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2004-12-01

ソ連で奪い取った入国スタンプ by tetsushi

ロシアが「ソビエト連邦」と呼ばれていた頃、私はモスクワを訪れた。
この時代のソ連は、ペレストロイカが進んではいたものの、まだまだアメリカと
世界を二分するほどの東側社会主義国家であった。

長い入国審査が終わり、ビザに入国スタンプが押されたその瞬間、私はパッと
係員からビザを取り上げ、インクが乾ききる前に、直ぐ様パスポートへ押し付けて
ソ連入国の証を残した。
当時、ソ連の国策で、万一旅行者に何かあった場合に、知らないふりをする為、
西側外国人が入国した証拠が残らぬよう、パスポートには直接スタンプを押さず、
別冊になっているビザに押すのだ、と噂されていたからだ。

ロシア モスクワ
シェレメチボⅡ空港に待機するイリューシン62
※今、アエロフロート航空の国際線でこの機体は利用されていない。

その入国スタンプが押されるまで、しばし係員の青年と問答が続いた。
係員は、質問を終えると顔を近づけ「タバコは持っているか?」とささやいた。
私は持っていたのだが、ここで入国させてもらえないような事態に陥ったのなら
ともかく、見返り無しに上納するのもいやだったので、「ニェート」と首を横に振った。
係員は「くそっ!」というような顔をして私の審査を終えた。
入国審査で係員にタバコをねだられたのは、古今東西、この一度だけである。

ロシア モスクワ
空港とモスクワ市内を結ぶ幹線道路
※当時、ペレストロイカの影響で外国企業の看板が増えたらしい。
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