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夜中に魔女が来て、イタリアの休暇が明けた☆
エピファニア、通称「ベファーナ」の祭りである
イタリアの子供たちにとって
「バッボ・ナターレ」というサンタクロースは
むしろ近代的な存在で
そもそも「ベファーナ」が贈り物を持ってくるのだった
醜いけれど、心優しき老婆の魔女である
箒(ほうき)にまたがり
良い子たちにはキャンディーを
悪い子たちには真っ黒けの炭(すみ)をもたらす
子供たちはベファーナを待って
暖炉に靴下を下げておく・・・
ちょっと空想してみるだけで
ドキドキする存在だ☆
上の写真は、友人たちが主催した
あるイベントのポスターの部分を拝借した
キャッチコピーは「ベファーナがやってくる」
1月6日のベファーナを最後に明けた休暇は
ナターレ(クリスマス)直前に始まっている
今シーズンは曜日の関係で
12月20日に始まったところが多い
今では商業的な意味合いが強くなったが
伝統的カトリックの国イタリアで
「キリストの誕生を祝う祭り=ナターレ」は
文化形成において重要な役割りを担ってきた
日本でも師走は忙しい季節だが
イタリアもナターレまでは大忙しだ
ナターレはひとつの区切りであり原動力である
「ナターレに向けて何かをする」ことは多い
その忙しい時期に一本の珍しい電話があった
北部エミリャ・ロマーニャ州の
イタリアを代表する美しい中規模の都市
パルマからである →昨年パルマに行ったのはHさん!
品の溢れるイタリア語で話す
老年の紳士の声は、誰かすぐにわかった
!!!
以前、この人の文章を翻訳したことがあった
一年半以上も前のことだ
その仕事がいよいよ印刷にこぎつけて
東京からイタリアに居る
私たちの手元へ送られてきた
素晴らしい出来栄えだ!☆
建築・都市学の専門家向けの研究書である
↑ 文部科学省学術研究高度化推進事業「学術フロンティア」と
法政大学大学院が共同で設立した任期付きの研究所
「エコ地域デザイン研究所」から2008年7月に刊行された報告書
私の翻訳したのは齢(よわい)70を超えた
イタリア人建築家の大論考である
新築作品の制作やレスタウロ(修復)も行う建築家だが
そのベースとして、ものすごい理論家である
歴史家であり、評論家であり
都市計画にも携わる
理論家だけれどもやはり作家(作品をつくる人)らしく
その思想と経験にはアーティスティックな感じが漂う
つまるところ
アルキテット(建築家)のあらゆる多元的要素を
すべて備えているような人である☆
そして、パルマ大学の名教授である
私は、この電話の相手に
実際には会ったことがまだ一度も無い
けれども、建築界50年間を振り返る
半自伝的な文章を翻訳したからに
この人をものすごく身近に感じている
書いたものからは、その人の見た目よりも
深い内面を知ることができるものだ
人は一生のうちに
非常にたくさんの読み物に出会う
けれども「魂をゆさぶられる」
そういうものは、滅多に無いだろう
この人の文章は
まさに、そういうものであった!☆
だから、こちらとしても
手を抜くわけにはいかなかった
さて、この文章に登場した人物を
ざっと挙げてみよう
カルロ・スカルパ
ジオ・ポンティ(デザイナー)
フランク・ロイド・ライト(アメリカの建築家)
レオナルド・ヴェネーヴォロ
ヴィットリオ・グレゴッティ(デザイナー)
ピラネージ(18世紀、ローマの景観を描いた画家)
アルド・ロッシ
ジュゼッペ・サモナ
マリオ・ボッタ
レンツォ・ピアノ
イタロ・カルヴィーノ(文学者)
グイド・マリオノッティ(社会学者)
ロラン・バルト(フランスの思想家)
などなど、である
建築以外の分野で活躍した人物、外国人は
カッコ内に記してみた
建築の枠をかなり超越した話であることが
人目でわかるだろう
この豪華なメンバーと
自分の人生とを絡めて話せるんだから
何ともスゴイではないか!☆
しかも、ほとんどの人物と実際に交流がある
訳し手がなかなか見つからなかったようで
巡り巡って私のところに来た仕事だった
ひきうけたはいいが
これほど手ごわい文章は、なかなか無いものだ
さらに強烈だったのは
「日本人向けに書かれていない」ということだった・・★
「ラテン語やギリシャ語=彼らにとっての古典」
の素養を持っているのがイタリアの教養人であるが
まさに、そういう人向けに書かれていた
だから、私も図書館に行って
分厚い古典言語の辞書を開いて
その語源にまでさかのぼる羽目になった!(笑)
信頼できる知人に力になってもらって
何度も議論しながら確認し
日本の読者たちのために「訳者注」までつけた
それでもまだ訳しきれないところが残り
インテリのイタリア人にだってわからない
つまり、書いた本人にしかわからない箇所があり
そこは何を意図しているのか
著者に直接メールで問い合わせることになった
じっくり取り組んでいることが理解されたようで
お互いのやりとりはとてもスムーズに運んだ
翻訳のエキスパートが教えてくれたが
「翻訳という仕事には人生のすべてが出る」のだそうだ
その人のクオリティが
仕事クオリティだということである
どんな仕事も極めれば
同じところに辿り着くようだ!☆
終えてみて面白いと思ったことがある
私にこの仕事が巡ってきた第一の理由は
この論考を十分に理解する人が
見つからなかったからみたいだけれど(笑)
なぜかというと
建築の領域もすごくはみ出しているけれど
建築の中で扱っている領域もものすごく幅広いからだ!
日本の建築界で
「歴史」と「デザイン」の両方を掘り下げて
そのセンスを持ち合せている人というのはあまりいない
教育体制が、細分化されてしまっているのだ・・★
その意味でも、政府と大学院の共同プロジェクトである
通称「エコ研」の活動は意義深いと思う
それで、面白いと思ったのは・・・
翻訳のプロたちから得た異口同音の評価が
ごくごくシンプルだったからだ!(笑)
「日本語が、とてもしっかりしている」
ということである
翻訳業界の視点から見れば、そういうことになる
つまり、外国語から日本語への翻訳という仕事では
たとえ内容がどんなに難解だろうがやっかいだろうが
理解するということはあくまでも大前提で
そこで問われるのは
とにもかくにも、まず「日本語力」なのである!
本当にいい経験をさせてもらった☆
いよいよ休暇明けに
手ごわいイタリア語の論考を書いたパルマの紳士に
初めて会うことになりそうだ
ハートフルで温厚な電話の声を聞いて
ますます、その気持ちが高まっている
そして何より
この縁をくれた人物に心から感謝したい☆
by Akiko Sugesawa
↑ ローマのとある教会に飾ってあった「プレゼーピオ」
ハネムーンのHさんご夫妻と一緒に見たもの
イタリアでナターレ(クリスマス)の飾りといえば、これである!
キリストの誕生場面を再現したもので、一般家庭でも飾られ
通常、1月6日のベファーナの祭日まで
* * *
Grazie mille 金澤の雫さん!ぜひ、またお越しください! →☆
Fさん、2月のイタリア旅行、楽しみですね♪
興味深いコメントまでいただき、ありがとうございます! →☆
そして皆さんへ、幸多き一年を!
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
☆ Felice 2009 ☆ 謹賀新年
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
素晴らしい旅人たちとの出会いを願って・・・
>>他のイタリア関連記事を読む >>メールを送る >>著者プロフィール ぶんぶんさん
ずいぶん長いこと、お礼が言いそびれてしまって・・・、
コメントありがとうございます。
とても嬉しいコメントだったので、何て感謝の言葉を返そうか、
ちょっと頭を抱えてしまいました(苦笑)
やはり、いい仕事というのは、取り組んでいる最中も、その後も、
本当に楽しくて気分がいいものですね。
さらに、成果に対して、何らかの価値を見出してくれる人がいるならば、
こんなに嬉しいことはありません。
本当にありがたいことです。
これからも、どうぞ宜しくお願いいたします。
2009-01-10
Felice 2009 ☆イタリア冬のバカンス明け!
夜中に魔女が来て、イタリアの休暇が明けた☆
エピファニア、通称「ベファーナ」の祭りである
イタリアの子供たちにとって
「バッボ・ナターレ」というサンタクロースは
むしろ近代的な存在で
そもそも「ベファーナ」が贈り物を持ってくるのだった
醜いけれど、心優しき老婆の魔女である
箒(ほうき)にまたがり
良い子たちにはキャンディーを
悪い子たちには真っ黒けの炭(すみ)をもたらす
子供たちはベファーナを待って
暖炉に靴下を下げておく・・・
ちょっと空想してみるだけで
ドキドキする存在だ☆
上の写真は、友人たちが主催した
あるイベントのポスターの部分を拝借した
キャッチコピーは「ベファーナがやってくる」
1月6日のベファーナを最後に明けた休暇は
ナターレ(クリスマス)直前に始まっている
今シーズンは曜日の関係で
12月20日に始まったところが多い
今では商業的な意味合いが強くなったが
伝統的カトリックの国イタリアで
「キリストの誕生を祝う祭り=ナターレ」は
文化形成において重要な役割りを担ってきた
日本でも師走は忙しい季節だが
イタリアもナターレまでは大忙しだ
ナターレはひとつの区切りであり原動力である
「ナターレに向けて何かをする」ことは多い
その忙しい時期に一本の珍しい電話があった
北部エミリャ・ロマーニャ州の
イタリアを代表する美しい中規模の都市
パルマからである →昨年パルマに行ったのはHさん!
品の溢れるイタリア語で話す
老年の紳士の声は、誰かすぐにわかった
!!!
以前、この人の文章を翻訳したことがあった
一年半以上も前のことだ
その仕事がいよいよ印刷にこぎつけて
東京からイタリアに居る
私たちの手元へ送られてきた
素晴らしい出来栄えだ!☆
建築・都市学の専門家向けの研究書である
↑ 文部科学省学術研究高度化推進事業「学術フロンティア」と
法政大学大学院が共同で設立した任期付きの研究所
「エコ地域デザイン研究所」から2008年7月に刊行された報告書
私の翻訳したのは齢(よわい)70を超えた
イタリア人建築家の大論考である
新築作品の制作やレスタウロ(修復)も行う建築家だが
そのベースとして、ものすごい理論家である
歴史家であり、評論家であり
都市計画にも携わる
理論家だけれどもやはり作家(作品をつくる人)らしく
その思想と経験にはアーティスティックな感じが漂う
つまるところ
アルキテット(建築家)のあらゆる多元的要素を
すべて備えているような人である☆
そして、パルマ大学の名教授である
私は、この電話の相手に
実際には会ったことがまだ一度も無い
けれども、建築界50年間を振り返る
半自伝的な文章を翻訳したからに
この人をものすごく身近に感じている
書いたものからは、その人の見た目よりも
深い内面を知ることができるものだ
人は一生のうちに
非常にたくさんの読み物に出会う
けれども「魂をゆさぶられる」
そういうものは、滅多に無いだろう
この人の文章は
まさに、そういうものであった!☆
だから、こちらとしても
手を抜くわけにはいかなかった
さて、この文章に登場した人物を
ざっと挙げてみよう
カルロ・スカルパ
ジオ・ポンティ(デザイナー)
フランク・ロイド・ライト(アメリカの建築家)
レオナルド・ヴェネーヴォロ
ヴィットリオ・グレゴッティ(デザイナー)
ピラネージ(18世紀、ローマの景観を描いた画家)
アルド・ロッシ
ジュゼッペ・サモナ
マリオ・ボッタ
レンツォ・ピアノ
イタロ・カルヴィーノ(文学者)
グイド・マリオノッティ(社会学者)
ロラン・バルト(フランスの思想家)
などなど、である
建築以外の分野で活躍した人物、外国人は
カッコ内に記してみた
建築の枠をかなり超越した話であることが
人目でわかるだろう
この豪華なメンバーと
自分の人生とを絡めて話せるんだから
何ともスゴイではないか!☆
しかも、ほとんどの人物と実際に交流がある
訳し手がなかなか見つからなかったようで
巡り巡って私のところに来た仕事だった
ひきうけたはいいが
これほど手ごわい文章は、なかなか無いものだ
さらに強烈だったのは
「日本人向けに書かれていない」ということだった・・★
「ラテン語やギリシャ語=彼らにとっての古典」
の素養を持っているのがイタリアの教養人であるが
まさに、そういう人向けに書かれていた
だから、私も図書館に行って
分厚い古典言語の辞書を開いて
その語源にまでさかのぼる羽目になった!(笑)
信頼できる知人に力になってもらって
何度も議論しながら確認し
日本の読者たちのために「訳者注」までつけた
それでもまだ訳しきれないところが残り
インテリのイタリア人にだってわからない
つまり、書いた本人にしかわからない箇所があり
そこは何を意図しているのか
著者に直接メールで問い合わせることになった
じっくり取り組んでいることが理解されたようで
お互いのやりとりはとてもスムーズに運んだ
翻訳のエキスパートが教えてくれたが
「翻訳という仕事には人生のすべてが出る」のだそうだ
その人のクオリティが
仕事クオリティだということである
どんな仕事も極めれば
同じところに辿り着くようだ!☆
終えてみて面白いと思ったことがある
私にこの仕事が巡ってきた第一の理由は
この論考を十分に理解する人が
見つからなかったからみたいだけれど(笑)
なぜかというと
建築の領域もすごくはみ出しているけれど
建築の中で扱っている領域もものすごく幅広いからだ!
日本の建築界で
「歴史」と「デザイン」の両方を掘り下げて
そのセンスを持ち合せている人というのはあまりいない
教育体制が、細分化されてしまっているのだ・・★
その意味でも、政府と大学院の共同プロジェクトである
通称「エコ研」の活動は意義深いと思う
それで、面白いと思ったのは・・・
翻訳のプロたちから得た異口同音の評価が
ごくごくシンプルだったからだ!(笑)
「日本語が、とてもしっかりしている」
ということである
翻訳業界の視点から見れば、そういうことになる
つまり、外国語から日本語への翻訳という仕事では
たとえ内容がどんなに難解だろうがやっかいだろうが
理解するということはあくまでも大前提で
そこで問われるのは
とにもかくにも、まず「日本語力」なのである!
本当にいい経験をさせてもらった☆
いよいよ休暇明けに
手ごわいイタリア語の論考を書いたパルマの紳士に
初めて会うことになりそうだ
ハートフルで温厚な電話の声を聞いて
ますます、その気持ちが高まっている
そして何より
この縁をくれた人物に心から感謝したい☆
by Akiko Sugesawa
↑ ローマのとある教会に飾ってあった「プレゼーピオ」
ハネムーンのHさんご夫妻と一緒に見たもの
イタリアでナターレ(クリスマス)の飾りといえば、これである!
キリストの誕生場面を再現したもので、一般家庭でも飾られ
通常、1月6日のベファーナの祭日まで
* * *
Grazie mille 金澤の雫さん!ぜひ、またお越しください! →☆
Fさん、2月のイタリア旅行、楽しみですね♪
興味深いコメントまでいただき、ありがとうございます! →☆
そして皆さんへ、幸多き一年を!
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
☆ Felice 2009 ☆ 謹賀新年
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
素晴らしい旅人たちとの出会いを願って・・・
>>他のイタリア関連記事を読む >>メールを送る >>著者プロフィール ぶんぶんさん
ずいぶん長いこと、お礼が言いそびれてしまって・・・、
コメントありがとうございます。
とても嬉しいコメントだったので、何て感謝の言葉を返そうか、
ちょっと頭を抱えてしまいました(苦笑)
やはり、いい仕事というのは、取り組んでいる最中も、その後も、
本当に楽しくて気分がいいものですね。
さらに、成果に対して、何らかの価値を見出してくれる人がいるならば、
こんなに嬉しいことはありません。
本当にありがたいことです。
これからも、どうぞ宜しくお願いいたします。
イタリア
15:07
sugesawa
Comments
小宮 俊一 さんのコメント:
2009-01-10
18:34
菅澤 彰子 さんのコメント:
ぶんぶんさん
ずいぶん長いこと、お礼が言いそびれてしまって・・・、
コメントありがとうございます。
とても嬉しいコメントだったので、何て感謝の言葉を返そうか、
ちょっと頭を抱えてしまいました(苦笑)
やはり、いい仕事というのは、取り組んでいる最中も、その後も、
本当に楽しくて気分がいいものですね。
さらに、成果に対して、何らかの価値を見出してくれる人がいるならば、
こんなに嬉しいことはありません。
本当にありがたいことです。
これからも、どうぞ宜しくお願いいたします。
ずいぶん長いこと、お礼が言いそびれてしまって・・・、
コメントありがとうございます。
とても嬉しいコメントだったので、何て感謝の言葉を返そうか、
ちょっと頭を抱えてしまいました(苦笑)
やはり、いい仕事というのは、取り組んでいる最中も、その後も、
本当に楽しくて気分がいいものですね。
さらに、成果に対して、何らかの価値を見出してくれる人がいるならば、
こんなに嬉しいことはありません。
本当にありがたいことです。
これからも、どうぞ宜しくお願いいたします。
2009-03-12
03:26
東京ぶんぶんです。
なんと、菅澤さんは素晴らしい仕事を成し遂げたのでしょうか!
翻訳の完成おめでとうございます。そして、お疲れさま、貴女の努力と力量には感服しました。賞賛に値します。
私も、若い頃、都市のエコロジーに興味を持ち、環境衛生学の方向に行きかけました。
その後、もう一つの興味であった航空会社に就職し、真逆に空間を汚染する手助け?で人生の半分が過ぎてしまいました。
これからは、その罪滅ぼしに、自然を愛し、旅行を愛し、社会とお客様にエコツアーの推進で恩返しをしたいと思う、今日この頃です。
私も、機会があれば、菅澤さん訳の「歴史とエコロジーからみた都市と建築」を精読してみたいと思います。