2005-05-24

ブルージュの馬

…………………………………………………………
 上品そうなバストショット(?)に魅了…
  犬の次は私の生まれ年の「馬」です………………………………………………………

 ベルギーはレース編みで有名ですが、レースの草分けの地はヴェネツィアで、針を使うレース(ニードルポイント・レース)はベネツィアが発祥だがボビン・レースはフランドル地方(ベルギー)が発祥とする説と、ボビン・レースもベネツィアが発祥であるが、非常に早い時期にフランドルに技術が伝播したと言う説が対立しているそうで、その内容は「手芸が語るロココ」飯塚信雄著(中公新書)に詳しいのでご興味がお有りの方は、是非、ご一読くださいね。

undefined
 さて、ブルージュの街にはレースのお店がたくさんあり、右のようなボビン・レースのデモンストレーションが、カラカラカラカラ乾いた音を奏でながら行われています。

 特に購入するつもりがなかったんですよ、レース編みは…。でも、この「馬」のモチーフを見たときに、午年生まれの私としては、買わずにはいられなくなってしまったんですね。

 先の書籍によりますと、神聖ローマ帝国皇帝ヨーゼフ二世(マリー・アントワネットの兄)は、ベネツィアン・レースの注文の対価として今日の円に換算して7億円(!)ほどを支払った記述があるといい、男性のステータスシンボルとして重要度の高かったクラバット(胸元を飾るレース)の上質のものでは1枚200万円(!!)ほどしたそうで、ブロンド色の人毛かつらの上等品が2000~3000万円(!!!)などなど、途方もない対価で取引がなされていた商品の一つなのだそうです。

 また、当時の肖像画家たちはレース糸とステッチを克明に描いたので、その産地まで明確に知ることが出来たと言うのですから驚き。当時は画家に割増料金を払って実際より良い衣装(装飾品も含めて)で描かせることも珍しくなかったそうなので、この本を読んでからと言うものは、美術館で名も知らぬ肖像画を見るときに、「取ってつけたようなレース使いや装飾品がないか」など、マジマジと探すことが密かな楽しみになってしまったワタシです。


> 追伸 >>> 
レースは伊語でpunto in aere(プント イン アエレ=空中に向けたステッチ)と言い、「地布から開放された新しい手芸」を意味しているそうです。


2005-05-11

いきなり「番外」うちの犬

undefined


……………………………………………………………………………………………
「犬」関連の3枚目はこちら…
手前ミソながら、我が家の家族だった犬です
……………………………………………………………………………………………

 「シュテーデル」「プラハ」に続いて3枚目は、我が家の家族の1枚です。中学時代、学校に紛れ込んできたところを誰かが拾い上げ、数々の手を経て、「ぽん」と私の手の平にやってきたのでした。

 幼いころから、何度となく「動物を飼いたい!」と拾ってきては(今ではノラ犬、ノラ猫の類はほとんど見なくなりましたが)親に怒られ泣く泣くもとの場所に返してくる…と言うことを繰り返してきた私ですが、なぜだかこの時は「絶対!」と言う信念のもとに自宅へ連れて帰り、大反対のスタートもものともせず、とうとう粘り勝ちに持ち込んだのですから、思春期のパワーとは何と底知れぬ力を秘めていることでしょう。

 名前は「KENKEN」。飼い始めた頃は、生後3ヶ月くらいで真っ白で、それはそれは可愛かったんですよ。でも、思い込みとは恐ろしいもので、性別を間違えて(♂と思っていました)つけてしまった、と気づいた頃には後の祭りでしたが、直感的に閃いた名前だったので、とても気に入っています。

 undefined
 これは、高校3年生の夏。私と弟のW受験と言う勝負の時期に、石垣島・与論島・沖縄へ家族旅行に出かけた時の1枚です。今でこそカメラ付携帯電話が普及し、写真を撮ることはとても身近になりましたが、この頃、カメラはまだ貴重品の部類だったので、あまり写真が残っていないのが残念です。

 中学2年生から大学3回生までの、人生の中で最も心揺れ動く時期に出会い、一緒に過ごせたことは、「神様が与えてくれた贈り物」とでも言うほか、言葉が見つかりません。

 しつけが出来るまでは本当に大変でしたが、その何倍も楽しい思い出が残っています。唯一、後悔することがあるとすれば、一緒にいることが当たり前になり過ぎて、その当たり前の毎日がず~っと続く、と思っていたこと。
 
 犬は人間の7倍のスピードで歳をとるので、中型犬では寿命が10年ほど。別れはあっけないほど突然やって来、リプレイ出来ない現実を身をもって知ったのでした。

 それ以来、犬は飼っていませんが、出会いが突然そうであったように、また、神様が私に必要だと思った時にめぐり合わせてくれるもの、と思いながら、楽しみにその時を待っています。


 

2005-05-05

プラハの犬

プラハの犬 2
「♪どうする~?」

【購入場所】
旧市街広場付近の雑貨屋さん

【 体 長 】  17センチ

……………………………………………………………………………………………
次に出会った「犬」はプラハから…
クリスタルや陶製の置物を扱っているお店で目が合ってしまいました。
……………………………………………………………………………………………

 この日はシナゴークやユダヤ人墓地などを見て回っていたのですが、壁面と言わずテーブルと言わず、様々なオブジェが所狭しと置かれているお店にふらりと入り、ほどなくしてある視線を感じて振り返った時に、この「犬」と目が合ってしまったのです。

 こちらを覗き込むような、それでいて真っ直ぐと見上げる視線に、私の心はすっかり get you..... 今で言う、「アイフルのCM状態」に陥ってしまったと言うワケで、それまでは、極力「壊れモノ」はお土産として買わないようにしていたのですが、ど~しても思いが断ち切れず、一大決心のもと、無事「お買い上げ」となった代物です。

 でも、これを機会に「壊れモノ」に対するハードルがぐ~んと下がり、ある意味、「怖いもの無し状態」となってしまったのですから、人間って怖いですね。(お土産履歴をお話すると、「どうやって持って帰ってきたの~?」と感嘆されることしきりですが、今では、「何とかなるものよ~。」とニッコリ答える余裕すら出て来てしまいました。)

プラハの犬 3


  「健気すぎっ!」

 
 中世の街並みが残っていることはもちろん、流れる時間には文化の香りが匂いたち、モルダウの流れが悠久の営みを今に伝えているプラハの街は、ヴェネツィアに続き2番目に好きな街。

 市内には「ボヘミアングラス」など、クリスタル製品を売るお店が数多とあり、日の落ちる時間が早い冬の時期は、人々の営み以外不必要な光のない、夜の帳に包まれた街が静かに、しかし煌びやかに輝き出します。

 煌びやかさと素朴さと。
その二極を愉しめる魅力が、プラハの街には詰まっています。

2005-05-01

シュテーデルの犬

シュテーデルの犬


「 Weiser Hund 」
-白い犬-


所蔵 : シュテーデル美術館 (ドイツ・フランクフルト)
画家 : FRANZ MARC (1880-1916)
profile : 1880年ドイツに生まれたフランツ・マークは抽象画の先駆者と     呼ばれている。36才の若さで戦死(第一次世界大戦)。

……………………………………………………………………………………………
犬好きの私がまずUPする絵がこちら
3度目の旅、シュテーデル美術館で出合った1枚です。
……………………………………………………………………………………………

 私がヨーロッパを旅する当初の目的はオペラやコンサートめぐりが主で、夜のスケジュールに合わせて空いた時間に美術館や博物館などを巡る、と言うのが基本的な流れでした。

 「きれいだな~」「あ~、知ってる絵だ~」などなど、今から思えばとっても稚拙な感想に満足していたような私の中に、「ぬくもり」や「幸福感」、また、直線を多用したモチーフなのに、なぜか感じる「優しさ」や「まろやかさ」、そして「懐かしさ」(昔、犬を飼っていたので)などと言った様々な要素が一つ、また一つと、まるで灯りがともるように沸いてきた感覚…。

 体からは重力が消え、画家のまなざしやモチーフの犬の鼓動などが自分とシンクロし、まばたきもしていないんじゃないかと思うくらい、いくらその絵を見ていても飽きることのないと言うような、一種の「無重力的状態?」を体験した忘れられない1枚です。

 そしてそれは同時に、それまでいかに自分が頭で、また、自分の外側でしか作品を見ていなかったか、ということを教えてくれる機会ともなりました。

※スキャーナーで取り込んだのですが、忠実な再現とまではいかないのが残念です。フランクフルトにお出かけの方は、是非、ご自分の目で確かめてきてください。(^^)