2005-03-07

21世紀版 タンジェの洗礼 by tetsu

タンジェを夕方出発し、フェズへ向かうことにした。
タンジェ・ポール駅から16:02に出発するウジダ行きの列車だった。

タンジェ・ポール駅。
今は無き、タンジェ港駅のことだ。
昔は、スペインからジブラルタル海峡を渡ってこの港町に着いた旅人は、
港から出ない限りは、悪名高い「タンジェの洗礼」を受けることなく
フェズやマラケシュに向かうことができた。

タンジェ・ポール駅の500m先に、タンジェ市民が利用できる鉄道駅、
タンジェ・ガレ駅というのもあった。
この駅は港の外なので、モロッコの人々が利用するタンジェの駅だった。
タンジェ・ガレ駅も、今は駅舎跡しか残っていない。

今のタンジェの駅はタンジェ・ビル駅で、港からかなり離れている。
この駅までは港からタクシーに乗らなければならない。
「旅行者はタンジェでもっとお金を落としてくれ!」
という願いがこめられているようだ。

“自称ガイド”の取り締まり規制が強化される中、
それに変わる合法的な金のせしめ方になっただけのように思える。
これぞ、21世紀版「タンジェの洗礼」であろう。

そういう一種独特の構造を持った町だからか、
世の中が急速に便利化されている中、ここタンジェだけは面倒になった。

タンジェとは何とも不可解な町である。

モロッコ

2005-03-05

港町タンジェでアラブの洗礼を受ける by tetsushi

モロッコのメディナで迷ったら生きては帰れないぞ!俺を雇え!
モロッコに金の無いヤツは入国するな!スペインへ帰れ!

タンジェのメディナで言い寄って来る「自称ガイド」に、
幾度と無く、こういう言葉を浴びせられた。

港町タンジェのガラの悪さは昔から有名で、モロッコに意気揚々と入国
して来た旅人のテンションをことごとく地におとしめる効果を持っている。

私も先人から、タンジェではアラブの洗礼を受けるので気合を入れて行け、
と、言われていたので「負けんゾ!」と気合充分で乗り込んだのだが、
入国審査を済ませて港内に入ると、のんびりした雰囲気に拍子抜けした。

すぐに、この港内には一般のモロッコ人は入れないのだと分かった。
それは、港の入り口の門を出た所に、おびただしい数の男達が、まるで
ゾンビのように群がって、こちらを見て手招きしていたからであった。
ウェルカムトゥモロッコ!カモーン!チーノ?ジャポネ?ハシモト?
「ハシモト?お前何もんじゃ」と思わず口に出た。

しかしゾンビ達のあまりの勢いに、肩で風切って意気揚々と歩いていた
私も少しずつテンションが下がり始めているのを感じてきた。
今更このまま引き下がる訳にも行かず、そういえばガイドブックには
「ひたすら無視せよ」とか「ノーサンキューでかいくぐれ」などと
書いてあったなぁと思い出し、その指示に従うことに決めた。

門を出た途端そのうちの二人が声を掛けて来たが、無視を決め込んだ。
しかしちょっとやそっとではあきらめるような輩ではない。
10分ほど会話にならない会話を交わしているうちにあきらめるのだが、
新たな二人、また次、また次、また次、と、無視しようが何しようが、
自称ガイド達は、次から次へ、取り留めもなくなくまとわり付いてくる。
そして、皆同じように、私達の元から去る度に冒頭の言葉を捨てぜりふ
として浴びせてゆく。
これはタンジェにいる限り、千日手のように永遠に続くように思われた。

町を見物している余裕など全くなく、彼らの暴挙にうんざりした私は、
列車の出発時間が迫ってきたこともあり、港へ引き返してしまった・・・

引き返す傍らも「ゴートゥースペイン」と叫ばれ続けた。
私もそれに反応するように、「こんな町二度と来るかい!」と叫んだが、
意味が通じるはずはなく、自称ガイド達は“ポカーン”としていた。

タンジェは、私を失望させた・・・?
こんなことで失望などするはずがない。
これが噂の港町タンジェの悪名高い洗礼というヤツで、私を含めた多く
の旅人は、なぜか、こういう体験を求めて旅を楽しんでいるのだから。

モロッコ