2008-08-31

山口県>仙崎>金子みすゞと弁天島&王子山


       弁天島は波のうえ               木の間に光る銀の海
     金のひかりにつつまれて             私の町はそのなかに
       もとの緑でありました            竜宮みたいに浮かんでる

         『弁天島』より                  『王子山』より

 「仙崎再び」の今回は、みすゞが「仙崎八景」で詠んだ2つのスポットを訪ねてみました。

王子山は、仙崎の先に延びる橋を渡った青海島にあります。



 時折、白波を残し、勢い良く走り去る水上バイクを眼下に見下ろしながら、思ったより長い緩やかな上り坂をゆくと、子らが楽しそうに集う時計台がありますから、それを過ぎると目指すビュースポットはもうすぐ。



          




 看板を左に入っていくと、少し傾斜の急な上り坂があり、お地蔵様のところで道が分かれていますので、更に左手の上り坂をゆきましょう。



 小さな小さなビューポイントです。
 JR長門市駅からもバスが出ているのですが、
2つのうち、1つは手前の仙崎漁港止まりなので、
うまく時間が合うといいですね。

 



   銀の瓦と石垣と
 夢のようにも、霞んでる

  王子山から町見れば
  私は町が好きになる




渦中にいるとわからないことも、距離を置いて客観的に眺めてみることで、
また新しい何かを見出すこともできるというもの。

みすゞは心のリセット法をちゃんと知っていたんですね。



-- 弁天島 -------------------


 「あまりにかわいい島だから
 ここには惜しい島だから
 貰ってゆくよ、綱つけて」

 北のお国の船乗りが
 ある日、笑っていいました。



 こんな出だしで始まる弁天島は、青海島に向かって右手の仙崎漁港側にあります。


 現在は「弁天大橋」を渡って陸続きにアプローチすることが出来ますが、弁天島以外は水産業の振興を目的に昭和63年から5年をかけて造られた人工の島。


 だから、詩の風景とはかなり違うのですが、島の愛らしさに変わりはありません。

朝のセリを終え、のんびりとした時間が流れる漁港を通り抜けて…。




波は穏やかで水も透き通るほどに美しく、
目を落とせば海藻類が気持ち良さそうにゆらゆら揺らめいています。


 ここ弁天島に祭られている神社は厳島神社。

主祭神はもちろん弁天様(=市杵島姫命いちきしまひめのみこと)ですが、素盞鳴尊(スサノオのミコト)が姉の治めている高天原(たかまのはら)でさんざんな悪事を働いて追放される物語はここから端を発しているそうです。





  脇にはみすゞが詠んだ
   「弁天島」の歌碑も
   建立されています。









  弁天大橋にはこんな遊び心も。








街燈ランプもレトロでオシャレです。


         島周辺の公園化事業が完成したのは
              平成6(1994)年10月のことでした。

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 訪れた時にはメッセージの書き込んだかまぼこ板をモザイク画の1ピースにする「みすゞ燦・参・SUN2008」のキャンペーンが行なわれていたので私も参加。









どんな作品の一部になるのか
     今からとても楽しみです。


山口県>仙崎>「幻の童謡詩人」金子みすゞ記念館

2008-08-29

石川県>和倉>ル・ミュゼ・ドゥ・アッシュ



精巧にデザインされた味と香りの色彩作品

愉しみどころは
残り香が奏でる一瞬のシンフォニー

だから
耳を澄ませてお召し上がりくださいね





 私が頂いたのはこちらの「レーヴ」。

 数ある中で真っ先に目が合い、『フランボワーズ・コンフィチュールとヘーゼルナッツ入りのシナモンムースを使用した一品』、というプロフィールに即落でしたが、普段から甘いものはあまり食べないので

 「シナモンムースぅ~?」
 「しかもヘーゼルナッツ入りの~?」
 「それに、フワンボワーズのコンフィチュールって…」
 「甘いの?酸味が効いてるの?軽いの?何なの~?」 等など

全くイメージが沸きません…。

※フランボワーズ >>> ラズベリー 
※コンフィチュール >>> 季節のフルーツに野菜、ワイン、ハーブ、スパイスをブレンドした
               フルーツのソースのようにサラサラした新感覚のジャムのこと

 で、その印象は、と言えば…、
口の中の上の方から降りてくるシナモンと舌からシナモンの香りに向かって立ち上るムースが中央で交差する一瞬に、精巧な設計図が色や香りとして見える、と言う感じ。(???)

 そこには、シンフォニーの楽譜の一小節がランダムに切り出されてゆくような客観性があり、決して全体像は見えないけれど、また微細な変化もあるけれど、トーンの変わらない普遍性があって、静かで透明感があって風が吹いていて。

 そして、精巧な設計図に縛られたまとまり感みたいなものがあるかと思えばそうではなく、脳裏に広がる世界はどこまでも果てしない。
 何となく、自由で先進的だけど客観的なフレームを崩さない、指揮者の故、岩城宏之氏の世界に似ているような気がします。

 レーヴ(reve)がフランス語で『夢』という意味であることを知った時、あの消えてしまう感覚と言うか、そこに留まっていないけれど確かに存在している不可思議な矛盾もすっかり納得解消されました。

 コンセプトは「五感を堪能させるアート空間」。
 テーブルでのオシャベリも自然と控えめになることが、それを物語っていて、もちろん、私も堪能です。
 

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能登牛乳だって
ディスプレイによってはこんなにオシャレなイメージに




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辻口博啓美術館 ル・ミュゼ・ドゥ・アッシュ
 和倉と言えば、言わずと知れた日本有数の温泉地。
 その地で和菓子屋の長男として生まれながらも、パティシエの道を極め続ける辻口博啓氏の美術館がオープンしたのは、2006年のことでした。


 手前右側に氏と角 偉三郎美術館があり、カフェはその奥。 


 氏の美術館にはシュークルダール(砂糖の芸術作品)など数点が展示されていますが、高さ1.2M×幅6Mの飴で創作された壁画「海の中の銀河」は圧巻です。




2008-08-29

奈良県>奈良市>燈花会



闇に陰影が生まれる時
古の時間が流れ出す


日が落ちるのと前後して
静かに浮かび上がる古都の面(おもて)は
静かで穏やかで慈悲深い



 迎え盆の日、私は仕事で奈良におりまして、暑くて長い1日を終えた後、たまたま立ち寄ったバーでこのイベントを知ったので、ちょっと寄り道してみることにしました。

 奈良駅から、なだらかな上り坂(三条通)をゆくと猿沢池や興福寺、春日大社などがあり、その各スポットが温かな灯りで縁取られていたり、ちょっとしたデザインが施されていたりしています。

 ぼんやりと灯る灯りが人を優しくするのでしょうか。

 道ゆく人々もとても静かで、ゲタやヒールの踵を打ち鳴らして歩く人もいなければ、大声で騒ぐ輩もいない。
 交通整理のオジサンの張り上げる声もなく、ただ心地よいざわめきだけがすれ違ってゆきます。


 京都・東寺の五重塔に次ぐ高さを誇る興福寺の五重塔もライトアップされていて、1300年の時を経ても尚、揺るぎなく精巧な設えを今に残すその姿はさすが世界遺産。
 それはそれは見事でした。

 燈花会のイベントエリアとしては、これらの先にある浮見堂など奥深く広がっているのですが、今回はここまで。

 『燈花』とは、灯心の先にできる花の形のかたまりのことで、これができると縁起が良いと言われているそうです。

なら燈花会 公式HP
ライトアップ・プロムナードなら
続きがあります

2008-08-07

北海道>知床・ウトロ>いるかホテル




知床の海の魅力に惹かれて
移り住んだダイバーが経営する宿




 「ホテルいるか」はウトロの中心から知床斜里側へ少し離れているので、知床連山を借景としてオロンコ岩などの名所を含めた知床の風景が楽しめます。

 ホテルのオーナーは現役のダイバー。また、映像のプロでもいらっしゃるので、ダイニングルームではオーナー自身が撮影した知床の海の映像を見ることが出来るんですよ。

 年間の潜水回数は数え切れず、それらの映像は私たちが知らず知らずにテレビなどで目にしているものだそう。



 だから、トークも新鮮。

夕食はこちらのダイニングルームで頂くのですが、オーナーの話にいつしか見知らぬ宿泊客同士も打ち解けて和やかムードになるのです。


 

 お食事は、もちろん地元の新鮮な食材で。
気取らず、力みのない味付けにはす~っと体に馴染んでいくような心地良さがあり、連泊や長期滞在者にとっては尚の事、「身体に優しい食事」と言えるでしょう。


 そして、食後はこちらのテラスで一休み。

目の前の海に下りてゆく人あり、タバコをくゆらせる人あり、旅の情報交換をする人あり、と、潮風にあたりながら、星を見上げながら、思い思いの時間が交差してゆきます。



お部屋はいたってシンプルですが、こんな可愛いリトルサプライズも…。





居心地が良くって、ゆったりとしていて…。





「こんな故郷(いなか)があったらいいな」

そう思わせるお宿でした。




「移り住んだ人間だから見えることがある。
だから、移り住んできたことを忘れてはいけない、と、僕は思う。」


 夢とロマンだけでなく、冷静な視点から紡ぎ出される言葉には「説得力」が宿ります。


 穏やかな口調でそう語るオーナーのまなざしは、映像の世界と向き合うプロのそれと同じ輝きをしていました。

       ライブカメラもあります!

北海道>知床・ウトロ>クルージング

2008-08-07

北海道>知床・羅臼>セセキ(瀬石)温泉




満ち引く潮とかくれんぼ




お天気が良ければ
国後だって望めます。




 『北の国から』で純くんとトドが浸かっていたあの磯湯は
実は、満潮時にすっぽりと海没してしまう珍しい海中温泉。





水平線目線なので
根室海峡の向こうから早足でやってくる雨雲のスピードもとってもリアル。




湯船?は2つあって、岩礁から湧き出す泉温は60度以上ですが、
1つは熱め、1つはぬるめとなっていて、効能としては、[ 食塩泉 ]なので、
神経痛・腰痛・リューマチ・慢性皮膚病などに効果があるそうです。
 



 羅臼は天候の移り変わりが激しく、訪れた日もみるみるうちに風が吹き、雨が降り出してきたのですが、今年の天然コンブ漁の解禁(7月26日)も、実質的には7月30日が初漁に。




朝早くからたくさんの方々が精を出していらっしゃいましたが、
どこの番屋もとても静かだったのが印象的でした。


  

このセセキ温泉は、知床半島の太平洋側、羅臼町から24キロ北上したところにあります。
路線バスも数少ないですが走っていますから、
うまく利用できればエコでチープなショートトリップを楽しめるでしょう。


知床・羅臼町公式ホームページ > セセキ温泉

世界自然遺産 知床羅臼町観光協会

北海道 根室支庁

2008-08-06

北海道>知床・ウトロ>クルージング




そこは「自然が鎮座するところ」



静かで不動、そして男性的

知床の地は
人を必要としない営みで
護られています





 前夜の夕食時には「クルージングはほぼ無理」ということでしたが、当日の朝には、知床岬までは行けないけれど、知床岳手前の「ヒグマウォッチングコース」ならアプローチは恐らく可能、となり、天候次第の条件付きで出発することになりました。

 乗り込んだのは、宿泊したホテルのオーナーが所有する小型クルーザー「デルフィネス号」。意味は、独語で「いるか」のことです。
 知床半島の周りには定置網が気まぐれ?に張り巡らされているので、大型船と違ってその合間を潜り抜けながら名所スポットの間近までアプローチ出来るフットワークの良さが魅力です。


 往路は2階の操縦席の隣に座らせてもらえたので、視界を遮るものは何もなし。




また、豊富な知識と体験、そしてユーモアに長けたオーナーのトークを独り占め出来、
それは正にプライベートガイドツアーのような贅沢なひとときになりました。


 

緩やかな曲線を描きながら、
風が、波が、大地が刻んできたパノラマが繰り広げられてゆきます。

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        象岩                 フレぺの滝




ここはパンフレットにも掲載されるスポット。
水の染み出す姿が夜のライトに浮かび上がる様は
それはそれは荘厳で神秘的です。






波の色も深くまろやかに揺れて…







カムイワッカ(神の水)の滝


 

この辺りの滝は、硫黄山を背景に流れ出しているため
海中に目をやると幾筋もの硫黄の帯が見え、
それがぼんやりと混ざり合って蛍光色のような色を発しているんですよ。





そして、雲の流れを睨みながら、
いよいよヒグマのウォッチングポイントへ。










この日は山肌でエサを探す親子らきしヒグマの姿を見ることができましたが、
肉眼にしても5ミリ弱。それだけ知床の大地が雄大ということなんですね。




海も山も急速に色を失って行く中、
復路は忍び寄る雲々から逃げるように一直線でウトロの港を目指しました。



2008-08-04

北海道>小清水原生花園

         


オホーツクの風が愛でる花々は  
清楚で可憐  



  


    その光景はまるで点描画の世界に足を踏み入れたようです。


アプローチは
5月~10月の間だけ臨時開業する
「小清水原生花園駅」から



  





この駅では、駅員さんの制服を着て
記念写真を撮ることもできるんですよ。


小さな兄弟が大きな制服を着て、嬉しそうに敬礼しながらカメラに納まっている姿は
何とも微笑ましいものでした。


 改札を出て目の前の少しきつい勾配の階段を上りきると、
オホーツク海はもちろんのこと、360度のパノラマビューが広がって…。



ファインダーに納まりきらない広大な風景が
ぐっと時間の流れを緩めてくれますよ。


さて、一息ついたら、遊歩道を道なりに降りてゆきましょう。







  時にはオホーツクを見下ろして

      時には空に向かって歩きながら…





緩やかにアップダウンを繰り返し
強い日差しを跳ね返す緑の合間に群生する花たちを目で追ってゆくうちに
ちょっと不思議な感覚を覚えてきます。




 「ほらほら、あそこに咲いているよ」

 「あ、あそこはまた違う花が咲いてるよ」

時折聞こえるそれらの声は、
      まるで宝物でも見つけたよう…。

ここでは、咲き乱れる、と言っても、整備されたフラワーパーク等とは違って、いつしか緑の合間の花たちを探すようになるんですね。

 先陣切って咲くのはクロユリ。
そして、まるで、オホーツクの風の漣を映すように、エゾスカシユリやハマナスなど約40種類の花たちが、次々と色彩のハーモニーを奏でてゆくのです。




オホーツク海と濤沸湖(とうふつこ)に挟まれた約8km(275ha)のここ小清水原生花園が、
実は細長い「砂丘」だと言うのですから驚きですね。




そして、ロハスな時間の仕上げは海岸で。





裸足になって歩いてみると、
太陽の熱が土踏まずから
ぐっと体を貫きます。









  ここが「鳴り砂浜」の最北端。






 帰路は、降りてきた遊歩道ではなく、道路寄りの平坦な道をどうぞ。



途中には井戸汲みのポンプもあって
ノドを潤すことができるんですよ。





  ……………… for your information ……

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