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2005-11-22
マニラの旅(最終回)
宿を出ると辺りはすっかり暗くなっていた。ボクはとりあえず海沿いに続く散歩道を歩いてみた。暑いマニラではこの海岸通にたくさんあるオープンカフェで食事をするのがデートコースらしい。最後の夜なのでちょっと奮発してここで海を眺めながらビールでもよかったが、一人じゃちょっと寂しいのでやめた。
海岸通をはずれて街に戻ると公園に感じのよさそうな店があった。店先でなにやらいろんなものを焼いている。メニューなどなさそうだが、ずらっとならんだ串や魚を見ているともうそれだけで十分。
「この肉ってなに?」
「ビーフです。」
お店の若い女の子はそう答えた。
「じゃあこの横のやつは?」
「。。。。。。」
うーんといいながら彼女は返事をしない。どうやら英語が思いつかないようだ。でもお腹をさすって「これこれ」みたいな仕草をしている。きっと内臓のどこかだと察しがつく。
「いいよ、じゃあこれとこれ。それと魚焼いて。」
ボクはいろんな内臓(だと思う)と魚の半切れを選んで彼女に渡した。
彼女はそれをお皿に移すと手際よく大きなカンテキに並べて焼きだした。ものすごい煙が一気に上がって店は真っ白。彼女は平気な顔をして焼き続ける。
アジアにはこの手の店はどこにでもあるものだが、マニラではほとんど見かけない。当局の管理なのか屋台というと商品を売るものばかりで、食べ物を作って売る屋台はみかけない。ここも外で調理して外で食べるが一応は店である。
美味しそうに焼き上がった。まずは魚を食べてみる。ちょっと焦げた感じがするが味は悪くない。なんの魚かわからないが海の魚らしい。鯵の塩焼きをちょっと身を堅くして油がなくなった感じだ。続いて肉を食べてみる。
牛肉も何やらわからない内臓も全然問題なく食べれる。
「お姉さん、ビールある?」
「ビールないよ、そこのセブンイレブンで買ってきて」
セブンイレブンはすぐそこにあった。
「買ってきてよ、3本でいいから。」
ボクは彼女にお願いしてみたが、替わりに違う店の子が買いに言ってくれた。食べる前に買わなかったボクのミスだ。結局ボクはこの店で缶ビールを5本飲んだ。
宿に帰ったのは11時前くらいだっただろうか、ロビーではあの山下将軍と男3人で宴会をやっていた。といってもみんなビール瓶を片手にスナックを食べているだけだ。
「お帰り!」
山下将軍がボクに声をかける。
「ただいま、ボクも一緒ビールいいかい?」
「いいよ、一緒に飲もう!」
実はボクもビールを買って帰ってきていた。
話をすると、どうやら三人のうち二人はこの宿の人で、もう一人は泊まってる客らしい。ボクらはしばらくロビーで飲んでいたが、そのうち一人がDISCOに行こうと言いだした。
「スナフ、今夜が最後なんだろ?明日はもう日本に帰るんだろ?それなら一緒に今夜は飲んで踊ろうよ!」
彼はビールを飲みながらそう言った。
「DISCOってフィリピン人が行くDISCOかい?」
「そうだよ、観光客なんか来ないローカルなDISCO。」
「それってどれくらいするんだ?」
ボクはすでに行く気満々だったがお金が気になった。
「そうだな、一人100ペソくらい。。。。」
100ペソというと200円。
「行こう!」
「おう!」
話はすぐまとまった。しかし山下将軍は店番があるらしく行けないらしい。
「残念だよ、俺も仕事なかったら行くんだけどな。」
彼は寂しそうにそう言ってボクらを見送った。
金曜日ということもあって店は超満員だった。そこを何とか交渉してテーブルを空けてもらった。
そのフィリピンDISCOというところは半分室内で半分がオープンテラスになっていた。奥のステージでは女性ばかりのバンドが演奏してその前でみんな踊っている。
ボクらは席に着くと店員を呼んで交渉をはじめた。
「チャージが一人150ペソ、それにビールが400ペソみたいだ。」
彼はボクにそう言った。店の女の子はボクが外人だとわかったらしく、不思議そうな顔をしていた。
ビール400ペソとはかなり高いなと思ったが、どうやらピッチャーみたいな大きなやつらしい。
ボクは明日帰国なのであまり持ち金はなかったがそれくらいはある。
「じゃあ一人250ペソずつだな。」
「そうだけど俺はお金持ってない。。。。」
「俺もない。。。。」
三人のうち宿の客ともうひとりがそう言った。
「うそ!おいおい、俺は明日帰るからそんなにお金持ってないよ。」
ボクがそういうともう一人は200ペソ出した。
「俺はこれだけしかない。。。。。。」
「。。。。。。。」
ボクが持っているのは彼の200ペソを合わせて四人分ちょうどくらいだった。
「俺、これ出すよ」
一人はそう言って時計をテーブルの上に出した。
「俺もこれ出すよ。」
そうすると宿の客も同じように時計を出した。
「これって、この時計でお店に払えるの?」
まさかそんなことできるわけない。
「いいよいいよ、ボクがみんなの分払うから。」
とにかくボクは有り金全部払ってなんとかビールを注文した。
ビールは樽のようなものに入っていた。下に蛇口みたいなのが付いていてそこから自分で注ぐらしい。さっそく店の女の子とそのビール樽の写真を撮った。
その子に訊くとこの樽は4リットルはいってるそうだ。
「最後の夜に乾杯!」
ボクらはやっとビールにありついた。
座席はすでに超満員。みんな飲んで踊っている。
「スナフ、踊ろうぜ!」
お金の心配がなくなった三人はボクを踊りに誘う。
「チャ・チャ・チャかかるかい?」
ボクは訊いてみた。
「チャ・チャ・チャが好きなのかい?もちろんかかるよ!」
ボクは何でも踊るが特にチャ・チャ・チャが好きだ。
でも日本にはもうこんなバンドが入ってて踊るようなお店はあまりないような気がする。ミラーボール輝くアメリカンDISCOもとっくに姿を消して、今思いつくのはクラブくらいだろうか。ボクは彼にそのことを話した。
「じゃあ日本ではどんな踊りが流行っているんだい?」
「そうだな。。。。」
と言われても日本で踊りになんか行かないのでさっぱりわからない。残念ながらクラブにも行ったことがない。
ボクはとっさに思いついた。
「あるよ、今日本で流行の踊りが。」
「どんなの?教えてくれよ。」
「いいよ、とっても簡単だから。こうするんだよ。」
と言ってボクは彼に近江住宅黒沢サンの踊りを教えた。(関西の人はわかります。)
結局、マニラでの最後の夜は朝四時半まで飲んで踊った。もちろんあのビール樽もひとつでは足りるわけもなく、帰るまでに4樽飲んでしまった。四人で4樽だから一人4リットル飲んだことになる。当然お金もないのでボクはこの夜、二回両替に走った。便利なことに両替屋は24時間営業だ。
宿へ帰るころはもう明るくなりかけていた。
「またマニラに来たら一緒に踊ろうな。」
宿の彼がそう言った。
「もちろん!またDAKS INNに泊まるよ。」
こうしてボクのマニラでのラストナイトは明けていった。
海岸通をはずれて街に戻ると公園に感じのよさそうな店があった。店先でなにやらいろんなものを焼いている。メニューなどなさそうだが、ずらっとならんだ串や魚を見ているともうそれだけで十分。
「この肉ってなに?」
「ビーフです。」
お店の若い女の子はそう答えた。
「じゃあこの横のやつは?」
「。。。。。。」
うーんといいながら彼女は返事をしない。どうやら英語が思いつかないようだ。でもお腹をさすって「これこれ」みたいな仕草をしている。きっと内臓のどこかだと察しがつく。
「いいよ、じゃあこれとこれ。それと魚焼いて。」
ボクはいろんな内臓(だと思う)と魚の半切れを選んで彼女に渡した。
彼女はそれをお皿に移すと手際よく大きなカンテキに並べて焼きだした。ものすごい煙が一気に上がって店は真っ白。彼女は平気な顔をして焼き続ける。
アジアにはこの手の店はどこにでもあるものだが、マニラではほとんど見かけない。当局の管理なのか屋台というと商品を売るものばかりで、食べ物を作って売る屋台はみかけない。ここも外で調理して外で食べるが一応は店である。
美味しそうに焼き上がった。まずは魚を食べてみる。ちょっと焦げた感じがするが味は悪くない。なんの魚かわからないが海の魚らしい。鯵の塩焼きをちょっと身を堅くして油がなくなった感じだ。続いて肉を食べてみる。
牛肉も何やらわからない内臓も全然問題なく食べれる。
「お姉さん、ビールある?」
「ビールないよ、そこのセブンイレブンで買ってきて」
セブンイレブンはすぐそこにあった。
「買ってきてよ、3本でいいから。」
ボクは彼女にお願いしてみたが、替わりに違う店の子が買いに言ってくれた。食べる前に買わなかったボクのミスだ。結局ボクはこの店で缶ビールを5本飲んだ。
宿に帰ったのは11時前くらいだっただろうか、ロビーではあの山下将軍と男3人で宴会をやっていた。といってもみんなビール瓶を片手にスナックを食べているだけだ。
「お帰り!」
山下将軍がボクに声をかける。
「ただいま、ボクも一緒ビールいいかい?」
「いいよ、一緒に飲もう!」
実はボクもビールを買って帰ってきていた。
話をすると、どうやら三人のうち二人はこの宿の人で、もう一人は泊まってる客らしい。ボクらはしばらくロビーで飲んでいたが、そのうち一人がDISCOに行こうと言いだした。
「スナフ、今夜が最後なんだろ?明日はもう日本に帰るんだろ?それなら一緒に今夜は飲んで踊ろうよ!」
彼はビールを飲みながらそう言った。
「DISCOってフィリピン人が行くDISCOかい?」
「そうだよ、観光客なんか来ないローカルなDISCO。」
「それってどれくらいするんだ?」
ボクはすでに行く気満々だったがお金が気になった。
「そうだな、一人100ペソくらい。。。。」
100ペソというと200円。
「行こう!」
「おう!」
話はすぐまとまった。しかし山下将軍は店番があるらしく行けないらしい。
「残念だよ、俺も仕事なかったら行くんだけどな。」
彼は寂しそうにそう言ってボクらを見送った。
金曜日ということもあって店は超満員だった。そこを何とか交渉してテーブルを空けてもらった。
そのフィリピンDISCOというところは半分室内で半分がオープンテラスになっていた。奥のステージでは女性ばかりのバンドが演奏してその前でみんな踊っている。
ボクらは席に着くと店員を呼んで交渉をはじめた。
「チャージが一人150ペソ、それにビールが400ペソみたいだ。」
彼はボクにそう言った。店の女の子はボクが外人だとわかったらしく、不思議そうな顔をしていた。
ビール400ペソとはかなり高いなと思ったが、どうやらピッチャーみたいな大きなやつらしい。
ボクは明日帰国なのであまり持ち金はなかったがそれくらいはある。
「じゃあ一人250ペソずつだな。」
「そうだけど俺はお金持ってない。。。。」
「俺もない。。。。」
三人のうち宿の客ともうひとりがそう言った。
「うそ!おいおい、俺は明日帰るからそんなにお金持ってないよ。」
ボクがそういうともう一人は200ペソ出した。
「俺はこれだけしかない。。。。。。」
「。。。。。。。」
ボクが持っているのは彼の200ペソを合わせて四人分ちょうどくらいだった。
「俺、これ出すよ」
一人はそう言って時計をテーブルの上に出した。
「俺もこれ出すよ。」
そうすると宿の客も同じように時計を出した。
「これって、この時計でお店に払えるの?」
まさかそんなことできるわけない。
「いいよいいよ、ボクがみんなの分払うから。」
とにかくボクは有り金全部払ってなんとかビールを注文した。
ビールは樽のようなものに入っていた。下に蛇口みたいなのが付いていてそこから自分で注ぐらしい。さっそく店の女の子とそのビール樽の写真を撮った。
その子に訊くとこの樽は4リットルはいってるそうだ。
「最後の夜に乾杯!」
ボクらはやっとビールにありついた。
座席はすでに超満員。みんな飲んで踊っている。
「スナフ、踊ろうぜ!」
お金の心配がなくなった三人はボクを踊りに誘う。
「チャ・チャ・チャかかるかい?」
ボクは訊いてみた。
「チャ・チャ・チャが好きなのかい?もちろんかかるよ!」
ボクは何でも踊るが特にチャ・チャ・チャが好きだ。
でも日本にはもうこんなバンドが入ってて踊るようなお店はあまりないような気がする。ミラーボール輝くアメリカンDISCOもとっくに姿を消して、今思いつくのはクラブくらいだろうか。ボクは彼にそのことを話した。
「じゃあ日本ではどんな踊りが流行っているんだい?」
「そうだな。。。。」
と言われても日本で踊りになんか行かないのでさっぱりわからない。残念ながらクラブにも行ったことがない。
ボクはとっさに思いついた。
「あるよ、今日本で流行の踊りが。」
「どんなの?教えてくれよ。」
「いいよ、とっても簡単だから。こうするんだよ。」
と言ってボクは彼に近江住宅黒沢サンの踊りを教えた。(関西の人はわかります。)
結局、マニラでの最後の夜は朝四時半まで飲んで踊った。もちろんあのビール樽もひとつでは足りるわけもなく、帰るまでに4樽飲んでしまった。四人で4樽だから一人4リットル飲んだことになる。当然お金もないのでボクはこの夜、二回両替に走った。便利なことに両替屋は24時間営業だ。
宿へ帰るころはもう明るくなりかけていた。
「またマニラに来たら一緒に踊ろうな。」
宿の彼がそう言った。
「もちろん!またDAKS INNに泊まるよ。」
こうしてボクのマニラでのラストナイトは明けていった。