2008-03-19

Ch1 春城 昆明

春爛漫。桜の花舞う季節になると美味い物が食べたくなる。
薫風に乗り、遠く多摩川堤の花見の宴からか、焼き鳥の香ばしい匂いが漂ってくる。腹が減った。ふと、一昨年に訪れた春城近郊で食べた焼餅を想い出した。

春城とは中国雲南省の省都昆明の別名である。亜熱帯にありながら、標高千八百メートルの高原にある為、年平均気温摂氏十五度の常春であり、花の都とも呼ばれている。

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焼餅に出会ったその場所は、春城の南東百キロメートル余り。車で約一時間半の距離にある石林公園。世界的に有名な奇峰群落である。

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緑の灌木の中に、黒褐色の岩盤が幾重にも突き出し、入り組んだ岩山と水面は水墨画の世界を彷彿とさせる。その石灰岩から成るカルスト台地は、二億八千万年前迄は、海底にあり、その後、地殻変動で隆起したのだ。

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瀟洒な石林賓館はその公園の入口にひっそりと建っている。昼食時のレストランの中は賑やかだ。中国人観光客があちこちの円卓で昼食を貪り食っている。テーブルの上には、現地名物料理の鵞鳥の丸焼きを中心に、焼きチーズ、ベークドポテト、など。

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私は連日連夜、豪勢な広東料理を食べ続けていたので、
「サッパリとした和風のものがいい」と我が儘を言った。暫くして出てきたのが、アッサリとした塩味の白身の川魚。つけ合わせの白菜が淡泊で美味い。隣の大皿には香ばしい焼餅の山。ガブリ。オイスターソースの香りに薄い塩味。懐かしいおふくろの味だ。「いやあ、日本人って我がままですから」と専属ガイドのワン(王)さんに言い訳し、大笑いする。

雲南料理には日本食文化のルーツを感じさせるものが多い。例えば、餅米から作る焼き餅、四角い灰色で粘っこい。過橋米線という黄色と橙色の入り交じった激辛味のスープ入り麺。大豆臭く少し酸っぱい発酵豆腐。黒い小粒の日本の物とはかなり違う納豆。川魚のなれ鮨まである。

中国雲南省を歩くと和食の原点を感じる。観るもの、聞くもの、食べるもの、少数民族の食生活の中に、日本食文化との意外な共通点に驚かされる。

旅は感動の連続、人生の醍醐味である。中国四千年の歴史の滔々とした流れと、山水画の静けさの漂う山里で、和食のルーツを見たような気がした。(完)

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