2009-02-20

イタリアの美を支えるもの ~フィレンツェ工房見学 その2~

「Percorsi di Moda a Firenze Tra Botteghe e Ateliers」
(フィレンツェ・モーダの変遷~工房やアトリエから~)
の機に、アトリエ「ジュリア・カルラ・チェッキ」を訪問しました。



2005年に永眠したデザイナー、ジュリア・カルラ・チェッキ
の名を冠したこのアトリエは、現在、
一代でブランドと名声を築き上げた母と同じく
モーダへの熱い情熱が血に流れ、オートクチュール界で
国際的に活躍する長女ポーラさんが受け継いでいます。

ワードローブに眠った古い毛皮のコートに、
新たにデザインと裁断を加え、今風の個性的を吹き込んで
ライトファー、ベスト、ショールに生まれ変わらせる魔法の手。

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光沢あるドレスや美しい毛並のコートを試着する、
好奇心に満ちた見学者の輪に歓声や笑顔がはじけます。



「お客様に喜んでいただくことが私の喜び」
「美しいものを身に纏う時のわくわくする瞬間を大切にしてほしい」
と、笑顔で語るポーラさん。

レディースのオートクチュールのみならず、
ファーニチャーやアクセサリーへと創作の幅を豊かに広げ、
モーダの世界でひたすら挑戦し続けるしなやかな女性です。



凛とした美しさと暖かい心をもつ素敵な女性からの最高のおもてなしと、
心に残るひと時を味わった工房見学となりました。

手作りのアペリティーヴォ、お別れには真紅のバラを一輪。



ひとりの女性として、ただただ幸せ~な午後でした♪

*Giulia Carla Cecchi snc
*Via Jacopo da Diacceto, 14, Firenze
authortaniguchi  linkLink  comment0 
category魔法の手  time06:24

2009-02-11

イタリアの美を支えるもの ~フィレンツェ工房見学~

ルネッサンス開花の街フィレンツェはまた、
古くから職人文化を脈々と継承してきた街でもあります。
シニョーリア広場やドゥオモ、ヴェッキオ橋をはじめとする
世界中からの観光客が365日溢れる街の中心地を
ひとつ裏へ曲がれば、そこには昔ながらの小さな工房が
ひっそりと佇みこの美しい街の異なる横顔を
垣間見ることが出来ます。

国鉄フィレンツェ駅地下通路に10年来掲示されている
職人工房の古びたポスターに見覚えがある方も
沢山おいでだと思います。
額縁、真鍮、銀細工や製本、手織物や家具、靴、仕立屋。
あの、決して清潔とは言えない通路を足早に歩き
横目で数々のポスターを眺める度に、
職人の「魔法の手」によりひとつひとつ誕生する作品と
それらの工房をいつの日か訪ねることができたらなぁ、と
心ひそかに思っていました。

6月までの予定で、フィレンツェ市の後援で
「Percorsi di Moda a Firenze Tra Botteghe e Ateliers」
(フィレンツェ・モーダの変遷~工房やアトリエから~)と
称する無料見学ツアーが開催されています。
家族代々ひき継がれてきた老舗工房から
新進デザイナーが起業した現代的工房まで、
26人の職人から協力を得て多彩なメニューが
用意されています。
この機会を逃す手はない!と、鼻息荒く予約をし、
先週参加してきました。

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最初の見学は、ドイツ人女性サスキア・ウィットマーさんが
営む紳士靴工房です。ベルリン生まれの彼女は
シュタイナー教育を実践する学校を出たのち、
子供時代からの夢だった靴職人の道を歩み始めます。
ハンブルグ郊外の工房で見習いに励んだあと、フィレンツェへ。
3年間師事した職人より匠と技そして<秘密>を学び、
晴れて自分の工房を持ち、今年で14年目になります。

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欧米、アジア、アラブ諸国のクライアントから寄せられる
オーダーに応じ、ひとつひとつ手作りでこしらえる上質な靴。
素材の皮革は、英国やフランスから取り寄せる子牛の皮を
はじめカンガルー、ガチョウ、ワニ、はたまた
淡水魚ペルシコの皮や、いかにもフィレンツェらしい
トリッパ(!)=牛の胃袋=を用いたものまで多彩です。

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注文から足の型採り、素材の選択、仮縫い、試着を経て
完成まで、少なくとも5ヶ月の歳月を要するとのこと。
夢のような靴は、手元に届くまでの時間にも
夢を見させてくれますね!

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流行にまどわされないクラシックな美しいデザインを持つ
上質な靴は、もはや街角で簡単に見つけることが
できなくなってしまいました。
だからこそ工房の存在価値がある、と
輝く瞳で彼女が語っていたのがとても印象的でした。

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クラシックな中に遊び心も添えて・・・

*靴工房 サスキア・ウィットマー
*Via S. Lucia, 24r, Firenze

次回は、オートクチュールのアトリエ見学についてお話します♪
authortaniguchi  linkLink  comment0 
category魔法の手  time23:49