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2005-07-23

頂点を究めた人々

サッカーに次ぐ愛されるスポーツ、それは、モータースポーツ F1 。
そして、子供たちがそろってあこがれるスーパースターは、
F1の皇帝と呼ばれるドイツ人レーサー 【ミヒャエル シューマッハー 】。
明日 ドイツの南西、ホッケンハイムというサーキット場でレースが
開催されるが、お決まりのように いつもそこは赤色に染まる。
そう、赤は彼が所属するイタリア名門、フェラーリのシンボルカラー。
赤に身をつつんだ 熱狂的なファンが集まるレースである。

かつては低迷していたF1人気。
それは、ドイツ人のチャンピオンがいなかったから 。
ところが ドイツ人として、優勝7度の記録を保持し、今も現役で君臨
している彼の効果で、今は国民的な人気である。
レース生中継は、人気民放 RTL の看板。好視聴率をマークする。

今年は、惜しくも若手レーサーたちにリードされ 不調気味。
それでもドイツ人の誇りをくすぐり続けるミヒャエル。
彼の弟や、他ドイツ人レーサーも活躍してはいるが、やはりミヒャエル
の存在感、人気には及ばない。
あの、故アイルトン セナに 「おまえがチャンピオンになるのは俺が
引退してからだ、、」と言わしめた ミヒャエル。
セナが 、近い将来王者争いをすることになるという危機感からの発言、
でも、彼の才能を認めたからだったに違いない。

人気の秘訣。
それは、彼が持つ才能とテクニック。勝利へ向かう気迫、強引さ、プロ意識、
そして、チームのスタッフたちに彼の勝利ためには協力したいと思わせる
存在感、カリスマ性。
それが、ドイツ人の心をひきつける。

それは頂点を究める事がもっとも価値のある事だと思っている
ドイツ人気質にもよるだろう。
それまでの努力や過程、苦労を評価する日本人とは多いに異なる。

原点は、中世から守られている職業教育制度【 マイスター制度】。
親方が弟子を育て、技術を伝授し後継者を育てていく制度。
日本でも現在 【マイスター】ということばが浸透し、各地で使用、
実施されているようだが、ドイツのマイスター制度は、日本の感覚に
比べかなり厳しい。

建築、食品、アパレルなどの法律で決められた手工業に属する種職につき、
開業する場合、マイスター試験に合格し、資格を取得しなければならない。
子供の頃から、職業を意識し、職業訓練学校に通い、見習いから始め、
職業経験を積み、10年かかりやっと受験資格が得られ、
しかも一生に一度しか受けられない。
不合格者は能力が無いとみなされ、、、
2度受けても、何度挑戦しても同じ事、 という厳しい発想が根底にある。
従って、違う職業につきたい、その道でマイスターになって再出発という
人生の修正はこの国ではほとんど、不可能、いや長い時間とひどい労力
を要するのだ。
でもひとたび、このマイスターの資格をとると、個人であっても
一流企業のトップと変わらない、社会的地位と名声を手にすることが
できる。

あ?あ、なんて堅くて 厳しくて 保守的な制度なんだろう?!
でもそれがまた功を成し、 高品質を生産し、国民の自信につながり
ドイツ経済を支えてきた。
ただ、職業学校を選択せず、大学へ進学し、会社員や研究者への道へ
進む人もとても増えている。
そのコチコチの制度が、もはや今の時代にそぐわないことも明らかで
危機感を感じ、もっとゆるやかで簡素、臨機応変に対応できる
就労方法も考案、実施されている。
でも新制度を評価、認める人もまだ少なく、頂点をきわめた人々に
対する ドイツ人の評価はゆるがない。
勝利を追い続け、結果を出しているF1レーサー、ミヒャエルの人気は
よって絶大なのだ。

6才下の弟もF1ドライバー。TOYOTAのマシーンで走る彼のおかげで、
TOYOTA車の人気も急上昇。昔はなかったTOYOTAのディーラーが
ここ最近とても増えた気がする。
この兄弟、弟がF1に参戦したころは、仲が良く支えあっていたが、
最近どうやらぎくしゃくしている。
ドイツのマスコミはそれほど プライベートの事では騒ないので、詳しくは
知るよしもないが、「もう兄は引退するべき、、」など弟の過激な
発言も最近よく耳にする。
日本の相撲界でも兄弟喧嘩が取りだたされているようであるが、
どこでも同じ職業につくと、ライバルとなり
いろいろ確執がおこるのだろうか、、、、
どんなに頂点を究めた人であっても、 「兄弟仲良く、、」
これはまさしく 世界共通標語である。



authornakajima  linkLink   
categoryドイツ便り  time22:09

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