2008-06-17

サッカー"EURO 2008"☆王者イタリアの意外なる苦戦


サッカーのヨーロッパ杯"EURO 2008"が始まって
私たちは、ほぼ毎日試合を見ている

イタリアのサッカーといえばセリエAだが
チャンピオンリーグはとっくに終わっている

ヨーロッパ杯ではセリエAの強豪スター選手たちが
今度は国籍ごとにグルーピングしてプレーしているわけだ


私は正直なところ
セリエAよりこちらのほうが好きだ

品があるし、落ち着いて観ていられる

セリエAはむやみにスタジアム観戦するものではない
行っていい試合とそうでない試合がある

いっぽう、こちらは実にいい☆
祝祭的な雰囲気もあって華やかだ

チームの顔ぶれから
お国柄も国の歴史も見えてくる


今年はオーストリアとスイスによる共同開催だ

そもそもヨーロッパには小さい国々が多い
そういう2ヶ国が手を結んだ

イタリアの初戦は9日の月曜
スイスのベルンでの試合だった


イタリアのナショナルチームは
そのユニフォームの色から
通称「アズーリ」と呼ばれる

"Azzurri" なので、正確には発音がちょっと違うのだが
日本人に巻き舌の"r "が重なる音は難しいし
カタカナでしっくりする「アズーリ」で定着している

青っぽい色である
これ以上説明はいらないだろう


たぶん日本でワールドカップが
あったときだったと思う

アズーリは日本の女の子たちに大歓迎を受けた

誰が言ったか知らないが
アズーリは「セクシー」だと別格の歓迎ぶりだった

・・・らしい(笑)


ところが"EURO 2008"初戦のアズーリは
全く精彩を欠いていた

対戦相手はオランダだった

「青い」芝生で・・・といっても
実際に見える色は「緑」のコートで

イタリアの「青」とオランダの「オレンジ」が
躍動感溢れる動線を描いていった

美しいプレーがたくさんあって
とても見ごたえのあるいい試合だった☆


明らかにオレンジの線が強かった

オランダの戦いぶりは素晴らしく
アズーリのキャプテンにして名キーパーの
ブッフォンをしても止められない勢いがあった


アズーリのほうはフォワードが冴えなかった

ソファの隣でウチの旦那が
「デル・ピエロを入れろ!」と早くから言っていた

2-0でリードされ
後半もだいぶ経ってから
やっとデル・ピエロが投入された

それでも点が取れないアズーリは
どんどん追い込まれていった


そこで監督ドナドーニは
カッサーノという選手を入れた

これは戦略の変わったことを意味する

ミッドフィルダーに変えて
フォワードをもうひとり増やし
スリートップの戦法に切り替えたのだ


そこからがもう、ガタガタだった

ディフェンスの弱くなったアズーリは
またしても追加点を取られてしまった

実質、その時点で
アズーリの負けは決まった★


両国の監督は、かつて名門ACミランに所属し
セリエAで共にプレーしたチームメイト同士である

その夜、ふたりの男の監督としての仕事は
はっきりと明暗が分かれてしまった


2年前ワールドカップで世界を制覇したアズーリは
"EURO 2008"の初戦を惨敗に終わった

王者のちょっと信じがたいプロローグである

アズーリは試合後
メディアを通じてイタリア国民に詫びた


翌日、ドナドーニ監督の苦悩する写真を
何かの新聞の一面で見かけた

この人は、トスカーナ海岸沿いの町
リヴォルノの監督をしていたこともある

数年前に当時のセリエAチームを率いて
ウチの近くで合宿をしていた


苦渋に満ちた顔でドナドーニが言う
「なんとかしなければならない」



  *  *  *



イタリアの第2戦はチューリヒのスタジアム

キックオフは13日金曜の18:00
イタリアとスイスの間に時差はない

ルーマニアを相手に1-1で引き分けた


諸事情により
私はこの試合を観ていない

翌日各紙の一面は
キーパーのブッフォンが飾った

彼がその試合のヒーローとなったのは
終盤のPKでルーマニアの追加点を阻止したからだ

彼の活躍でイタリアは
グループ予選通過の望みをつないだ

ブッフォンの勇姿☆


by Akiko Sugesawa


↑イタリア第2戦の翌日、コーヒーを飲みに出たとき
バールの円テーブルに置かれていた新聞たち


私は自宅から遠く離れた場所に居た

このスポーツ紙の3語から成る見出しは
会話の中でよく使われる俗っぽい言い回しである
語学学校では決して教えない(笑)

訳すとすれば「こりゃ大変だ、大混乱だ」みたいな感じ

どんなに活躍してもこのアングルは
ゴールキーパーの悲しき定めかな(涙)


17日火曜の20:45
負けられない第3戦が待っている

今日である☆

やはり意外な不調ぶりをみせている
フランスが相手だ

2年前には世界制覇をかけて決勝を争った
いずれも力のある男たちなのである




  *  *  *




・・・勝った!☆





by Akiko Sugesawa


↑イタリア第3戦試合終了直後、テレビ画面を撮影
    「 フランス 0:2 イタリア 」




予選通過、ベスト8進出だ!☆




  *  *  *




9月にイタリアをご旅行されるHさん
メッセージありがとうございます♪

大好きなピルロが1点目決めてくれましたね☆

あれっ?!次の試合出られないんじゃ・・・?
えっ、ガットゥーゾも?

バルザーリも負傷って・・・
本来主将のカンナバーロのいない
ディフェンスの戦力がさらに弱くなっちゃうの?!

こりゃ、ホントに大変だ!


スペイン戦は22日の日曜の夜
ウィーンのスタジアムで

本選は負けたらおうちへ帰る
完全トーナメント制

Forza Azzurri ! ☆


ああっ! 予選で絶好調だった
オランダがおうちへ帰っちゃった・・・

ごくごく個人的には
陽性なオレンジのカラーと
監督ヴァン・バステンのエレガンスを
本大会から失うのがあまりにも惜しい★ 6/21(土)



  *  *  *



旅の企画担当者としてご指名を下さいましたMさん
コメントありがとうございます♪

このブログの記事になるような印象的な旅を
Mさんにもおつくりしたいと思っています


6/22(日)23:20
残念ながらアズーリの敗北が決まった★

延長戦の末のPK合戦

スペインの若き美しきキーパーの
身体能力が素晴らしかった☆

それでもやっぱり
ブッフォンを讃えたいと思う一方で

明日からどの国を応援しようかと
私はちょっぴり途方に暮れている



               - 完 -



>>メールを送る   >>他のイタリア関連記事を読む
authorsugesawa  linkLink  comment0 
categoryイタリア  time14:55

2008-06-09

古代への情熱☆ギリシャ×ローマ


さっきまでの青空が一転して
大粒の雨がまた降り出した

イタリアの学校は夏休みに入ったというのに
いまだにトスカーナの陽気は安定しない

「地中海晴れ」の続く乾いた夏の空気が
まだ感じられないのだ


先日、遠出した朝は
ひどいどしゃぶりの雨だった

その日、私はローマへ行かねばならず
仕方なく列車に乗った

Inter City Plus という列車で
普通のインテルシティよりハイランクの
全席指定の急行「インテルシティ+」だ

私はうっかり「+」を英語風に
「インテルシティ・プラス」と言ってしまった

ところが
「インテルシティ・プルス」なんだそうだ

日本人は英語を先に習ってしまうから
こんなときは障害になる

彼らはラテン語式に言うのだ

ラテン語とは
古代ローマ人たちの言語である


「プルス」に乗って窓際の席に着いてみると
向かいには女の人が座っていた

見るからに”キャリア風”だ

ポータブル・コンピューターを開いて
キーボードを忙しく叩いていた


トスカーナも南部に入り
ラッツィオへの境界線にさしかかるころ
雨が止んだ

ローマはイタリアの首都であり
ラッツィオの州都である

6月2日は共和国記念日で
共和国としてのイタリアは
62歳の誕生日を迎えようとしていた

日本と同じく敗戦国のイタリアは
やはり極度の貧困の中から
立ち上がってきたのである

戦後の映像からは
とても今のイタリアは想像できない


”キャリア風”の女性は
相変わらず忙しそうだったが
自然の流れとして言葉を交わすことになった

彼女の話し方はどことなく品があった

どう考えてみても
私よりひと回り以上は年上の女性だった

話しているうちにこの人は
大学でギリシャ語を教えていることがわかった

彼らのいうギリシャ語とは
古代ギリシャ人たちの言語のことである

既刊の著書も数冊あるらしい

私は、古代ギリシャ世界に関して
いくつかの質問をした

なるほど!という答えが返ってきた
さすがだ☆


彼女の専門は
古代ギリシャ語および文学である

私の専門は
建築および都市である

私たちはお互いの意見を交換し合いながら
関心のリンクするところがあることを確認しあった

地中海とは、そもそもそういう世界だ☆

なぜ私が旅行の仕事にまで関わるのかを話すと
その真意をすぐさま理解してくれて
"Bel lavoro!(素晴らしい仕事ね)"と言った


先月、彼女の新しい本が
トスカーナの出版社から出た

ちょっと変わった趣向の本だ☆

新聞"la Repubblica"『ラ・レップーブリカ』の
文化面に取り上げられたくらいだから
きっと話題の新刊なのだろう

その名も「共和国」という名の
この国の最有力紙に載ったという記事を
彼女は見せてくれた

別のところへ載せるという
原稿も読ませてくれた

この本の主旨を
熱意を持って語ってくれた

どういった経緯で
この本が生まれてきたのかも話してくれた


今回のローマ行きは
彼女にとって特別なものだった

「今日はね、私の先生に会いに行くの・・・」

列車から降りる寸前
彼女は打ち明けるように切り出した

肝心の新刊本を見せてくれなかった理由は
そういうわけだった

プレゼント用にラッピングしてあって
あけられない状態だったのだ

「見せてあげられなくて残念だけど・・・」
と何度も言っていたが
恩師へ仕事の成果のご報告となれば当然だ


それにしても
「私の先生」って・・・

"il mio professore"
「イル・ミオ・プロフェッソーレ」
と言ったから男性のはずだ

もし女性だったら
"la mia professoressa"
「ラ・ミア・プロフェッソレッサ」になる

かなりのご高齢だろう

それはこちらから聞かずとも
彼女のほうから教えてくれた

"Ha novantasette anni."
「ア・ノヴァーンタセッテ・アーンニ」
噛み締めるように言った

「97歳」
超・高齢者である☆

ところが、驚きはそこで終わらない

少女のような笑みを浮かべて
彼女はこう続けた

「まだ研究を続けてらしゃるのよ」

   !!!

なんと現役の学者である☆


列車はローマ市内に入り
私より一つ手前の駅で彼女は降りた

そのとき車窓の外には青空が広がり
ヴァチカンのサンピエトロのクーポラ(円蓋)が
美しく見えていた

「あなたにお会いできて本当によかったわ」
と彼女は言ってくれて
私たちは硬く握手して別れた


彼女が列車を降りてから
私はふと無口になってひとり考えた

ヨーロッパ文化の源流といわれる
地中海の古代のことを

古代ギリシャとは
そんなにも深遠なる世界なのか?

そして・・・

情熱の97歳とは
いったいどんな人だろう?


そうする間に「プルス」は
ローマのテルミニ駅に着いた




   *  *  *



古代ギリシャ文明が古代ローマに受け継がれ
ヨーロッパの基礎となる土台が築かれたといわれる

その源流は脈々と現代に息づく

なにも当時の遺跡のことばかりを
さしていうのではない

たとえば・・・
ローマ観光定番中の定番、「トレヴィの泉」



by Akiko Sugesawa




ずっと時代が下ったバロック期のこれにだって
実は古代世界が関連している

トレヴィの泉について何か書こうとすれば
本一冊分くらいにはなるだろう

美しいがゆえにもてはやされているわけでなく
古代の流れを受け継ぐからこそ
ローマの定番として君臨できるわけだ

その美しさ
やっぱりタダモノではない☆




>>メールを送る   >>他のイタリア関連記事を読む
authorsugesawa  linkLink  comment0 
categoryイタリア  time00:01