2005-12-06

香港の鳥

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   羽を広げ天を仰ぐ鶴
  名前の上に描かれた鳥は
   まるで冠のようです
 これで私の人生も安泰かしら?

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 古来より中国では、皇帝や皇室の運気と隆盛を念じて、お抱えの画家にこういった風水を使って運勢を高める花絵文字を描かせる因習があったとか。



 これは、10年以上も前に香港へ行ったときに、香港島の赤柱(スタンレー)の海岸あたりで声をかけられ、購入した1枚です。(額縁は別)

 このようなパンフレットと簡素なセールスボードだけで道行く観光客に声をかけていた彼は、私が少し遠くから見ていることに気がつくと、にこにこと実際に描いた作品を持って近寄り、「きれいよ」「記念にどうぞ」「この先生、香港で一番有名な人」などなど、片言の日本語でアプローチしてきたのでした。

 値段はそれほど高いとも思いませんでしたが、(当時のレートで1000円くらい)「作成までに1時間くらいかかるので、その頃、またこのあたりで…。」と言うのが彼の言い分。

 「実際にこれと同じような美しい仕上がりになるのだろうか」「先払いしてトンずらされるのではないだろうか」などと言った点が引っかかり、中々決心がつきかねていたのですが、これまでに出会った香港の人々でイヤな思いをしたことがなかったので、思い切ってオーダー(?)することに…。

 それから私は予定通り周りを観光し、仕上がり時間より大幅に遅れて戻ってきたところ、彼はちゃんと私の帰りを待っていて?にこにこと「これです。きれいでしょう?」と言って、この作品と呼ぶにふさわしい絵文字の描かれた用紙を私に手渡したのでした。


    

 それにしても、何と美しく愛らしいのでしょうか。漢字の持つ硬さが見事に流麗なデザインに生まれ変わっています。

 10年以上の時を経ても尚、その「凛」とした美しさは色褪せることがなく、多色使いのラインにも、にじみやぼやけはありません。質の高い紙に質の高い汁材で描かれていることは、素人の私でも一目瞭然です。

 親からの初めての贈り物である「名前」に込められた思い(言霊)に、
まるで息吹を吹き込むかのようにデコラージュした花文字には、下記のような意味が込められているんですって。


 その後、香港の各地で、また、日本でもこの「中国彩虹書法」を見かけることがありましたが、これほど鮮明で品の良い仕上がりの作品に出合うことはありませんでした。

 これなら、お土産にまとめて注文しても良かったな~、とちょっぴり後悔。まさに一期一会の1枚となりました。


category旅の思い出Gallery  time00:31  authoratsumi 

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