2008-03-31

Ha5 ワイキキ・アクアリウム

楽園ハワイには水族館があります。その名はワイキキ水族館。英語で言うと、「ワイキキ・アクアリウム」何か変ですね。聞き慣れないからですかね。

その日は相変わらず良い天気で、ぼくは日課である朝のジョギングをしていました。ワイキキ海岸のカラカウア通りからダイアモンドヘッド方向にトコトコ走っていると、右方向に魚くんたちのテレパシーを感じて、道路の反対側を見ると、やはり、ワイキキ・アクアリウムと看板に書いてあります。

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魚くんたちがぼくを呼んでいる。エコ・マニアにはわかるんだ。彼らを見たくなったぼくは、入場料7ドルを払って、中に入りました。入り口で、日本語による説明が無料で聞けるレシーバーを貸し出しているので、英語が苦手な人でも十分楽しめます。水族館の中庭には珊瑚礁を再現した大きな水槽があり、中の様子をガラス越しに観察することが出来ます。

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ハナウマベイでよく見掛ける魚のダイジェスト版といった感じです。ボランティアの若い綺麗なおねえさんたちが海辺の生き物や魚の生態を詳しく解説してくれます。中はエコ・マニアが喜びそうな魚くん達がたくさんいました。ヤア、お久しぶりだねえ。

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ぼくは、左右を見ながら、ゆっくりと水族館の中を歩き回りました。その時、専属ガイドらしい金髪女性が来て、何か話しかけてきました。えーと、何言ってんのかな?ひどい巻き舌で、よく聞ききとれません。早口で、話しかけて不思議そうに???肩をすくめ、ぼくを見ています。

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「Hi ! Good morning could I help you? 」    (^o^)
[Don’t you know sea dragon ?]      (^^;)
[Oh yes it’s over there]     (^_^)/

言われたとおりに、奥に進むと、例のオーストラリアの海に住む海龍、リーフィーシードラゴンが水槽の中を悠然と泳いでいます。
「ドラゴン君、元気でいてくれたかい」
水槽の中の彼に、日本語で話しかけてみました。わかるかな。わっからねーだろーな。

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水族館の出口で、さっきの可愛子ちゃんにまたあいました。

「Thank you baby」   (^_^)v
[Have a nice day ! Bai-by!」   (^_^)/~

さて、これからどこにブランチを食べに行こうかな。
じゃぁねー、またねー、元気でねー!その日は何となく、嬉しい1日が過ぎて行きました。(続)

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2008-03-30

Ha4 ダイアモンドヘッド・ウォーキング

楽園ハワイの象徴はダイアモンドヘッドです。ワイキキビーチやアラモアナショッピングセンターから見ると、ああ、ハワイに来たんだなーという気分になります。太陽の下のサーフィンやカタマラン、夕焼けの中のサンセットディナークルーズ。その遙か彼方にダイアモンドヘッド。とても絵になる風景です。

そのダイアモンドヘッドの外側をウォーキング出来る事はかなり前から知っていたのですが、ぼく自身、まだ歩いていませんでした。直接は関係無いのですが、今回のウォーキング計画のきっかけとなった日系某航空会社の閑散期の販促イベントとして設定したホノルルマラソン。そして、メイヤーズウォーク。それについて、近頃こんな噂が流れていました。
「もうすぐ、ホノルルマラソンに、時間制限が出来るらしいよ」

当初、オフシーズン対策としてホノルルマラソンを仕掛けた某航空会社と系列の旅行会社は当然ですが、地元のホテル、観光業者達も、大反対しました。お客様が大幅に減るからです。しかし、たった年に1度のイベントですが、地元の住民たちにとっては、朝早くから何千人もの素人ランナーに道路を独占され、歩道、車道を汚されては、たまったものではありません。そこで、時間制限の話がでたというわけですが、その意見も経済的理由で、ボツとなりました。ホノルル市の経済が、諸般の事情で厳しくなったからだそうです。エコロジーはエコノミーに勝てずです。

その日の前日、ぼくはロコ仲間を誘って、ダイアモンドヘッド一周ウォーキングを決行する事にしました。当日は快晴で微風、朝早くから、全員で、ワイキキビーチに集まり、準備運動を始めました。

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いざ、出発。最初は快調なペースでカピオラニ公園の端を歩き始めました。途中、休憩を入れながら、高級住宅街をゆっくりと歩きます。左右には、綺麗に手入れされた花壇もあるような住宅街が続きます。

1時間と少し歩いたところで、ダイアモンドヘッドの入り口の表示板の前にたどり着きました。ハイ、ポーズ。エコ・マニアが喜びそうなショットが撮れました。元気そうに撮れたかな?などと、話しながら、ロコ仲間に記念写真を撮ってもらいました。

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丘を越えて、トンネルをくぐり、ダイアモンドヘッド公園の中に入っていくと、なんと!本日は、閉園。ガビョーン!ガックリしました。

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あぁ、ショック。でもまあ、こんなことも人生のうち何回かあるからね、と気を取り直して、入ってきた道を戻り、さらに山の東側を歩き始めます。

ぼくは、左右を見ながら、ゆっくりとダイアモンドヘッドの外周道路の歩道を歩き続けました。途中、本土から来たアメリカ人の陽気な若者達が話しかけてきました。ローラースケート、やロラーボードに乗って、楽しそうです。早口で、何か叫んでいます。オット、危ないなあ。

[Watch your step !] (*_*)   
[Doggy’s shit !]        ('_')
[WHAT ! DOG SHIT !]        (>_<)

えーっ、犬のうんこ?
おっとっと、靴の裏に、すんでのところで、犬のフンを踏むところでした。

[OH ! THANKS !」  (^O^)
[You'r well come]       (^_-)
[Have a nice day !]           (^^)/

ビュンビュンとスピードを上げて追い抜いていく男の子達が、ピース!サイン。ぼくも、負けずにダブルピース!
やれやれ、変なおっちゃんが、危ないところを助けてもらって手を振りまくっている感じですかね。

さて、これからどこで、お弁当を食べようかな。ぼくは、なだらかな坂を下りながら、波打ち際の方へ降りていきました。やわらかな芝生に腰掛けて,サンドイッチを食べ、水を飲み一休みしました。さあ、ワイキキビーチに向かって、最後のがんばりです。午後2時過ぎ、5時間あまりかけてようやくワイキキビーチにたどり着きました。

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ロコ仲間達も、三々五々到着し、お互いの健闘をたたえ合いました。ジャネ、元気でネ、お疲れさま!先ほど、サッと軽くスコールが降ったので、雨上がりの砂浜は人影もまばらです。空気は素晴らしく澄み渡り、空には綺麗に七色の虹が架かっていました。(続)

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2008-03-29

Ha3 ホノルル・ズー

楽園ハワイには動物園があります。その名はホノルル・ズーといいます。ここのエコ事情も厳しいようです。もちろん日本人でも、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。でも、サーフィンやダイビングなど、海でのレジャーや、ブランドものの買い物に忙しくて、何も今さら動物園なんて、日本でも見られるよ、と皆さんは考えます。

ぼくもハワイに10回以上来ていたのですが、オアフ島のホノルル動物園に入ったことがありませんでした。恥ずかしながらハワイに来てから知ったのですが、こんな噂が流れていました。
「もうすぐ、ホノルル動物園が閉鎖して、取り壊されるらしいよ」

地元客には飽きられ、観光客にも見向きもされなければ、入場料収入はあがりません。ここも経済的理由で、存在そのものが危なくなってきているのだそうです。

その日はまあまあの天気で、ぼくはいつものようにワイキキ・ビーチをえっサ、こらサ、とダイヤモンドヘッド方向にウォーキングをしていました。

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何となく左方向に動物の声がするようなテレパシーを感じて、道路の向かいを見ると、やはり、ホノルル・ズーと看板に書いてあるではありませんか。

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アッ、そうか、動物たちがぼくを呼んでいるんだな。彼らに会いたくなったぼくは、当然、6ドルの入場料を払って、園内に入りました。

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中はエコ・マニアが喜びそうな動物がたくさんいました。ヤア、お久しぶりだねえ。ライオン君、元気でいてくれたかい。などと、百獣の王に話しかけながら猛獣エリアを抜け、その先へと歩いて行きます。

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草食動物エリアの真ん中で、カバ、キリン、シマウマなどの群れが、日向ぼっこや、お食事中で、みんな楽しそうに遊んでいます。あ、アレは、何というカモシカ?かな。変わった草食動物が見えてきました。お、手前に変な鳥もいるよ。

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ぼくは、左右を見ながら、ゆっくりと公園の中を歩き回りました。その時、横に可愛いい女の子を連れたアメリカ人親子3人連れが来て、何か話しかけてきました。えーと、なんや、道聞きかな?ひどいテキサスなまりだからよく聞ききとれないなー!早口で、しゃべるだけしゃべって不思議そうにぼくを見ています。何だよ、ぼくは、ただの小父さん。善良な市民じゃなかった、観光客です。

「Hi ! Good morning What Can I do for you? 」     (^o^)
[Don’t you know where a toilet ?]    (^^;)
[Oh yes over there]      (^_^)/

カモシカもどきが見ている前で、おしっこをもらしそうにモジモジしている女の子に、ピース!サイン。やれやれ、変なおっちゃんが、愛敬を振りまいてるって感じですかね。

さて、これからどこらあたりに昼飯を食べに行こうかな。
「Thank you sir」     m(_ _)m
[Good luck! By-by!」        (^_^)v

ほんじゃまぁ、お元気で、お疲れさま!その日は何事もなく、平和な1日が過ぎて行ったのでした。(続)

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2008-03-28

Ha2 モアナルアガーデン

楽園といわれているハワイもエコ事情は厳しいようです。
ハワイにきてから初めて知ったのですが、「この木何の木気になる木♪~」のテレビコマーシャルで有名な、「モアナルアガーデン」。ここも経済的理由で、所有者から現地の不動産会社に売られ、住宅地にされそうになったそうです。まあ、何とか、日本の太っ腹な某電気メーカーの援助で事なきを得たのですが。

その日は晴天で、ぼくは、何となくどこかの公園に出かけたくなりました。ワイキキのホテルの前からザ・バスに乗り、アラモアナバスセンターまで行き、ザ・バスを乗り換え、1時間以上かけて、モアナルアガーデンまで来たのです。

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やはり、ハワイで車がないと不便です。多分レンタカーであれば、30分で来たでしょう。いかに、エコツアー・マニアといえども、ちょっとかったるい感じがします。でも、まあ気を取り直して公園の入り口まで歩きましょうか。
「あれ、こんな所に立て看板がありますね、えーと、公園内では、飲むな、食べるな、動物はダメ、商売用の写真撮影はダメですって」

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公園の真ん中で、日向ぼっこや、ストレッチ、軽いジョギング、ウオーキング、追いかけっこ、みんなで楽しそうに遊んでいます。

公園の中に入り、左右の草木や人々などを見ながら歩いていくと、あ、見えてきました、「この木何の木気になる木♪ 気になる木ですから何とか何とか、フンフンフン♪」アレ忘れてしまったな。この木のあとはなんだっけ?ワイキキバニアンツリーなんちゃって?

ぼくは、回りを気にしながら、ゆっくり、ゆっくりと公園の中を歩き、その木を目指して歩いて歩いて。まもなく、あの毎週日曜日の夜8時からの某電気メーカー提供の「世界何とか発見」だったかな?その木が見えてきました。それにしても広い公園です。

その時、横に可愛いい女子高校生、多分ロコかな?私服だからわかならいけれどもね。不思議そうにぼくを見ています。な、何ですか、ぼくは、ただの旅行者、または、善良な、市民、じゃなかった、えーと、英語でしゃべらないと、

「Hi ! I’m from Japan . Just look around this park」 (^_^)v
[Shall I take a picture a ha!?] (^o^)
[Oh yes one moment please] (^^;)

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この木なんの木気になる木の前で、ハイポーズ!やれやれ、まあ、変なおっちゃんが無理矢理に、写真をとってーな、てな感じですかね。

さて、これから彼女を何と言って口説こうかな。ぼくは、ボーっとしながら、33年前の、ハワイ州立大学に短期留学をしていた頃、と言ったら大げさだけれども、サマースクール語学学校と、ハワイ州立大学の地理、地学の補習授業にでていた頃を思い出していました。

「Good luck! Chao!」 (^_^)/~
「Thank you by!」 (^_-)

ジャーニー!お疲れさま!ナンチャッテネ。その日は何かいいことがありそうな予感がしたのは、この事でした。(続)

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2008-03-22

Ha1 マウカトレイルズ

楽園ハワイの初夏は爽やかです。
ホテルの窓枠いっぱいの青空に、初夏の日差しが眩しく光っています。午前7時、ぼくらを乗せたランドクルーザーが、ワイキキの各ホテルを回り、今日の参加者をピックアップ。コオラウ山脈の中腹を目指して走り出しました。

ランドクルーザーに乗り込んだ日帰りネイチャーツアーの参加者は、ぼくの他に初老の夫婦が2組、新婚ほやほやのハネムーンカップル、ガイドのパンチョ山本さんを入れて、計8人。

パンチョさんがロコ訛りのある日本語でゆっくりと話し始めました。
「さて、本日はマウカトレイルズというところを歩きますが、トレッキングを始める前に準備運動をします。トレイルは結構厳しいところもありますので、足下に十分ご注意をお願いします」

駐車場の真ん中で、準備運動、足のストレッチを終え、マウカトレイルズの入り口から、なだらかな丘を登り始めます。徐々に、草木がうっそうとしてきます。

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ジャングルに入り、左右の草木や昆虫などを見ながら歩きます。あるある、赤い花、黄色い花、白い花。大きな木、笹原に混じり、熱帯地方特有の草花があちらこちらに咲いています。おや、あの大きな木の実はなんだろう。熱帯の山の中にパンの樹でしょうか?

ぼく達は、パンチョさんを先頭に、ゆっくり、ゆっくりなだらかな山道を丘の頂上を目指して歩いていきます。まもなく、頂上にある電波塔の円形のアンテナが見えてきました。その時、パラパラっと小雨が降ってきたので、急いで、用意してきたレインコートを羽織りました。アーァ、やれやれ。

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頂上に着いて、小休止していますと、降っていた小雨が止みました。しばらくすると、丘の上から、ホノルルの街並みが、遙か南の方向に見渡せます。空を見上げると、くっきりと七色の虹がかかっています!ワォーッ、来て良かったーッ!

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下りは危ないから気を抜かないで、とパンチョさん。ぼく達は、山を下りながら先ほどの小雨に濡れた緑濃い竹林を抜け、ようやく、幹線道路に降りました。左右を見回すと入り口よりかなり下の道路の横だとわかりました。お疲れさまでした。アッ、ちょっと待って下さい、記念写真を撮りましょう。

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「お疲れさま!車にサンドウイッチがあります、皆さん集まって食べましょう」
パンチョさんが、優しい声で、皆に微笑みかけました。(続)

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2008-03-19

Ch1 春城 昆明

春爛漫。桜の花舞う季節になると美味い物が食べたくなる。
薫風に乗り、遠く多摩川堤の花見の宴からか、焼き鳥の香ばしい匂いが漂ってくる。腹が減った。ふと、一昨年に訪れた春城近郊で食べた焼餅を想い出した。

春城とは中国雲南省の省都昆明の別名である。亜熱帯にありながら、標高千八百メートルの高原にある為、年平均気温摂氏十五度の常春であり、花の都とも呼ばれている。

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焼餅に出会ったその場所は、春城の南東百キロメートル余り。車で約一時間半の距離にある石林公園。世界的に有名な奇峰群落である。

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緑の灌木の中に、黒褐色の岩盤が幾重にも突き出し、入り組んだ岩山と水面は水墨画の世界を彷彿とさせる。その石灰岩から成るカルスト台地は、二億八千万年前迄は、海底にあり、その後、地殻変動で隆起したのだ。

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瀟洒な石林賓館はその公園の入口にひっそりと建っている。昼食時のレストランの中は賑やかだ。中国人観光客があちこちの円卓で昼食を貪り食っている。テーブルの上には、現地名物料理の鵞鳥の丸焼きを中心に、焼きチーズ、ベークドポテト、など。

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私は連日連夜、豪勢な広東料理を食べ続けていたので、
「サッパリとした和風のものがいい」と我が儘を言った。暫くして出てきたのが、アッサリとした塩味の白身の川魚。つけ合わせの白菜が淡泊で美味い。隣の大皿には香ばしい焼餅の山。ガブリ。オイスターソースの香りに薄い塩味。懐かしいおふくろの味だ。「いやあ、日本人って我がままですから」と専属ガイドのワン(王)さんに言い訳し、大笑いする。

雲南料理には日本食文化のルーツを感じさせるものが多い。例えば、餅米から作る焼き餅、四角い灰色で粘っこい。過橋米線という黄色と橙色の入り交じった激辛味のスープ入り麺。大豆臭く少し酸っぱい発酵豆腐。黒い小粒の日本の物とはかなり違う納豆。川魚のなれ鮨まである。

中国雲南省を歩くと和食の原点を感じる。観るもの、聞くもの、食べるもの、少数民族の食生活の中に、日本食文化との意外な共通点に驚かされる。

旅は感動の連続、人生の醍醐味である。中国四千年の歴史の滔々とした流れと、山水画の静けさの漂う山里で、和食のルーツを見たような気がした。(完)

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2008-03-16

Ko4 サムゲタンで暖ったまろ

厳寒の2月のソウル。小雪舞い散る真冬のイーテーオンを、カミさんと二人で歩く。頬を刺す冷気に背筋がピンと緊張する。カチンカチンに凍りついた歩道をぶらつきながら、こんな寒い中を、よくもまあ好きこのんでソウルに来るものだと思う。旅行商品開発と言う仕事柄仕方ないが、年末年始の繁忙期を終えての短い休暇である。

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「おなかすいたぁ、アレ食べたいね」
カミさんの言葉に、ぼくのテレパシーがフル回転。アレってなんだろう?胃袋がグゥッと反応する。ビビッと閃いたのは、ホックホクのウコッケイのサムゲタン。ウコッケイは烏骨鶏。サムゲタンは参鶏湯と書く。烏色の丸ごと骨付きの鶏を土鍋でグツグツ煮込んだスープ料理である。

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表通りからタクシーに乗り込み、南大門横を北上。景福宮横の脇道を走り抜け、賑やかな商店街を横にみて、その奥まった静かな小道を進むと、馴染みの「土俗村」に到着する。 昼時の店の中は、ソウルっ子で混雑していた。

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「アンニョンハセヨ!」
元気良く、昔染みの李店長に挨拶する。笑顔の中に、懐かしさがこみ上げてくる。暫く待つと、小振りの土鍋からほっかほかの湯気が立ち上り、参鶏湯が登場する。一人用の土鍋の中に、餅米、高麗人参入りの参鶏湯が、コクのある塩味スープの中に、丸ごと1羽隠れているという感じである。

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フーフー、ズルズルッと塩味スープをすする。高麗人参の微かな香り、濃厚なコク。手羽先肉を前歯にひっかけ、肉を削ぎ取る。柔らかい食感。とろりとした喉越し。絶品。
「あァ、うまいッ、しあわせーッ」
笑顔がこぼれ、ウフフッと口元が思わず緩む。

暖かなオンドル部屋の中でカミさんと2人。美味い料理とビールを味わい、至福の時が流れる。ぼくらは世界一の幸せ者だね。美味い味に国境はない。グルメタウンソウルへの旅は、こうして毎年続くのである。(続)

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続きがあります

2008-03-15

Ma8 ニア国立公園

東京ぶんぶん’00,02,28   ボルネオ島サラワク州の商業都市ミリとビントゥルの間に位置する「二ア国立公園」は、4万年以上前にその洞窟内に原始人が住んでいたという考古学上重要な場所であり、東南アジアにおける古代文明発祥地のひとつとされている。

2月の下旬、ぼくは一人、ミリ発の二ア洞窟探検ツアーに予約した。ミリの町からバトゥ・二ア村までワゴン車で2時間弱。村から公園まではボートで川を15分。日帰りで二ア洞窟を探検するスケジュールである。

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2月25日の朝、ガイドのジョニーとぼくはボルネオ島サバ州のミリを出発。ワゴン車で1時間40分余り走り続け、ようやくバトゥ・二ア村に到着する。

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公園本部は焦げ茶色の屋根のロッジが建ち並んでいるが、全くのシーズンオフで、人影は無い。事務所に立ち寄り、暇そうにしているパークレンジャーに挨拶し、入園の手続きをする。観光シーズンは6月~10月で、ピークの8月前後は、毎日のように10件以上の団体が訪れ、かなり賑やかだそうである。

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無人のプランクウォークを歩き始める。左右に板根がそびえ立つ静寂なジャングルを黙々と歩くこと1時間半、ようやくニア洞窟の入り口に到着する。

ガイドのジョニーの案内で、最初にトレーダース洞窟に入る。その入り口は濃い緑に囲まれ、山の稜線から涼しい風が吹き下ろしてくる。洞窟の中は薄暗く霞んでいる。

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左手にツバメの巣を採取する労働者のあばら屋を横手に見ながら急な木造階段を繰り返し上下し、薄明かりに照らされた洞窟の切れ目に出る。続けて入ったのがグレート洞窟。その洞窟には竹組み梯子が大規模にかけられ、その上でピリピーノ達が、ツバメの巣を採取している。暗闇の中で、汗を流しながら作業する姿を見上げると、梯子の上からぼく達部外者を睨み下ろしている。その眼光は敵意を含み、おどろおどろしさを感じる。

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最後に、一番奥のペインテッド洞窟に入る。小振りな洞窟は、頭上の岩の割れ目からの陽の光りで、はんなりと明るい。しかし、楽しみにしていた壁画は頑丈な金網の奥にあり、よく見えない。ジョニーがライトをあて、目を凝らすと、赤紫色のU字形のような古代の帆船が、小振りに可愛らしく描かれている。この壁画は1000年以上前のもので、考古学的には貴重なものだそうだ。

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帰り道、ジョニーがグレート洞窟で、先ほどのピリピーノ達に現地語で声をかけると、意外や笑顔になって手を振っている。
「たくさん、取れたそうだ」
オレンジ色の夕日に映える二アのジャングルは、優しく透明である。(完)

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2008-03-15

Ko3 朝粥を食べに行こう

2年前の懐かしい韓国粥の話である。早春の朝9時に、ぼく達2人は、誰もいないソウル市内の宗廟の庭を、ゆったりと、散歩していた。

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足かけ1週間の韓国旅行中、毎朝のホテルの洋食ブッフェ、或いは和定食という、単調な繰り返しに飽きていたのだ。そんな中、宗廟の清々しい空気の中を歩きながら、急に閃いた。そうだ!朝粥を食べに行こう!

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もちろん一流ホテルであれば、ブッフェ、韓食堂、和食堂でも、それなりの粥はある。しかし、納得のいく美味い朝粥にはめったにあたらない。いつも大いに不満である。そんな時は本場中国に行けば良いのかもしれない。香港でも広州でも、美味い朝粥が簡単に食べられる。でも、それは米食民族の定説。別の話。

そんな訳で、ぼく達は、一度ホテルに戻り、玄関からタクシーに乗り込んだ。急に本物の朝粥が食べたくなったからである。

タクシーは明洞を通り過ぎ、表通りから一本奥まった裏通りに入る。うら寂しい通りに面し、地味だが可愛らしい看板を掲げた韓国粥の店「S」の前に到着する。

韓国粥は日本粥、中国粥とも微妙に違う。ぼくの身勝手な感性で表現すると、日本粥はトロトロ。中国粥はサラサラ。韓国粥はサクサク、という感じだ。当然、各国の米、水質や炊き方が違うからである。

店の壁に韓国粥の品書きが貼ってある。牛モツ、牛肉、豚肉、鶏肉、貝柱、干し鱈、山菜、ミックス等々、数多くの種類がある。ぼくは牛モツ山菜ミックスを注文した。

しばらくして、出された粥を少しずつ口に含む。熱いっ。ハフ、ハフ、ハフと少しずつ喉に吸い込む。粥の微かな甘さがフワッと口いっぱいに広がり、肉汁の旨味の中から、ほのかに松茸の香りが漂う。

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「わァー、あちちーッ」「でも、おいしいッ!」
満面の笑顔でカミさんが、帆立の貝柱入りの海鮮粥を、じっくり味わいながら答える。
「来て良かったね」「ああ、そうだね、来て良かったね」
こうして食いしん坊夫婦は、朝早くからソウルの美食探訪を続けるのである。(続)

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2008-03-13

Ma7 グヌン・ムル国立公園

東京ぶんぶん  ’99,12,04   ボルネオ島中央に位置するサラワク州に属するグヌン・ムル渓谷は、西暦2000年、マレーシアとして、サバ州のキナバル山と並んで、初めてユネスコ世界自然遺産に登録された国立公園である。

11月の下旬、ぼくはかの有名なムル洞窟の探検がしたくなり、成田からボルネオ島サラワク州のミリに飛んだ。2泊3日の予定で、現地発ネイチャーツアーに参加し、1日目はディア、ラングの2洞窟とコウモリのドラゴンフライ、2日目はウインド、クリアウォーターの2洞窟を探検するスケジュールである。

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11月29日の朝、ぼくは一人でミリ空港を出発、旧型ツインオッターで1時間余り熱帯雨林の上空を飛び、ムル空港に到着する。現地の日本人ガイド、サダオの出迎えを受け、車で5分の日系のロイヤルムルリゾートに案内される。

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グヌン・ムル国立公園内には宿泊施設が2カ所ある。公園本部の簡易ロッジと日系ホテルのロイヤルムルリゾート。ぼくはリゾート内の一軒のシャレー、予約していたバス・トイレ付きの清楚なダブルベッドの部屋に落ち着いた。

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昼食としばらくの休憩後、午後3時にサダオとぼくの2人で、足慣らしを兼ねたトレッキングに出る。ホテルの裏手から続く木道や、途中のトレイルは整備され歩きやすい。原生林に木漏れ日がキラキラと輝き、空気は透明である。

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サダオの案内で約1時間歩き続け、ようやく洞窟の入り口に到着。ヘッドランプを付け、最初のラングケィヴに入る。山吹色の鍾乳石を見て回り、続けて、世界最大の空間を持つディアケィヴに入る。中から入り口を振り返った時に見えるリンカーンの横顔が印象的である。

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11月下旬ともなると人はまばら、探検マニアしか訪れない。夕闇がせまる洞窟の外に出る。薄明かりの中、木道のベンチでしばらく休憩していると、突然、洞窟の入り口から黒いまだらの太い帯が、薄紫色の天空を舞い上がっていく。現地でドラゴンフライと呼ばれるコウモリ軍団の帯状の塊が、龍の形となって大空を飛翔して行くのである。

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翌朝、小型ボートで約30分、メリナウ川を下り、ウインドケィヴとクリアウォーターケィヴを探検する。

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ふたつの洞窟は連結しており、中には細い川が流れている。ウインドケィヴは、ボーッと風の音が響く洞窟で、王様の部屋という広い空間や、ユニークな鍾乳石が有名である。クリアウォーターケィヴは、マリア像のような影を持つ石筍があり、洞窟の中に清流が流れている。

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グヌン・ムル渓谷は洞窟探検とジャングルトレッキングの宝庫。日系リゾートホテルを起点に、自然派フリークは何度も再訪したい場所である。(完)

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2008-03-13

Ko2 モツ鍋を食べたい

モツ鍋の季節である。枯葉舞う夕暮れ時に、ぼく達夫婦はソウルの明洞を北に向かって歩いていた。街角には、煌びやかなブティックが建ち並び、東京の原宿に似た明るい街並みが続いている。曇り空からチラチラと細雪が舞い、ビルの谷間からクリスマスソングが流れている。

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「あーッ、モツ鍋を食べたいな!」
2日前の夕飯に、ぼくが言い出したのが事の始まりである。
「何処で?大久保?蒲田?」
「いっそ本場に行こうぜ」

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今朝、僕たちはレインボーカラーのエアバスで、成田から仁川まで飛んで来た。今年から韓国の首都ソウルの表玄関はソウル市内のキンポ(金浦)空港から、インチョン(仁川)国際空港になり、金浦は韓国国内線専用空港になったのだ。

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日本では、成田の新東京国際空港と羽田の東京国際空港が有名。新しい空港は、どこの国でもピカピカである。

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鍾路区仁寺洞の韓食堂「I」のモツ鍋は、マニアには有名。雪の中をようやく店に到着。心底冷え切っていたので体の内から早く暖まりたい。店の中に入り、定評のあるコップチャンチョンゴルを2人前注文する。
「熱々のモツチゲを山盛りで、よろしく」
係のアジュマが、ネーネーと笑顔で頷く。

モツ鍋は、予め3時間程煮込んだ牛モツに秘伝の味付けをし、冷蔵庫で一晩寝かせる。牛肉エキスたっぷりの大鍋のスープの中に豆腐、油揚げを加え、その上に、春菊、舞茸、もやし等の野菜を山盛りにのせて煮込む。

熱々の牛モツ。そのコリコリとした歯ごたえ。うま味と深いコクが、舌を捉えて離さない。油揚げが、ジュワッと舌の上にダシを拡げ、その合間の春菊のシャキシャキ感が嬉しい。モツと野菜とだし汁の三位一体。素朴ながらも奥が深い。究極の味のハーモニーだ。

「おいしいね、来て良かったね」
スープを味わいながら、カミさんが笑顔で言う。ハングル語が飛び交う騒々しい店の中で、ぼく達はドップリと美味いスープに漬かり込んでいた。韓国はグルメ天国。食い倒れ夫婦のソウル通いは、この先まだまだ続きそうである。(続) 

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2008-03-11

Ko1 焼き肉が恋しい

木枯らしの季節である。11月の下旬、寒さが身に凍みる頃になると、暖かい部屋で食べる焼き肉が恋しくなる。
「次の週末、焼き肉を食べに行こうか」 カミさんを誘ってみる。
「どこでご馳走してくれるの?」「もち、本場でさ」

2国間の規制緩和により、日本から韓国までの航空割引運賃が安くなり、プログラムチャーター便で、羽田空港から気軽に行けるようになったからである。海外に、焼き肉を食べに行くのは、ちょっと贅沢かな。世間には大きな声では言えないけどね。まあ、買い物のついでにと言う事で、ぼく達は週末にソウルに飛んで来たのだ。

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ホテルに到着後、ぼく達はすぐに着替え、明洞を北西に向かって歩き始めた。夕暮れの街角には屋台が建ち並び、東京の浅草に似た下町風情が続いている。曇り空からチラチラと細雪が降り、ビルの谷間からクリスマスソングが流れてくる。交差点には車が渋滞し、横断歩道を若い女性達が、わんさかわんさと元気良く歩いて行く。

ぼく達の目指す先は、馴染みの鍾路区鍾路6街の焼き肉レストラン「U」。その店の牛の骨付きカルビはマニアには有名である。雪の中をブラブラと歩き、ようやく店についた。体の底から冷え切っていたので、中から早く暖まりたい。店の中に入り、まずは定評のある味付き牛カルビ2人前を注文する。

日本人観光客のソウル到着初日の夕食は、殆どが甘辛味の牛カルビが多い。ぼく達も平均的日本人の仲間入りと言うわけだ。牛カルビといえば、お決まり三点セット。まずはサンチュ、玉ネギ、人参の生野菜。次に、キムチ、コチュジャン、生ニンニクの薬味。最後に甘辛タレの牛カルビが登場する。その味付け肉の香ばしさとコクのある食感は、何度食べても飽きがこない。ほかほかの焼き上がりを2人で取り合い、あっと言う間に平らげる。

「さあ、これからが本番!」
口直しのオーダーはセンカルビ。生の骨付きの新鮮な牛あばら肉である。見た目の鮮度で肉質が分かり、牛肉本来の旨みが味わえる。好みの焼き加減で、塩胡麻ダレをチョッと付け頬張る。甘みがジワッと口一杯に広がる。ウゥーム、流石だね。

「よし、次いこう」
次はコッドンシム。別名、花ロース。赤い花を連想させる特上の牛ロース肉である。肉全体が霜降りのこってり味で、ビーフスーテキ好きの一品。厚めにカットした肉の表面をジュッと焼き、レア気味に塩胡椒で食べる。噛めば噛む程、口の中に肉の甘みがジュワッと広がる。ほッ、これは絶品。

「締めは、アレしかないよね」
最後はもちろんアンシム。極上の牛ヒレ肉である。焼肉はくどいから苦手、刺身のほうが好き、という中高年の和食党にお奨めだ。ヒレ肉の表面をサッと焙り、店特選の醤油ダレで食べる。ムムッ、チョッと甘いかな。ぼくが、和醤油とワサビを注文。牛刺し風に試す。ウン!いける。サッパリした旨味とキレの良さに、夫婦そろって納得する。

翌日は、朝から明洞に買い物に出る。昼食は、庶民派のプルコギにする。プルコギは牛カルビと違い、手軽な焼き肉料理だ。韓国の一般家庭では、牛カルビは贅沢であまり食べない。日本でいえば、何かの記念日の松坂牛ステーキといったところか。

その点プルコギは日本のジンギスカン鍋と同様に安い。マトンを牛肉に替え、鍋の上で人参、ピーマン、もやし、タマネギ等と焼きあげる所謂、肉野菜炒めのイメージである。

その日の夕食は、目先を替えてデジ(豚)カルビ。
焼き肉といえば牛肉が常識であるが、韓国では豚肉も人気がある。済州島からの直送品がお奨め。肉質はやわらかく濃厚な味わいだ。ちょっと甘めの味付き豚カルビは、日本のポークチャップと一味違い、サンチュやゴマの葉で包むと意外とコリコリして美味い。

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ソウルには安くて美味い焼き肉レストランが多い。特にお奨めは、日本人観光客を見かけない地味な店。地元の焼き肉通で混みあう明るい店がよい。殆どの店が良心的である。何度も店に通ううちに友達もできるし、焼き肉専門店の女将、アジュマ達の笑顔で話す片言の日本語に、心の底まで暖かくなる。

美味いものと国際的な友情は大事にしたい。来年も家庭サービスを兼ね、是非カミさんとソウルを再訪したいものである。(続)

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2008-03-09

Ma6 スカウ・リヴァークルーズ

東京ぶんぶん’99,10,24  ボルネオ島サバ州の北東に位置する「スカウ村」は、サンダカンの南、キナバタンガン川下流にあり、ジャングル・リバークルーズの拠点になっている。

10月の中旬、ぼくは一人、サンダカン発のスカウ村ネイチャーツアーに参加した。メンバーは、英国、ドイツ、スイスなど、老若男女が10人余り。1泊2日の行程で、到着後の夕方にテングザルなどの野生動物を観察し、翌朝に、ホーンビル等のバードウォッチングを楽むスケジュールである。

10月12日の朝、サンダカンを出発。スカウ村まではワゴンと小型船で2時間余り。キナバタンガン川を遡りようやくスカウ村に到着する。川べりには簡素なドミトリー用のコテージと、三角屋根のシャレー群が建ち並んでいる。ぼくはシャレー棟の一角にある清潔なキングサイズベッドの部屋に落ち着いた。

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数あるネイチャーツアーの中でもスカウ村は、特に鳥と動物が多い場所で、1年を通じその姿が確認されている。来訪者のピークは5月から9月。10月の中旬になると、一般客は少なくなり、ネイチャーツアーマニアだけが訪れる。

昼食としばらくの休憩後、集合の鐘が鳴り、探検用の小型ボートに4,5人ずつ乗り込む。午後5時過ぎ、ジャングルに住むテングザルを観察する為に小型ボートに分乗し出発する。スカウ村の裏手の小川を静かにボートが進んでいく。ジャングルを抜ける風はすがすがしく、空気は透明である。大自然の中で秘やかに息づく野生動物を探索し、心ゆくまでワイルドライフを楽しむのだ。

夕闇がせまる中、レンジャーの先導でポイントに到着する。うす暗い木陰に、母猿が小猿を抱きながら食事をしている。突然、無言でレンジャーが木のてっぺんを指さす。ジャイアンと呼ばれるボス猿が天狗鼻を揺らし、こちらを見下ろしている。股間の象徴を隆々と立てたまま、樹上にどっかりと佇んでいた。

翌朝、夜明け前のバードウォッチングは神聖な儀式である。レンジャーの先導のもと、キナバタンガン川を遡り、上流の森の中でホーンビルを探す。小一時間、支流の小川に入り、幾つかのクリークを抜け、船をゆっくりと進める。

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「ギャーッ、ギャーッ」
突然、鳴き声と共に、つがいのホーンビルが樹幹から羽ばたき、一匹づつ、赤紫色の空を北から西へ飛んで行く。スカウ村の上流、キナバタンガン川の遙か東の空にオレンジ色の朝日が昇り始める。緑黒色のジャングルは、朝もやの中でまだしばらくは眠ったままである。(完)

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2008-03-09

Ma5 ゴマントンケイヴ

東京ぶんぶん’99,10,23  ボルネオ島の北東に位置する「ゴマントンケイヴ」は、スカウ村の西隣にあり、サバ州で最も大きな石灰岩洞窟のひとつとして有名である。

10月の中旬、ぼくは一人でゴマントン洞窟探検ツアーに参加した。メンバーは、英国、ドイツ、オランダなど、老若男女が10人余り。コタキナバル発スカウリバークルーズを加えての2泊3日のスケジュールである。

10月11日の朝、ぼく達はサンダカンのホテルを出発。目的地まではワゴン車で1時間余り、ようやくゴマントン洞窟の入り口に到着する。入り口にはツバメの巣を採取するピリピーノのあばら屋が建ち並んでいる。ぼく達はワゴン車から降り、母親と子供達の好奇な視線の中を、最初の洞窟に向かった。

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ゴマントン洞窟は3箇所あり、大きなのが2つ、ちいさいのが1つ。その奥で、高級中華材料のツバメの巣が採取されている。シーズンは4月~12月。採取する時間はその日の天候等、コンディションにもよるが、夜遅くまで作業する場合も多い。

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ガイドの案内で最初の洞窟に入る。中は昼間でも薄暗く、ヘッドランプを付け懐中電灯を照らしながら、ゆっくりと前に進む。残念ながら今日は採取日外なので無人である。洞窟の奥のあちこちには、約100mの高さに採取用の梯子が組み上げられている。ピリピーノの作業員がそのてっぺんに登り、ツバメが飛び去った後を見計らい、慎重にその巣をはがす。

巣は2種類あり、白色は45日毎に、黒色は4,9,12月、年3回のみ採取する。ドゥスン族のボスが作業員を統括、資源枯渇防止のために掟を作り、乱獲することを禁止している。計画的に中華系のシーノと呼ばれる仲買人と高値で取引をするのである。

小さな洞窟はさらに神秘的である。入り口から黄金色の甲虫がびっしりと地底から天井まで隙間無く蠢いている。その虫の名は、ゴールデンコックローチ。和名はゴキブリ。木道で区切られた壁の縁から、大小のゴキブリがうねうねと小さく動き回っている。ガイドの指示に従い、トレイルから外れゴキブリを踏みつぶさないように注意深く歩く。時々、ゴキブリが肩や背中に飛び移る。それをガイドが、無言で慎重に一匹ずつつまみ、トレイルの外に丁寧に戻す。

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帰り際に偶然、ワゴン車の先の原生林を、野生のオランウータンの母子が木々を伝って行くのに出会った。セピア色の夕日がゆっくりと沈む先に、深緑の森と群青色の空が、紫紺色の闇に混ざり合い優しく溶け込んでいく。(続)

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2008-03-09

Ma4 タートルアイランズ公園

東京ぶんぶん’99,10,22  ボルネオ島最北端に位置する「タートルアイランズ公園」は、マレーシア政府により海亀産卵の特別保護地域に指定されている。

10月中旬、ぼくは一人で海亀保護のボルネオエコツアーに参加した。メンバーは、英国、ドイツ、オランダなど、老若男女織り混ぜ10人余り。1泊2日の行程で、昼間は美しいビーチでシュノーケリングなどを楽しみ、夜は産卵のために上陸する親海亀と、明け方に子亀の放流を見学するスケジュールである。

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10月10日の朝、ぼく達はボルネオ島サバ州のサンダカンの港を出発。タートルアイランズまでは高速船で1時間余り。ようやくセリンガン島に到着する。公園内には宿泊施設として三角屋根のシャレー群が建ち並び、ぼくは予約していたバス・トイレ付きの簡素なダブルベッドの部屋に落ち着いた。

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タートルアイランズの中でもセリンガン島は、特に海亀の産卵が多い島で、1年を通じてその姿が確認される。シーズンは6月から10月。ピークの9月前後は、毎日のように10件以上の産卵が記録される。産卵時間はその日の海、天候のコンディションにもよるが、夜遅くになる場合が多い。この場所で大自然のドラマ、海亀の産卵を見学し、子亀の放流を体験するのだ。

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昼過ぎのスールー海はセルシアンブルーに光り輝き、遙か水平線まで透明な海原が続いている。産卵の準備が始まる夕方からは、上陸する海亀を保護する為に、ビーチに立ち入ることが禁止されている。それまでぼく達は、シュノーケルやフィンを付け、砂浜の先の浅瀬や、岩の間の磯辺を自由に遊びまわった。

真夜中の午前1時過ぎ、レンジャーの先導で月明かりに照らされた海岸線に出る。暗闇の中で、母亀が涙を流しながら産卵する姿に、自然の神秘を感じる。母亀が去った後、レンジャーが保護のために、砂に埋もれたピンポン玉のような卵を掘り出す。ハッチと呼ばれる円筒形の囲いの中で保育するのである。

翌朝、夜明け前の子亀の放流は神聖な儀式である。裏庭に網で区切られた円筒形のハッチの中から、約1ヶ月前に産卵した子亀がポコポコと小さな顔を出す。レンジャーの指導のもと、生まれたばかりの子亀をバケツに集め、海岸に運ぶ。ようやく東の空が乳白色に明るくなり、海からの微風が心地よい。

一匹ずつ丁寧に砂の上に子亀を置くと、子亀は本能のまま波打ち際をヨチヨチと海に向かい這って行く。スールー海の東の空にだいだい色の朝日が昇り、波打ち際の引き潮は、さらさらと優しく透明である。(続)

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2008-03-08

Ma3 キナバル公園

東京ぶんぶん’99,10,21  ボルネオ島サバ州の北端にあるキナバル公園に行くには、州都コタキナバル発の観光ツアーに参加し、ワゴン車で行くのが一番お勧めである。

10月の初旬、ぼくはコタキナバル発のキナバル公園ネイチャーツアーに参加した。メンバーは、英国、ドイツ、オランダなどの老若男女が10人余り。日帰りで、午前はキナバル公園本部の山岳植物園。午後は、キナバル山麓の原生林でキャノピーウォークやポーリン温泉を楽しむスケジュールである。

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10月9日朝8時にコタキナバルを出発。キナバル公園まではワゴン車で2時間余り。途中休憩をはさみ、ようやくキナバル公園本部に到着する。ロッジで、お茶を飲み一息入れた後、植物園の専属ガイドに案内され、山岳植物園を見学する。

園内は、うつぼかずら等の熱帯雨林の植生を身近に観察できる様に工夫され、1年を通じてネイチャーガイドウォークが実施されている。

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「これは、ポーリンと言う植物でここの特産品です」
若い女性ガイドが恥ずかしげに笹のような植物を指さし、小声で説明している。それが、竹の一種で、この地の語源であることを理解できたのは、英国人夫婦が、大きな声で繰り返し確認してくれたからである。

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昼食後、ツアーガイドを先頭に、樹海に入り原生林の中をしばらく歩く。やがてキャノピーウォークにたどり着き、螺旋階段で地上約40mの吊り橋に上がる。吊り橋の上は別世界である。

黄金色の樹冠が光り輝き、新緑の海原が遙か彼方まで続いている。人が一人ようやく通れるほど狭い約160mのキャノピーウォークを慎重に歩く。

地上に降りてから、3日の間しか咲いていないという伝説の花、ラフレシアを探索する。しかし、運に見放されたのだろうか、残念ながらラフレシアは見あたらず、ぼく達は少し落胆し、疲労感を覚えた。15時過ぎ、ようやくの思いでジャングルを抜け、ポーリン温泉に出る。

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温泉の施設は、有料と無料の2つの区域に別れ、管理事務所に併設されている。有料の方は、プライベート用の個室で数カ所に区切られ、外からは見えないので素裸で入ることができる。

一方、無料の大衆浴場は、コンクリートの打ちっ放しの四角い風呂と、青空の下に楕円のプールが2つ。家族連れがカラフルな水着で、楽しそうに湯につかったり、泳いだりしている。

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ぼく達は、プール横のシャワーで汚れた手足を洗い、迎えのワゴンに乗り込んだ。振り返ると、遙か後方のキナバル山がセピア色に光り輝いていた。 (続)      

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2008-03-08

Ma2 タマンヌガラ国立公園Ⅱ

東京ぶんぶん’96,5,16 深夜のラウンジでビールを飲みながら、コーディネーターの楠元さんが、ここだけの話ですが、とヒソヒソ話を始めた。彼は、青年海外協力隊の隊員で、シニアボランティア。マレーシアのクアラルンプールに3年も在住している。

「マレーシアのイスラム教の戒律では、酒は飲んではいけないし豚肉も食べてはいけないのですが。こちらの方は一夫多妻で、結構お盛んで、開放的です」
と小指を立てる。

「あれは、戦争未亡人の救済の為だって聞いたぜ」「ほんとかよー」「うそじゃない」アルコールを鯨飲しながら、わいわいがやがやと話があちこちに飛ぶ。「やはり、人と自然とはだなぁー」夜はジグザグと更けていく。

2日目の朝、ぼく達はクアラ・タハンが見えるブキ・テレセック展望台と洞窟探検に出かけた。展望台までの道のりは厳しく、自慢の健脚も頂上に立つ頃には半ば笑っている状態である。

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展望台の上は最高に気持ち良い。遙か彼方北の中空にタハン山が見える。その手前に、かすかに細く流れ落ちる滝も見えた。小休止の後、遠回りして左右の植物を観察しながらリゾートに戻る。

昼食後、リゾートからボートで10分ほど下流にある川沿いの小洞窟を探検だ。暗く狭い岩場を一歩また一歩と歩く、暑苦しく汗が噴き出る。何でこんなに苦しい思いをしてまで洞窟の中を歩くのだ? ふと、疑問が湧く。

帰りのリゾートまでは、ラピッドシューティングしながら川を遡る。ボートが徐々にスピードをあげ、水面を飛び跳ね、バンバン音をたて爽快だ。さあ、今夜は何して遊ぼうか!

ファムツアーの3日目、ぼく達は全長500mの空中遊歩道のキャノピー・ウォークに挑戦する事になっていた。歩き始めて、30分。どうも腹具合が悪い。昨日の夜もまた遅くまで飲んでの二日酔い。トレイルから遠く離れ、草むらで用を足す。ぼくのしゃがんでいるすぐ横を、のそのそと大トカゲが歩いて行く。

「あーっ、びっくりした。野糞をしていたら、後からドラゴンが来てさー」「うそくさ」「ヒグマと遊んでたんだろ」「ここはボルネオ、北海道じゃないの」「あたぼーよ」「はんかくさいのー」「あほくさ」夜のバカ話の続きが始まった。

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ぶらん、ぶらんとキャノピーが揺れている。吐きそう。空中散歩か宇宙遊泳か、吊り橋の上を、ゆっくりゆっくりと歩く。ジャングルの楽しみ方もいろいろあるものだ。

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休憩後、ボートでオラン・アスリの村に移動し、吹き矢の練習をする。みんなバラバラになり、自由に輪投げや踊りなどを楽しんでいる。さあ、皆さん帰りますよ、集合、集合!ファムツアーはまだまだ終わらない。 (完)

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2008-03-08

Ma1 タマンヌガラ国立公園Ⅰ

東京ぶんぶん’96,5,16 5月中旬、ぼくはマレーシア政府と日本旅行業協会共催のマレーシア・ファムツアーに参加した。メンバーは、旅行業関係の航空、旅行、新聞記者等、老若男女織り混ぜ12名。 目的地は世界的に有名な、マレー半島中央に位置するマレーシアの原生林に囲まれたジャングル・リゾート「タマンヌガラ国立公園」。世界で最古、最大級の熱帯雨林に包まれたアジア屈指の大自然の宝庫である。

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5月11日の朝8時、ファムツアーの初日、ホテルのロビーに全員が集合。まずは、添乗員兼主催者の第一声。日本旅行業協会の長田さんが挨拶する。続いて紹介された女性ツァーガイドのマリアさん。ツァーコーディネーターの楠元さん。あとはファムツアー参加者12名の自己紹介が続き、最後にマレーシア政府観光局スポンサーの徳永さんの個性豊かな挨拶で終わる。さあ、タマンヌガラヘ向けて出発!

大型バスの中で、マリアさんが「タマンヌガラ国立公園」の説明を、流暢な英語で話すと、追っかけで、チョビヒゲの楠元さんがジョークを交えて通訳する。宮崎訛りを交えて、面白おかしく続ける。

「旅行シーズンとしては、4月から10月の乾季が比較的すごしやすいデス。周辺のジャングルには大じか、マレーゾウ、マレータイガー、サルなどの野生動物がおりマウス。サイチョウをはじめとする250種類の野鳥、300万種に及ぶ昆虫などが生息し、珍しい植物群も多いとか何とかいっとりマウス。数は適当ですが、統計がかなり古いからね」どっと、参加者全員の笑い声がバスの中を渦巻く。

「アクティビィティとしては、ジャングルトレッキング、動物ウオッチング、洞窟探検、ラフティング、釣り、全長500mの空中遊歩道のキャノピー・ウォークが楽しめマウス。さらに、先住民オラン・アスリの村への訪問、マレー半島最高峰グヌン・タハンへの登山等、盛りだくさんでありマウス。これは、本当でーす」

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クアラルンプールから大型バスで高速道路を4時間弱走り、クアラテンベリンに到着する。そこからは、細長いリバーボートに乗り換え、薄茶色に濁った川を遡る事さらに2時間半。ようやく、国立公園の中心のクアラ・タハン、タマンヌガラ・リゾートに辿り着く。それぞれのシャレーで一休みする。やれやれ。

夕食後早速、夜のナイトツアーに出かける。頭にヘッドランプを点け、手に懐中電灯を持ち、蛭よけのロングソックスを履き、気合いを入れて外に出る。真っ暗闇に、黒い影。ギョギョッ!

公園レンジャーを先頭に、樹木の説明を聞きながらそろりそろりと進む。1時間程歩いたが、期待した動物昆虫には会えずに引き返す。帰り際に夜空を見上げると、梢の先の澄んだ空気の中に、無数の星がキラキラと瞬いていた。(続)

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