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2005-11-10

マニラの旅(part3)

ブルネイからマニラへ帰ってきた。空港から市内への行き方はもう簡単、バクララン駅行きのジプニーもすぐひろえた。
以前はチャイナタウンに泊まっていたが、最後の夜は繁華街の近くに宿をとることにした。チャイナタウンあたりは結構夜は早く店が閉まってしまうからだ。

中心に近いペドロ・ヒル駅で降りてとりあえず両替屋を探す。ブルネイに行くときにペソを残しておいたのだが、今夜の宿代と飲み代にはちょっと寂しい。
このあたりマラテ地区は探さなくても両替屋はたくさんある。ボクは3畳ほどの小さな両替屋でとりあえず20ドル両替した。

「すいません、日本人ですか?」
お金を数えていると後ろから日本語で声がかかった。見ると60前後くらいのおじさんだった。
「日本人ですか?」
「そうだよ。」
おじさんは中華系なのか見た目は日本人とかわらない。
「女いりませんか?」
「女?そんなのいらないよ、明日日本に帰るしね。」
明日帰らなくても必要ない。ボクはこの手の客引きは嫌いだった。
「どこ泊まってますか?」
おじさんはしつこくボクに問いかけてくる。
「どこも泊まってないよ、これから探すんだよ。」
「今日来たのですか?それで明日帰りますか?」
「ブルネイに行ってて明日帰るの。」
胡散臭いおっさんにボクはいらいらしていた。普段ならさっさと行ってしまうのだが、外はスコールで大雨だった。

「ホテルもありますよ。」
「ほんと?一泊いくら?」
これから宿を探すボクは思わずおじさんの言葉に反応した。
「2000から3000ペソくらいです。」
というと4~6千円だ。とても話にならない。
「高すぎるよ、500くらいだったら払うよ。」
「500もあります。」
おじさんはさらっと言ってのけた。
「ほんと?500ペソだよ、じゃあ連れてって。」

連れて行かれたのはその両替屋の2階だった。いかにも安宿らしいドアには「DAKS INN」とかかれている。
レセプションにいたのは日本人ぽい顔をした変なやつ。「部屋を見せてくれる?」というといろいろ部屋を見せてくれた。
雑居ビルの2階にあるDAKS INNは全部で10室くらいだろうか。
狭い通路には昼間からビールを飲んでいるそれっぽい職業の女性がいた。綺麗な顔立ちで「Hi !」と声をかけられてちょっとビックリ。
結局ボクは一泊520ペソのエアコン付きの部屋を選んだ。トイレ、シャワー付きもあったが、どうも汚くて共同シャワーの方が清潔な感じだった。

部屋は全部黄色に塗られていて、そこにエアコンとテレビがあるシンプルなもの。典型的な安宿だったが何故かしっくりくる。
「私はいつもこの辺にいます。女いるならいつでも言ってください。ここに連れてきてもいいですから。」
「ああわかったよ。そん時はたのむよ。」
ボクはそう言っておじさんを追い払った。


「ここにするよ。明日帰るから一泊だけ。」
ボクは部屋を見せてくれた彼にパスポートを渡してお金を払った。
「あなたは日本人ですか?」
彼はボクのパスポートを見てそう言った。
「そうだよ。」
「山下将軍を知ってますか?」
「山下将軍?」
名前を聞いてピンとこなかったが、確か陸軍大将だった人のような記憶がある。
「俺は山下将軍って呼ばれてるんだ、似てるだろ?」
似てると言われても山下将軍の顔はみたことない。
それからボクは彼のことを「山下将軍」と呼ぶようになった。


チェックインを済ましたボクは何やかんやと山下将軍と話し込み、気が付けば7時を過ぎていた。
「そろそろご飯食べに行くよ。」
「何を食べるつもり?」
「わかんない、その辺うろうろしてみるよ。最後の夜だからたっぷり飲んでくるよ。」
「仕事がなかったら俺も一緒に行くんだけどな。」
彼は残念そうにそう言うと、ボクを夜のマニラの街へ送り出してくれた。

authorshusa  linkLink  comment0 
categoryスナフの旅  time20:38

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