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2006-06-23

ベルリンの門 by tetsushi

門は、私が物心付いた頃から、度々ブラウン管に登場していた。
親が見ていたニュース番組から、意識せずとも自然と目に入って来た。

過去、事ある毎にベルリンの情勢を取材する記者の後ろにこの門はあった。
門前で取材する人の顔からは、一度として笑顔が見られたことは無かった。
そういう印象もあってか、小学生の頃は、壁の向こうから除くこの門に、
暗く不気味なイメージを抱いていた。

ある朝、この門の前の壁をハンマーで壊す男性の姿をテレビで見た。
ドイツ統一の日、朝からこの映像が何度もニュースで流れた。
数日前からこういうことは予想されていたが、
実際に東ドイツ開放のニュースを聞いた私は、
独裁政権に対して歴史が下した公正なジャッジに気持ちが晴れた。

数日後、壁が撤去されたというニュースもこの門の前から報道されていた。
ただ、今までと違い、レポーターの後ろに建っている門の上に飾られた
馬車に乗った勝利の女神ビクトリアがカメラを向いていた。
それは、東側から撮られたものだった。

数ヵ月後、私は見慣れていたその場所を実際に訪れた。
門は、私がずっと見てきた、暗く重たいものではなかった。
そこで見た門は、堂々として威厳に満ちた立派なものであった。
それは威圧感というものではなく、すべてを悟ったものだけが身に付ける
落ち着いた趣で、すべてを包み込んでくれそうな寛大さと優しさが感じられた。

ドイツ ベルリン
※この日「勝利の女神ビクトリア」はどこかへ消えていた。
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