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2005-10-23
ブルネイの旅(part1)
マニラからブルネイの首都バンダル・スリ・ブガワンまでは1時間半のフライト。空港はこじんまりしているが、とても綺麗で怪しい出迎えの人は誰もいない。みんなどこか優雅に歩いていると言う感じだ。やはりお金持ちの余裕なのか?
税関では缶ビールをひとつもっていたので係員に尋ねた。ブルネイではお酒はダメだ。
「ビール持ってるんだけど問題ありますか?」
「何本持っている?」
「缶ビールひとつです。」
係員は何やら紙を取り出してすらすらと書き出した。最後にサインしてこれを持っていくようにと言われた。
「外で飲んではダメです。ホテルの部屋で飲んでください」
彼はそう言うとボクにその紙を渡した。どうやら許可証のようなものらしい。
出口を出るとホテル予約のカウンターがあった。ブルネイではいわゆるアジアならどこにでもあるような安宿はない。全く選択肢がないと聞いていたので最初から予約カウンターで一番安い宿にするつもりだった。
「ホテル探してるんだけど、一番安いホテルはいくら?」
愛想のいいお兄ちゃんは流暢な英語で二つ紹介してくれた。どちらも1泊¥4,000だ。
「これ一番安いの?もっと他にない?」
「ないです、これが一番安いホテルです。」
「4,000円かぁ。。。。。。高いな。」
「高くないですよ4,000円ですよ?それに空港までの送迎が付いています。」
マニラの1500円のホテルでも奮発したのに、4000円は今まで泊まったホテルのベスト3に入るほど高い。
「いいよ、じゃあこれにする。今から迎えに来てくれるの?」
「はり、連絡します。」
「じゃあ1泊頼むよ。」
ボクはそう言ってお金を出した。
「1泊ですか?明日もう帰るんですか?」
「いいや、帰るのは二日後だよ。」
「はぁ?じゃあ次の日はどこへ泊まるつもりですか?」
「わかんない、公園かバス停で寝るよ。」
他にホテルがないのは知っていたが、今までの経験上、街を歩いてて偶然安宿を見つけたこととか何度かあった。ボクはそれに期待してとりあえず1泊だけするつもりだった。
「ダメですよ、公園なんかで寝ていたらすぐポリスが来て検査されます。」
「検査?」
「そう、ドラッグの検査をされます。公園なんかで寝ている人はいませんからね。そんな人がいたらきっとドラッグ中毒かなんかですから。」
フィリピンもそうだがブルネイもドラッグは死刑らしい。
「大丈夫、とにかく1泊お願いするよ。」
彼はずいぶんへんな客だと思ったに違いない。
連れて行かれたホテルはビックリするくらい綺麗だった。アメリカのモーテルを上等にしたような感じで、部屋にはベッドがふたつとAC、トイレ、テレビに冷蔵庫まで付いていた。ひとりではもったいないくらい。
「冷蔵庫あるんだったらもっとビール持ってきたらよかった。」
ブルネイではお酒は売っていない。
ボクは荷物を置くと、とりあえず街の中心へ行ってみた。市バスは1回60円くらいでバス停はあるがどこでも乗り降りできる。
ホテルの前からバスに乗ったが街の中心まではかなりあった。とても歩いて行ける距離ではない。やはり安い宿だったので郊外にあるらしい。
街の中心にあるのはオマール・アリ・サイフディン・モスク。
なんでも設計はイタリア人の建築家によるものらしく、中にはエレベーターもある近代モスクだ。
手前のラグーンには大きな船型の建物?がある。王様はここで船遊びでもするのだろうか?水は決してきれいとはいえないが、遠くからみているとラグーンに浮かんでいるように見えてとても幻想的だ。いかにもお金持ちのしそうなこと。
市場は野菜や果物を売るところと魚を売るところは別々になっていた。ここの市場もアジアの猥雑さはなく、なんとなく整然とした感じがする。
魚はエビやアジなど日本でも見慣れたものから、何やらナマズのような得体のしれない魚まで売っている。
これも見ていて飽きない光景だが、どうもアジアっぽくない。ボクが写真を撮っていても全然気にしないというか、「ツーリストなんか興味なし」といった感じで声もかからない。何となく冷たい感じがするが、それもお金持ちだからだろうか?
ブルネイにはもうひとつ大きなモスクがある。ジャミ・アス・ハサナル・ボルキア・モスクがそれだ。このモスクがブルネイで一番大きなモスク。現国王の即位25周年に合わせて建てられたそうだ。
ブルネイはマニラより暑い感じがした。蒸し暑いマニラとは違ってカラッとほんとに暑いという感じだ。
さあ、あとはどこを見て回ろうか?ボクはふらっと食堂に入りチキンカレーとロティを注文した。ブルネイで食べる初めての食事だ。
税関では缶ビールをひとつもっていたので係員に尋ねた。ブルネイではお酒はダメだ。
「ビール持ってるんだけど問題ありますか?」
「何本持っている?」
「缶ビールひとつです。」
係員は何やら紙を取り出してすらすらと書き出した。最後にサインしてこれを持っていくようにと言われた。
「外で飲んではダメです。ホテルの部屋で飲んでください」
彼はそう言うとボクにその紙を渡した。どうやら許可証のようなものらしい。
出口を出るとホテル予約のカウンターがあった。ブルネイではいわゆるアジアならどこにでもあるような安宿はない。全く選択肢がないと聞いていたので最初から予約カウンターで一番安い宿にするつもりだった。
「ホテル探してるんだけど、一番安いホテルはいくら?」
愛想のいいお兄ちゃんは流暢な英語で二つ紹介してくれた。どちらも1泊¥4,000だ。
「これ一番安いの?もっと他にない?」
「ないです、これが一番安いホテルです。」
「4,000円かぁ。。。。。。高いな。」
「高くないですよ4,000円ですよ?それに空港までの送迎が付いています。」
マニラの1500円のホテルでも奮発したのに、4000円は今まで泊まったホテルのベスト3に入るほど高い。
「いいよ、じゃあこれにする。今から迎えに来てくれるの?」
「はり、連絡します。」
「じゃあ1泊頼むよ。」
ボクはそう言ってお金を出した。
「1泊ですか?明日もう帰るんですか?」
「いいや、帰るのは二日後だよ。」
「はぁ?じゃあ次の日はどこへ泊まるつもりですか?」
「わかんない、公園かバス停で寝るよ。」
他にホテルがないのは知っていたが、今までの経験上、街を歩いてて偶然安宿を見つけたこととか何度かあった。ボクはそれに期待してとりあえず1泊だけするつもりだった。
「ダメですよ、公園なんかで寝ていたらすぐポリスが来て検査されます。」
「検査?」
「そう、ドラッグの検査をされます。公園なんかで寝ている人はいませんからね。そんな人がいたらきっとドラッグ中毒かなんかですから。」
フィリピンもそうだがブルネイもドラッグは死刑らしい。
「大丈夫、とにかく1泊お願いするよ。」
彼はずいぶんへんな客だと思ったに違いない。
連れて行かれたホテルはビックリするくらい綺麗だった。アメリカのモーテルを上等にしたような感じで、部屋にはベッドがふたつとAC、トイレ、テレビに冷蔵庫まで付いていた。ひとりではもったいないくらい。
「冷蔵庫あるんだったらもっとビール持ってきたらよかった。」
ブルネイではお酒は売っていない。
ボクは荷物を置くと、とりあえず街の中心へ行ってみた。市バスは1回60円くらいでバス停はあるがどこでも乗り降りできる。
ホテルの前からバスに乗ったが街の中心まではかなりあった。とても歩いて行ける距離ではない。やはり安い宿だったので郊外にあるらしい。
街の中心にあるのはオマール・アリ・サイフディン・モスク。
なんでも設計はイタリア人の建築家によるものらしく、中にはエレベーターもある近代モスクだ。
手前のラグーンには大きな船型の建物?がある。王様はここで船遊びでもするのだろうか?水は決してきれいとはいえないが、遠くからみているとラグーンに浮かんでいるように見えてとても幻想的だ。いかにもお金持ちのしそうなこと。
市場は野菜や果物を売るところと魚を売るところは別々になっていた。ここの市場もアジアの猥雑さはなく、なんとなく整然とした感じがする。
魚はエビやアジなど日本でも見慣れたものから、何やらナマズのような得体のしれない魚まで売っている。
これも見ていて飽きない光景だが、どうもアジアっぽくない。ボクが写真を撮っていても全然気にしないというか、「ツーリストなんか興味なし」といった感じで声もかからない。何となく冷たい感じがするが、それもお金持ちだからだろうか?
ブルネイにはもうひとつ大きなモスクがある。ジャミ・アス・ハサナル・ボルキア・モスクがそれだ。このモスクがブルネイで一番大きなモスク。現国王の即位25周年に合わせて建てられたそうだ。
ブルネイはマニラより暑い感じがした。蒸し暑いマニラとは違ってカラッとほんとに暑いという感じだ。
さあ、あとはどこを見て回ろうか?ボクはふらっと食堂に入りチキンカレーとロティを注文した。ブルネイで食べる初めての食事だ。
2005-10-18
マニラの旅(part2)
翌日、ホテルの近くにあったパン屋でパンを買って朝食をとり、マニラ市内の見所を歩いてまわることにした。
マニラ大聖堂
フィリピンで最も重要な教会だそうだ。中にはアジア最大のパイプオルガンがあるらしいが、興味なかったので中には入らなかった。
サン・オウガスチン教会
フィリピン石像教会のなかでも一番古い教会。ちょうど日曜礼拝をやっている最中、とても入りづらい雰囲気だったので中には入らなかった。世界遺産だそうだ。
キポア教会
マニラ市のキポア地区にある教会。メキシコから持ち込まれた黒い木で作られた等身大のキリスト像「ブラック・ナザレ」がある。このキリスト像は奇跡を起こすそうで、お祈りする人でいっぱいだった。
マラカニアン宮殿
今でも記憶に残っている。大勢の市民がここに押し掛けてマルコス大統領を追い出してしまったところ。「宮殿」というのでもっと豪華な建物かと思っていたが、見た目は普通のビルって感じ。
マニラは雨が多く、相変わらずジプニーが爆音を轟かせて走り回っていた。ボクは2日で主だったところを見てまわり、月曜日に旅行代理店が開くのを待ってブルネイへのチケットを探した。
何軒か旅行代理店をまわったが、その中で一番安かったのがHappy Travelという代理店で往復355ドル。TAXを入れても予算内の400ドルでお釣りがきたのでさっさと決めてしまった。ただフライトが水曜日とのことであと一日マニラにいなければならなかった。
「世界一お金持ちの国王の国。。。。」
マニラに着いてまだ3日しかたってないのに、ボクの気持ちはもうブルネイに飛んでいた。
マニラ大聖堂
フィリピンで最も重要な教会だそうだ。中にはアジア最大のパイプオルガンがあるらしいが、興味なかったので中には入らなかった。
サン・オウガスチン教会
フィリピン石像教会のなかでも一番古い教会。ちょうど日曜礼拝をやっている最中、とても入りづらい雰囲気だったので中には入らなかった。世界遺産だそうだ。
キポア教会
マニラ市のキポア地区にある教会。メキシコから持ち込まれた黒い木で作られた等身大のキリスト像「ブラック・ナザレ」がある。このキリスト像は奇跡を起こすそうで、お祈りする人でいっぱいだった。
マラカニアン宮殿
今でも記憶に残っている。大勢の市民がここに押し掛けてマルコス大統領を追い出してしまったところ。「宮殿」というのでもっと豪華な建物かと思っていたが、見た目は普通のビルって感じ。
マニラは雨が多く、相変わらずジプニーが爆音を轟かせて走り回っていた。ボクは2日で主だったところを見てまわり、月曜日に旅行代理店が開くのを待ってブルネイへのチケットを探した。
何軒か旅行代理店をまわったが、その中で一番安かったのがHappy Travelという代理店で往復355ドル。TAXを入れても予算内の400ドルでお釣りがきたのでさっさと決めてしまった。ただフライトが水曜日とのことであと一日マニラにいなければならなかった。
「世界一お金持ちの国王の国。。。。」
マニラに着いてまだ3日しかたってないのに、ボクの気持ちはもうブルネイに飛んでいた。
2005-10-13
マニラの旅(part1)
久しぶりに旅に出た。
空港の出口、そこは怪しい奴らがうようよボクを待ちかまえていた。
「タクシー?、タクシー?」
いつもなら2、3人に囲まれてそう言われるのだが、不思議なことに誰も寄ってこない。マニラには華僑がたくさん住んでいるので中国人に見えるのだろうか?寄ってこられると鬱陶しいが、誰も来ないとこれまた寂しい。
出発前に本屋で立ち読みしたガイドブックをメモした紙を取り出す。別に短期なので買えばいいものを、何故か出発前から貧乏な旅モードになっている。
「空港出て左→ジプニーをひらう→LRTバクララン駅」
ジプニーとは米軍が使っていたジープを改造した私営乗り合いバスのようなもの。どこでも合図をすれば乗り降りできて便利だが、行き先がわかりにくい。
フロントガラスに行き先が書かれた札のような物がいくつかはってある。大体が通りの名前だったり駅の名前だったりするが、これを素早く見て手を挙げて停める。ぼやぼやしてると乗れない。
空港を左に出たはずだかジプニーはなかなか見つからなかった。それどころか近くを走ってる気配が感じられない。近くにいた警備員にジプニーでバクララン駅へ行きたいと尋ねると親切に答えてくれる。フィリピンでは英語がよく通じる。
教えられた通りに行くとジプニーがたくさん走っていた。だがどれがバクララン駅に行くのかさっぱりわからない。ボクは隣に立っていた学生にジプニーを停めてもらった。
「バクララン駅に行くかい?」
「OK!」
ドライバーはそう言ってボクに早く乗るように合図した。
ジプニーの中は両端に長いすがおいてあるシンプルなもの。空いていれば問題ないが、結構混んでいる時が多い。大きな荷物を持っているとかなり厳しい。目的地に着けば「ストップ!」と声をかければどこでも停まってくれる。どうやらバクララン駅は終点だったみたいだ。LRTとは高架鉄道のことで、マニラを南北に結んでいる。空港に一番近い
駅が南の終点バクララン駅だ。
駅の周辺は大きなマーケットになってるようで、その猥雑さには圧倒される。改札口で荷物チェックを受けてチケットを買う。ここでまたメモを取り出す。
「バクララン駅→カリエド駅→オンピン通り→ファーストホテル」
空港から今夜の宿「First Hotel」までの一番安い行き方だ。
列車は日本の地下鉄みたいなもので、終点から乗ったせいか簡単に座れた。カリエド駅はここから9駅目、外の景色を楽しむ余裕もないくらい乗客が増えてきた。カリエド駅に着いたときには降りるのが大変なくらい満員だ。
駅に着くと今度は「オンピン通り」を探す。ホテルは駅から5分くらいと書いてあったので簡単に見つかると思っていたが、これがなかなか見つからない。駅の回りをうろうろ30分は歩いただろうか、やっと「Ongpin St」と書かれた標識を見つけた。
オンピン通りあたりは中華街になっている。通りをしばらく歩くと「First Hotel」の看板が見えた。
その上には「第一社旅」と書かれている。
「なるほど、それでファーストホテルか。」
納得したのはいいが、どう考えてもこの漢字はおかしい。書くなら「第一旅社」となるはず。
「漢字のわからないフィリピン人が看板を作ったのかな?」
そんなことを考えながらホテルに入った。
レセプションには中華系の若い男が座っていた。中国語を話すかもしれないが、広東語だと困るので英語で尋ねてみた。
「部屋ありますか?」
「あるよ。」
彼も英語でそう答えた。
「シングルで一泊いくら?」
「800ペソ。エアコンにシャワーとトイレがついてるよ。」
800ペソといえば1500円くらいだ。
今まで東南アジアで一泊1000円以上の部屋に泊まった記憶はない。
「じゃあ部屋見せてくれる?」
別にトイレとシャワーは共同でもよかったのだが、ここは社会人、奮発してみた。
彼は近くにいたおじさんを呼ぶとカギを三つ渡した。そのおじさんはボクに付いてくるようい言うとエレベーターに乗り込んだ。
「エレベーター付きか?」
エレベーター付きのホテルなんて滅多に泊まったことがない。
部屋は想像以上に綺麗だった。べッドも大きいし机にテレビまで付いている。
ボクはいつものようにトイレはちゃんと流れるか、シャワーは出るか、カギは大丈夫かとチェックして、最後にエアコンの効き具合を調べてテレビをつけてみた。驚いたことに衛生番組が看れる。チャンネルを回していくとNHKのBSも映った。
「OK!この部屋にするよ。」
おじさんは親指を立てて「Good Room!」と言ってご機嫌そうだった。
とりあえず1泊分のお金を払ってベッドに横になる。
空港からここまで2時間近くかかっただろうか。使ったお金はLRTとジプニーで22ペソ、40円くらいだ。
もし空港からタクシーを使っていたなら約200ペソ、30分くらいで着いていただろう。200ペソといえば約400円。
400円を40円に節約するために時間と労力を使ってホテルまで来た。それでもボクはとても満足していた。この心地よい旅の疲れ、自分らしさを取り戻したような気がした。ボクはもう旅モードに入っていた。
空港の出口、そこは怪しい奴らがうようよボクを待ちかまえていた。
「タクシー?、タクシー?」
いつもなら2、3人に囲まれてそう言われるのだが、不思議なことに誰も寄ってこない。マニラには華僑がたくさん住んでいるので中国人に見えるのだろうか?寄ってこられると鬱陶しいが、誰も来ないとこれまた寂しい。
出発前に本屋で立ち読みしたガイドブックをメモした紙を取り出す。別に短期なので買えばいいものを、何故か出発前から貧乏な旅モードになっている。
「空港出て左→ジプニーをひらう→LRTバクララン駅」
ジプニーとは米軍が使っていたジープを改造した私営乗り合いバスのようなもの。どこでも合図をすれば乗り降りできて便利だが、行き先がわかりにくい。
フロントガラスに行き先が書かれた札のような物がいくつかはってある。大体が通りの名前だったり駅の名前だったりするが、これを素早く見て手を挙げて停める。ぼやぼやしてると乗れない。
空港を左に出たはずだかジプニーはなかなか見つからなかった。それどころか近くを走ってる気配が感じられない。近くにいた警備員にジプニーでバクララン駅へ行きたいと尋ねると親切に答えてくれる。フィリピンでは英語がよく通じる。
教えられた通りに行くとジプニーがたくさん走っていた。だがどれがバクララン駅に行くのかさっぱりわからない。ボクは隣に立っていた学生にジプニーを停めてもらった。
「バクララン駅に行くかい?」
「OK!」
ドライバーはそう言ってボクに早く乗るように合図した。
ジプニーの中は両端に長いすがおいてあるシンプルなもの。空いていれば問題ないが、結構混んでいる時が多い。大きな荷物を持っているとかなり厳しい。目的地に着けば「ストップ!」と声をかければどこでも停まってくれる。どうやらバクララン駅は終点だったみたいだ。LRTとは高架鉄道のことで、マニラを南北に結んでいる。空港に一番近い
駅が南の終点バクララン駅だ。
駅の周辺は大きなマーケットになってるようで、その猥雑さには圧倒される。改札口で荷物チェックを受けてチケットを買う。ここでまたメモを取り出す。
「バクララン駅→カリエド駅→オンピン通り→ファーストホテル」
空港から今夜の宿「First Hotel」までの一番安い行き方だ。
列車は日本の地下鉄みたいなもので、終点から乗ったせいか簡単に座れた。カリエド駅はここから9駅目、外の景色を楽しむ余裕もないくらい乗客が増えてきた。カリエド駅に着いたときには降りるのが大変なくらい満員だ。
駅に着くと今度は「オンピン通り」を探す。ホテルは駅から5分くらいと書いてあったので簡単に見つかると思っていたが、これがなかなか見つからない。駅の回りをうろうろ30分は歩いただろうか、やっと「Ongpin St」と書かれた標識を見つけた。
オンピン通りあたりは中華街になっている。通りをしばらく歩くと「First Hotel」の看板が見えた。
その上には「第一社旅」と書かれている。
「なるほど、それでファーストホテルか。」
納得したのはいいが、どう考えてもこの漢字はおかしい。書くなら「第一旅社」となるはず。
「漢字のわからないフィリピン人が看板を作ったのかな?」
そんなことを考えながらホテルに入った。
レセプションには中華系の若い男が座っていた。中国語を話すかもしれないが、広東語だと困るので英語で尋ねてみた。
「部屋ありますか?」
「あるよ。」
彼も英語でそう答えた。
「シングルで一泊いくら?」
「800ペソ。エアコンにシャワーとトイレがついてるよ。」
800ペソといえば1500円くらいだ。
今まで東南アジアで一泊1000円以上の部屋に泊まった記憶はない。
「じゃあ部屋見せてくれる?」
別にトイレとシャワーは共同でもよかったのだが、ここは社会人、奮発してみた。
彼は近くにいたおじさんを呼ぶとカギを三つ渡した。そのおじさんはボクに付いてくるようい言うとエレベーターに乗り込んだ。
「エレベーター付きか?」
エレベーター付きのホテルなんて滅多に泊まったことがない。
部屋は想像以上に綺麗だった。べッドも大きいし机にテレビまで付いている。
ボクはいつものようにトイレはちゃんと流れるか、シャワーは出るか、カギは大丈夫かとチェックして、最後にエアコンの効き具合を調べてテレビをつけてみた。驚いたことに衛生番組が看れる。チャンネルを回していくとNHKのBSも映った。
「OK!この部屋にするよ。」
おじさんは親指を立てて「Good Room!」と言ってご機嫌そうだった。
とりあえず1泊分のお金を払ってベッドに横になる。
空港からここまで2時間近くかかっただろうか。使ったお金はLRTとジプニーで22ペソ、40円くらいだ。
もし空港からタクシーを使っていたなら約200ペソ、30分くらいで着いていただろう。200ペソといえば約400円。
400円を40円に節約するために時間と労力を使ってホテルまで来た。それでもボクはとても満足していた。この心地よい旅の疲れ、自分らしさを取り戻したような気がした。ボクはもう旅モードに入っていた。