
きっと偶然ではないように思うのだ

地元のレストランへご案内しながら
ご主人に「シエナの美味しいものは何ですか?」聞かれた
私は「クチーナ・ポーヴェラ」と答えた

直訳すれば、「貧しい料理」あるいは「粗食」
そもそも、地元で取れる新鮮な食材を使って
普段から食べていたものが
滋味豊かで、美味しく
ある意味で一番の贅沢なのである

それはまた、「スローフード」のエッセンスでもある

都内の視察団が「町」としてのシエナを見にきたとき
「これはスローフードとも関連するんですよ」
と言ったのだけれど
当時、果たしてどれだけのことが伝わったのだろうか?


対談本のホストである陽気な人類学者は
いろいろ聞かれたときに、こう言うんだそうだ

「君自身の感性を信じよう」

こう言ってしまったときのリスクを承知の上で
この人は若者たちを信じている

数字だけで評価される時代にあって
この眼差しは何とも温かい☆

私なりの解釈で、自分の感性を信じるとは
「本当にそれが好きなのかどうか」を
自分自身に問うことである


その「好き」を
"LOVE"にまで昇華できたなら・・・

きっとそれは
素敵なことにちがいない☆



参照:『そろそろスローフード ~今、何をどう食べるのか?』島村菜津+辻信一
2008年6月、大月書店





>>メールを送る   >>他のイタリア関連記事を読む
authorsugesawa  linkLink  comment0 
categoryイタリア  time17:52

2008-09-12

ゆったり地中海を眺めて☆南イタリア・プーリア地方の白い町


Kさんたちがイタリア南部プーリア地方の
浜辺でのんびり過ごしているころ

私は真夏の東京で、旧友たちと
あるイタリア郷土料理の店に居た

日本に一時帰国して
「久しぶりにお会いしましょう」
ということになったとき

誘ってくれる人は
大きく2つのタイプに分かれる

「久々の日本でしょうから
日本の美味しいものを・・・」
というタイプと

「イタリア料理店でワインでも飲みながら
向こうの話をいろいろ聞かせて欲しい」
というタイプである

私は、どちらも好きである

超多忙の人たちに会えるだけ
幸運というものだ

イタリア系(?)日本人の場合
たいていは後者になる


イタリアには20の州があるのだけれど
東京では、そのすべての味が楽しめるという

東京というのは、すごい街だ☆

私の行った店は
料理もいいが、雰囲気がよかった
そして、カメリエーレ(給仕人)が◎

ゆっくりと話しながら食事をするのに
もってこいの場所である

忙しい東京人たちに
そういう場所は魅力だろう


カメリエーレは、おしゃべりな男性だった

でも、こう言うと誤解を招くかもしれない
「おしゃべり」という言葉はちょっとやっかいだ

もちろん、いい意味での「おしゃべり」である
話も振る舞いも品格のある人だった

マニュアルどおりの
機械的な笑顔と受け答えをするのとは
まったく違う

きちんと自分で考え
自分の言葉でしゃべっている

こちらも本気で話がしたくなる
そういう人だった


私は、おしゃべりな日本人男性が好きである
やっぱり真摯なおしゃべりがいい

イタリア社会に溶け込む人は
そういう人が多い

・・・と思う

この、東京で出会ったカメリエーレもまた
おしゃべりで印象に残る人だった

私と同世代、きっと私よりちょっと年上の感じ
この人の将来が楽しみだ☆


そして「美味しいもの好き」とは
どうしても気が合ってしまう

7月にプーリアを旅したKさんご夫妻もまた
そういう人たちだった

自ら称した旅の名は
『見て!食べて!世界一の料理と遺産』である

素晴らしい遺産を見て
美味しいものを食べたい

イタリアを旅する人の適正からすると
バッチリ!☆である(笑)

奥様はこれで5度めというイタリアの大ファン
今回初めてのご主人も
やっぱりイタリアが好きになった


そもそもKさんご夫妻の旅の目的地は
プーリア地方ではなかった

話をしているうちに(メールを交換しているうちに)
「海を眺めて、ゆったりと」が
最大のテーマであることがわかってきた

そういう流れの中で、
「じゃ、プーリアにしましょうか?」という
私のひらめきに賛同してくれた

こうして、『見て!食べて!・・・』の旅は
ローマを絡めたプーリア地方の旅に
決まったのである☆


プーリア地方は
昨今の日本で脚光を浴びつつある

私が一時帰国していたこの夏にも
プーリア特集の旅行雑誌が出版されていた

私のよく知っている人が指南役となったらしい
本人に聞いたのだから間違いない

私にとって目新しいことは何もなかったが
さすがに、よくできた内容の雑誌だった


Kさんご夫妻は、"イタリアのかかと"への旅を
「まるで2度めの新婚旅行のよう」に
出発前から楽しみにされていた

そして、た~・・・っぷりと愉しんでいらした☆

いただいたお写真を眺めていると
本当に新婚旅行みたいで(笑)

「お幸せに・・・」なんてお決まりの文句が
自然と口をついて出てきそうになる

null

南イタリアの太陽にも負けないくらい
とっても眩しい笑顔だ☆

こちらまで顔がゆるんで
いつの間にかニッコリさせられてしまう


彼らは、私よりちょっぴり年下の
おしゃべり派にちがいない人たちである(笑)

いただくメールの文章はいつも饒舌で
情熱に満ち溢れていた

けれども決して圧迫感を帯びることはなかった

用件だけを並べ立てる
一方的なおしゃべりの類ではなく

常にお互いの信頼関係の上にたつ
しっかりとしたコミュニケーションがあった

だからこそ、とんでもない方向から
いい旅ができあがったように思う☆


旅の後にいただいた文章を読んで感じたのは
この人たちは「旅上手なのだな」ということだ

旅というのは
やはり、その人の生き方を反映している

このブログの最初の記事に書いたことは
もう、確信に近い!                 →こちら


幸せなご夫婦からいただいたお便りは
なんとも素敵だ☆

「旅のヒント」と「生きるヒント」が
いっぱい詰まった玉手箱のようにさえ
感じられる
             →Kさんご夫妻からのお便りはこちら


このお便りの後・・・

つまり、最後の最後にわかったことだが
彼らにとって「食」はかなり重要らしい

幸せの鍵は、ひょっとして
ここにあるのかも知れない☆



>>メールを送る   >>他のイタリア関連記事を読む
続きがあります
authorsugesawa  linkLink  comment2 
categoryイタリア  time06:35