2008-03-16

Ko4 サムゲタンで暖ったまろ

厳寒の2月のソウル。小雪舞い散る真冬のイーテーオンを、カミさんと二人で歩く。頬を刺す冷気に背筋がピンと緊張する。カチンカチンに凍りついた歩道をぶらつきながら、こんな寒い中を、よくもまあ好きこのんでソウルに来るものだと思う。旅行商品開発と言う仕事柄仕方ないが、年末年始の繁忙期を終えての短い休暇である。

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「おなかすいたぁ、アレ食べたいね」
カミさんの言葉に、ぼくのテレパシーがフル回転。アレってなんだろう?胃袋がグゥッと反応する。ビビッと閃いたのは、ホックホクのウコッケイのサムゲタン。ウコッケイは烏骨鶏。サムゲタンは参鶏湯と書く。烏色の丸ごと骨付きの鶏を土鍋でグツグツ煮込んだスープ料理である。

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表通りからタクシーに乗り込み、南大門横を北上。景福宮横の脇道を走り抜け、賑やかな商店街を横にみて、その奥まった静かな小道を進むと、馴染みの「土俗村」に到着する。 昼時の店の中は、ソウルっ子で混雑していた。

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「アンニョンハセヨ!」
元気良く、昔染みの李店長に挨拶する。笑顔の中に、懐かしさがこみ上げてくる。暫く待つと、小振りの土鍋からほっかほかの湯気が立ち上り、参鶏湯が登場する。一人用の土鍋の中に、餅米、高麗人参入りの参鶏湯が、コクのある塩味スープの中に、丸ごと1羽隠れているという感じである。

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フーフー、ズルズルッと塩味スープをすする。高麗人参の微かな香り、濃厚なコク。手羽先肉を前歯にひっかけ、肉を削ぎ取る。柔らかい食感。とろりとした喉越し。絶品。
「あァ、うまいッ、しあわせーッ」
笑顔がこぼれ、ウフフッと口元が思わず緩む。

暖かなオンドル部屋の中でカミさんと2人。美味い料理とビールを味わい、至福の時が流れる。ぼくらは世界一の幸せ者だね。美味い味に国境はない。グルメタウンソウルへの旅は、こうして毎年続くのである。(続)

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2008-03-15

Ko3 朝粥を食べに行こう

2年前の懐かしい韓国粥の話である。早春の朝9時に、ぼく達2人は、誰もいないソウル市内の宗廟の庭を、ゆったりと、散歩していた。

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足かけ1週間の韓国旅行中、毎朝のホテルの洋食ブッフェ、或いは和定食という、単調な繰り返しに飽きていたのだ。そんな中、宗廟の清々しい空気の中を歩きながら、急に閃いた。そうだ!朝粥を食べに行こう!

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もちろん一流ホテルであれば、ブッフェ、韓食堂、和食堂でも、それなりの粥はある。しかし、納得のいく美味い朝粥にはめったにあたらない。いつも大いに不満である。そんな時は本場中国に行けば良いのかもしれない。香港でも広州でも、美味い朝粥が簡単に食べられる。でも、それは米食民族の定説。別の話。

そんな訳で、ぼく達は、一度ホテルに戻り、玄関からタクシーに乗り込んだ。急に本物の朝粥が食べたくなったからである。

タクシーは明洞を通り過ぎ、表通りから一本奥まった裏通りに入る。うら寂しい通りに面し、地味だが可愛らしい看板を掲げた韓国粥の店「S」の前に到着する。

韓国粥は日本粥、中国粥とも微妙に違う。ぼくの身勝手な感性で表現すると、日本粥はトロトロ。中国粥はサラサラ。韓国粥はサクサク、という感じだ。当然、各国の米、水質や炊き方が違うからである。

店の壁に韓国粥の品書きが貼ってある。牛モツ、牛肉、豚肉、鶏肉、貝柱、干し鱈、山菜、ミックス等々、数多くの種類がある。ぼくは牛モツ山菜ミックスを注文した。

しばらくして、出された粥を少しずつ口に含む。熱いっ。ハフ、ハフ、ハフと少しずつ喉に吸い込む。粥の微かな甘さがフワッと口いっぱいに広がり、肉汁の旨味の中から、ほのかに松茸の香りが漂う。

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「わァー、あちちーッ」「でも、おいしいッ!」
満面の笑顔でカミさんが、帆立の貝柱入りの海鮮粥を、じっくり味わいながら答える。
「来て良かったね」「ああ、そうだね、来て良かったね」
こうして食いしん坊夫婦は、朝早くからソウルの美食探訪を続けるのである。(続)

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2008-03-13

Ko2 モツ鍋を食べたい

モツ鍋の季節である。枯葉舞う夕暮れ時に、ぼく達夫婦はソウルの明洞を北に向かって歩いていた。街角には、煌びやかなブティックが建ち並び、東京の原宿に似た明るい街並みが続いている。曇り空からチラチラと細雪が舞い、ビルの谷間からクリスマスソングが流れている。

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「あーッ、モツ鍋を食べたいな!」
2日前の夕飯に、ぼくが言い出したのが事の始まりである。
「何処で?大久保?蒲田?」
「いっそ本場に行こうぜ」

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今朝、僕たちはレインボーカラーのエアバスで、成田から仁川まで飛んで来た。今年から韓国の首都ソウルの表玄関はソウル市内のキンポ(金浦)空港から、インチョン(仁川)国際空港になり、金浦は韓国国内線専用空港になったのだ。

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日本では、成田の新東京国際空港と羽田の東京国際空港が有名。新しい空港は、どこの国でもピカピカである。

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鍾路区仁寺洞の韓食堂「I」のモツ鍋は、マニアには有名。雪の中をようやく店に到着。心底冷え切っていたので体の内から早く暖まりたい。店の中に入り、定評のあるコップチャンチョンゴルを2人前注文する。
「熱々のモツチゲを山盛りで、よろしく」
係のアジュマが、ネーネーと笑顔で頷く。

モツ鍋は、予め3時間程煮込んだ牛モツに秘伝の味付けをし、冷蔵庫で一晩寝かせる。牛肉エキスたっぷりの大鍋のスープの中に豆腐、油揚げを加え、その上に、春菊、舞茸、もやし等の野菜を山盛りにのせて煮込む。

熱々の牛モツ。そのコリコリとした歯ごたえ。うま味と深いコクが、舌を捉えて離さない。油揚げが、ジュワッと舌の上にダシを拡げ、その合間の春菊のシャキシャキ感が嬉しい。モツと野菜とだし汁の三位一体。素朴ながらも奥が深い。究極の味のハーモニーだ。

「おいしいね、来て良かったね」
スープを味わいながら、カミさんが笑顔で言う。ハングル語が飛び交う騒々しい店の中で、ぼく達はドップリと美味いスープに漬かり込んでいた。韓国はグルメ天国。食い倒れ夫婦のソウル通いは、この先まだまだ続きそうである。(続) 

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2008-03-11

Ko1 焼き肉が恋しい

木枯らしの季節である。11月の下旬、寒さが身に凍みる頃になると、暖かい部屋で食べる焼き肉が恋しくなる。
「次の週末、焼き肉を食べに行こうか」 カミさんを誘ってみる。
「どこでご馳走してくれるの?」「もち、本場でさ」

2国間の規制緩和により、日本から韓国までの航空割引運賃が安くなり、プログラムチャーター便で、羽田空港から気軽に行けるようになったからである。海外に、焼き肉を食べに行くのは、ちょっと贅沢かな。世間には大きな声では言えないけどね。まあ、買い物のついでにと言う事で、ぼく達は週末にソウルに飛んで来たのだ。

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ホテルに到着後、ぼく達はすぐに着替え、明洞を北西に向かって歩き始めた。夕暮れの街角には屋台が建ち並び、東京の浅草に似た下町風情が続いている。曇り空からチラチラと細雪が降り、ビルの谷間からクリスマスソングが流れてくる。交差点には車が渋滞し、横断歩道を若い女性達が、わんさかわんさと元気良く歩いて行く。

ぼく達の目指す先は、馴染みの鍾路区鍾路6街の焼き肉レストラン「U」。その店の牛の骨付きカルビはマニアには有名である。雪の中をブラブラと歩き、ようやく店についた。体の底から冷え切っていたので、中から早く暖まりたい。店の中に入り、まずは定評のある味付き牛カルビ2人前を注文する。

日本人観光客のソウル到着初日の夕食は、殆どが甘辛味の牛カルビが多い。ぼく達も平均的日本人の仲間入りと言うわけだ。牛カルビといえば、お決まり三点セット。まずはサンチュ、玉ネギ、人参の生野菜。次に、キムチ、コチュジャン、生ニンニクの薬味。最後に甘辛タレの牛カルビが登場する。その味付け肉の香ばしさとコクのある食感は、何度食べても飽きがこない。ほかほかの焼き上がりを2人で取り合い、あっと言う間に平らげる。

「さあ、これからが本番!」
口直しのオーダーはセンカルビ。生の骨付きの新鮮な牛あばら肉である。見た目の鮮度で肉質が分かり、牛肉本来の旨みが味わえる。好みの焼き加減で、塩胡麻ダレをチョッと付け頬張る。甘みがジワッと口一杯に広がる。ウゥーム、流石だね。

「よし、次いこう」
次はコッドンシム。別名、花ロース。赤い花を連想させる特上の牛ロース肉である。肉全体が霜降りのこってり味で、ビーフスーテキ好きの一品。厚めにカットした肉の表面をジュッと焼き、レア気味に塩胡椒で食べる。噛めば噛む程、口の中に肉の甘みがジュワッと広がる。ほッ、これは絶品。

「締めは、アレしかないよね」
最後はもちろんアンシム。極上の牛ヒレ肉である。焼肉はくどいから苦手、刺身のほうが好き、という中高年の和食党にお奨めだ。ヒレ肉の表面をサッと焙り、店特選の醤油ダレで食べる。ムムッ、チョッと甘いかな。ぼくが、和醤油とワサビを注文。牛刺し風に試す。ウン!いける。サッパリした旨味とキレの良さに、夫婦そろって納得する。

翌日は、朝から明洞に買い物に出る。昼食は、庶民派のプルコギにする。プルコギは牛カルビと違い、手軽な焼き肉料理だ。韓国の一般家庭では、牛カルビは贅沢であまり食べない。日本でいえば、何かの記念日の松坂牛ステーキといったところか。

その点プルコギは日本のジンギスカン鍋と同様に安い。マトンを牛肉に替え、鍋の上で人参、ピーマン、もやし、タマネギ等と焼きあげる所謂、肉野菜炒めのイメージである。

その日の夕食は、目先を替えてデジ(豚)カルビ。
焼き肉といえば牛肉が常識であるが、韓国では豚肉も人気がある。済州島からの直送品がお奨め。肉質はやわらかく濃厚な味わいだ。ちょっと甘めの味付き豚カルビは、日本のポークチャップと一味違い、サンチュやゴマの葉で包むと意外とコリコリして美味い。

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ソウルには安くて美味い焼き肉レストランが多い。特にお奨めは、日本人観光客を見かけない地味な店。地元の焼き肉通で混みあう明るい店がよい。殆どの店が良心的である。何度も店に通ううちに友達もできるし、焼き肉専門店の女将、アジュマ達の笑顔で話す片言の日本語に、心の底まで暖かくなる。

美味いものと国際的な友情は大事にしたい。来年も家庭サービスを兼ね、是非カミさんとソウルを再訪したいものである。(続)

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