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2009-08-10

イタリア国鉄利用術

「この列車は現在38分遅れで運行中のため、
目的地までの一部駅停車をキャンセルします」
ブツン。お詫びのトーンとは程遠いイタリア語での
車内放送が一瞬で終わる。
はたまた、列車が奇跡的に定刻到着しやれやれ、
さて乗り込もうとしたら予約してある8号車が、ない。
何度数えても全部で6両しか連結されていない・・・。

耳を疑うアナウンスや度肝をぬかれる事態、
列車の遅延、さらに遅延を取り戻すための
神業(?)運行が日常茶飯事のイタリア国鉄。
ヴァカンスや帰省のための民族大移動・大混乱が
いよいよ最高潮となった8月のイタリアです。
今日は、この夏イタリアを列車で旅行される方のために、
できるだけ心穏やかに快適な鉄道の旅を
ご体験いただけるよう、メッセージを送りたいと思います。

<1> 遅延がなぜ起こるのか?
アフリカからの熱波が届く猛暑のシーズンは、
気温上昇により線路の湾曲や電気系統の故障が
発生しやすくなりますので、そのための点検に時間を要します。
何らかの事情で運行不能と判断された場合、
区間により急遽バスによる代替運行となるケースもあります。
エアコンが効かなくなるといった障害も案外頻繁に発生し、
場合によってはその車両のみカラで運行します。
また、イタリアの列車はごく一部の新型普通車両を除き、
全て乗降口とホームには3段ステップがあります
(バリアフリーではないのです・・)。
全ての特急のドアの幅は両開きの一般普通列車の半分、
日本の地下鉄と新幹線のドア構造の違いと同様です。
この狭く高い乗降口を特大サイズのスーツケースを
上げ下げしながら乗車せねばならないわけですから、
当然ひとりひとりの乗降に思いのほか時間がかかり、
その<のろのろ乗降>がまさに列車遅延や乗継列車
乗り遅れの一因となっています。もちろん、長距離路線で
停車駅が多ければさらにそのリスクは高まります。
その上ダイヤの乱れが発生し運行スケジュールが
狂ってくると臨機応変に到着ホームが変更となるため、
4番線ホームで待機していた乗客が列車到着5分前になって
大慌てで一斉に12番線へ移動しなければならない、
といった事態もしばしば発生します。

<2> では、どうしたらいいの?
できるだけ短距離運行の特急や急行を選択する、
乗継がある場合は乗継時間に余裕をもたせること、
その時間に余裕がない場合は一番に列車から下車できる
よう到着駅が近づいたころに早めに座席から乗降口へ
移動しておくことなどが効果的です。
また周囲の人の動きにも敏感に目を配ってみてください。
案外皆早めに降車の支度をはじめます。

<3> さらに・・。
停車駅のご案内は特急や急行ならば通常イタリア語と
英語でアナウンスされますが、新型普通列車で
自動音声サービスを提供するもの(これまた故障が多い)を
除き、一切アナウンスのない場合もあります。
またイタリア国鉄の車両には、まだまだ手動式開閉型ドアや
ボタンプッシュ式ドアが多く、時にはその故障により
停車駅に着いてもドアが開かず、冷や汗をかきつつ
荷物を全力で押して前後車両のドアへ走るなんてことも・・。

イタリア国鉄の現実はこんなレベルですが、
車窓からの眺めは別物です!
大輪のひまわり畑や実を結び始めたブドウ畑を望み、
草を食む羊の群れが眼下に飛び込んできたとき、
きっと列車の旅を選んでよかったという思いが
心に満ち溢れるはずです。

どうぞ皆様、Buon viaggio(良い旅を)!
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