2005-07-31

ドイツサラリーマン事情 ーー夏休みーー

昨晩のニュースは、交通渋滞で持ちきりだった。
10km20kmの渋滞どころか、工事、事故渋滞と重なり150kmの渋滞という
箇所もあった。JAFにあたる、ドイツ自動車連盟(ADAC)も、今週末が今年
夏 シーズン一番の渋滞に陥る事を予測、警告していた。
そう,こちらは休暇シーズン到来、学校の夏休みもスタートしたため、休暇に車で
出かける若者、家族連れが一斉に動き出す。

世界中どこへいっても、日本人とドイツ人には遭遇すると言われる程、ドイツ人
の旅行熱も高い。欧州のみならず、太陽を求め、アメリカ、アジア、アフリカ、
大陸どこへでも出かけて行く。
戦後の高度成長期にあたる60年代、70年代には、旅行へ出かける余裕が
ない家族、学生も多かったが、80年代からは、ドイツ人の旅行熱は、加熱
し続けている。日本と同じ現象だ。

ドイツ人のみならず、欧州の人々はたいてい、2?3週間の長期休暇を取得する。
観光を目的とし、数多くの地を訪れるというより、太陽の下、自然に触れ、
その土地でじっくりのんびりマイペースで休養するタイプの旅となる。
冬は極度に日照時間が少ないため、カルシウム不足で神経機能に障害をきたす
恐れがあり、夏には日光を浴びなければならないという科学的な要因もある。

ただ、シングルや共働きのご夫婦は、休暇にお金をかけられるが、家族を持つ
こちらの会社員。決して毎年3ー4週間の休暇に家族揃って出かけられる程、
余裕があるわけではない。
女性がワーキングマザーとしてフルで働き続けられる社会的システムも、他
先進国に比べ、とても遅れており、多くの幼児、就学している子を持つ女性は、
半日のパートか、専業主婦がほとんど。
従って、毎月決まった限られたお給料から長期休暇を楽しむしか術がなく、
旅のモットーは、【長く、安く】。
これがドイツ人の典型的旅のスタイルとなる。

実際どれくらいの収入なのか、、?
職業や、経験、能力により、さまざまなため、断定できないが、会社員でたと
えば、税込給与額面3、000から4、000ユーロ(40万から50万前後)
ぐらいであろう。4、000ユーロは、いい方で、2、000ユーロ台の種職も
たくさんある。
ただ、給与の40ー45%(最高税率49%)が、年金、所得税、健康保険、
介護保険、教会税などで控除されてしまう。従って手取りは 1800から
2400ユーロ、 (240、000円から320、000円)程度となる。
ボーナスはなく、年に一度、クリスマス休暇手当とし給料の1か月分が支給
される程度であり、ここからも、もちろんしっかり税金が控除されるため、
手取りは半分となる。
残業手当も、かなり税率が上るため、へたに支給されると損。そのため残業
分は、振り替え休日に変える人が多い。

勤勉だと言われたドイツ人であるが、所得が多くなると税も多く納める事から、
勤労意欲をなくし、最近は働く権利ばかりを主張する人も増えている。
以前 あまり働かないとい言われていた、イタリア、スペイン人の方がよっぽど
勤勉だと最近思う。
労働時間も世界で一番短いはずである。
週平均 37、5時間。50年代には、週45時間、1975年には40時間、
1980年には、38、5時間と年々短縮されている。
有給休暇は、年30日。長期休暇を取ることが当然で、会社の上層部もこぞって
長期休暇を取得する。
休暇中は、同僚に仕事は引き継ぐものの、カバーしきれないことがほとんどで、
〈◯◯は只今、休暇中のため、私にはわかりかねます!〉と言い訳けが通る。
休暇から帰ってきても、休暇にでていて仕事が滞ったと攻められる事はなく、
〈休暇はどちらへ?〉と業務上の会話も円滑になる。

なんて、ドイツのサラリーマンは楽なんだろうと羨ましがる方もいらっしゃる
かもしれないが、大変な部分も実は山とある。
やはり日本社会にいられてよかったと思う事もたくさんある。
いずれ又、ここでご紹介しよう。

ホテル宿泊は、出費も重むので、キャンピング場にテントをはったり、
キャンピングカーで寝泊まりしたり。欧州のキャンピング場はとても清潔、
1日1人2、000円前後で過ごせるので、かつ経済的。
また。農家が民宿を兼業しているところも多く、動物や自然にふれるため、
農家滞在や、キッチンつきの長期滞在型アパートを利用する家族も多い。


右の写真は、イタリアのキャンプ場で2週間休暇をすごした時のテント。
2週間もイタリアなんて?と羨ましがられるが、日本とドイツのライフスタイルや価値観の大きな違いは、簡単には埋められない。

車での長旅の後、炎天下、テントをはるのも結構手間がかかる。
哀しいことに2週間も休暇でイタリアにいながら、毎日 パスタをゆで、自炊
していた。外食したのは、最後の夜に1回だけ。
また同じ地にずっといて、散歩する事も、時間がもったいないような気がして、
なかなか馴染めない。
最近は、短くてもいいから、優雅に、いや優雅でなくとも、日常生活から
離れた旅行がしたいとつくづく思う。
1泊2日の温泉で、上げ膳据え膳なんて、 もう今となっては夢の旅行である。
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categoryドイツ便り  time19:33

2005-07-23

頂点を究めた人々

サッカーに次ぐ愛されるスポーツ、それは、モータースポーツ F1 。
そして、子供たちがそろってあこがれるスーパースターは、
F1の皇帝と呼ばれるドイツ人レーサー 【ミヒャエル シューマッハー 】。
明日 ドイツの南西、ホッケンハイムというサーキット場でレースが
開催されるが、お決まりのように いつもそこは赤色に染まる。
そう、赤は彼が所属するイタリア名門、フェラーリのシンボルカラー。
赤に身をつつんだ 熱狂的なファンが集まるレースである。

かつては低迷していたF1人気。
それは、ドイツ人のチャンピオンがいなかったから 。
ところが ドイツ人として、優勝7度の記録を保持し、今も現役で君臨
している彼の効果で、今は国民的な人気である。
レース生中継は、人気民放 RTL の看板。好視聴率をマークする。

今年は、惜しくも若手レーサーたちにリードされ 不調気味。
それでもドイツ人の誇りをくすぐり続けるミヒャエル。
彼の弟や、他ドイツ人レーサーも活躍してはいるが、やはりミヒャエル
の存在感、人気には及ばない。
あの、故アイルトン セナに 「おまえがチャンピオンになるのは俺が
引退してからだ、、」と言わしめた ミヒャエル。
セナが 、近い将来王者争いをすることになるという危機感からの発言、
でも、彼の才能を認めたからだったに違いない。

人気の秘訣。
それは、彼が持つ才能とテクニック。勝利へ向かう気迫、強引さ、プロ意識、
そして、チームのスタッフたちに彼の勝利ためには協力したいと思わせる
存在感、カリスマ性。
それが、ドイツ人の心をひきつける。

それは頂点を究める事がもっとも価値のある事だと思っている
ドイツ人気質にもよるだろう。
それまでの努力や過程、苦労を評価する日本人とは多いに異なる。

原点は、中世から守られている職業教育制度【 マイスター制度】。
親方が弟子を育て、技術を伝授し後継者を育てていく制度。
日本でも現在 【マイスター】ということばが浸透し、各地で使用、
実施されているようだが、ドイツのマイスター制度は、日本の感覚に
比べかなり厳しい。

建築、食品、アパレルなどの法律で決められた手工業に属する種職につき、
開業する場合、マイスター試験に合格し、資格を取得しなければならない。
子供の頃から、職業を意識し、職業訓練学校に通い、見習いから始め、
職業経験を積み、10年かかりやっと受験資格が得られ、
しかも一生に一度しか受けられない。
不合格者は能力が無いとみなされ、、、
2度受けても、何度挑戦しても同じ事、 という厳しい発想が根底にある。
従って、違う職業につきたい、その道でマイスターになって再出発という
人生の修正はこの国ではほとんど、不可能、いや長い時間とひどい労力
を要するのだ。
でもひとたび、このマイスターの資格をとると、個人であっても
一流企業のトップと変わらない、社会的地位と名声を手にすることが
できる。

あ?あ、なんて堅くて 厳しくて 保守的な制度なんだろう?!
でもそれがまた功を成し、 高品質を生産し、国民の自信につながり
ドイツ経済を支えてきた。
ただ、職業学校を選択せず、大学へ進学し、会社員や研究者への道へ
進む人もとても増えている。
そのコチコチの制度が、もはや今の時代にそぐわないことも明らかで
危機感を感じ、もっとゆるやかで簡素、臨機応変に対応できる
就労方法も考案、実施されている。
でも新制度を評価、認める人もまだ少なく、頂点をきわめた人々に
対する ドイツ人の評価はゆるがない。
勝利を追い続け、結果を出しているF1レーサー、ミヒャエルの人気は
よって絶大なのだ。

6才下の弟もF1ドライバー。TOYOTAのマシーンで走る彼のおかげで、
TOYOTA車の人気も急上昇。昔はなかったTOYOTAのディーラーが
ここ最近とても増えた気がする。
この兄弟、弟がF1に参戦したころは、仲が良く支えあっていたが、
最近どうやらぎくしゃくしている。
ドイツのマスコミはそれほど プライベートの事では騒ないので、詳しくは
知るよしもないが、「もう兄は引退するべき、、」など弟の過激な
発言も最近よく耳にする。
日本の相撲界でも兄弟喧嘩が取りだたされているようであるが、
どこでも同じ職業につくと、ライバルとなり
いろいろ確執がおこるのだろうか、、、、
どんなに頂点を究めた人であっても、 「兄弟仲良く、、」
これはまさしく 世界共通標語である。



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categoryドイツ便り  time22:09

2005-07-17

ベートーベンのまぶたの奥には、、、

ドイツ ロマンチック街道。
最初にこの街道名を聞いたのはいつのことだろう。
まだドイツや欧州、いや海外がずっと遠い時代だった。
旅心がくすぐられ、外国への憧れも増し、頭の中では、
童話やおとぎ話しにでてくる場面がぐるぐると展開した。
ドイツに行けは、そこを通れば、 おとぎ話しの世界が
見られると信じていた。

始めて訪れたのは、お客様を連れての添乗だった。
でも、正直がっかりした。
ずっとずっと夢を見るようなロマンチックな世界が
街道沿いに延々と続くものと、勝手に思い込んでいた。
確かに、ローテンブルグなどの街道沿いにある町は、
愛らしい町並みが残り、中世の世界にタイムスリップ、
夢見心地になれる。
でも、バスで走り抜ける街道そのものは、ただの道。
交通量も多い、ただの道。
景色は、果てしなく続く田園風景。
いつしか、まぶたも重くなる。

もともと、ロマンチック=ローマ風=昔風という意味から
名付けられたとある本で読んだ。
古代ローマ帝国時代、ローマ人が北上して作った道も
基礎になっているとか。
それを勝手に解釈し、素敵なおとぎ話しの世界が残っていると
想像していた自分も悪いが、
田園風景が延々と続くなんて、、、つまらない、退屈、、
それが第1印象だった。

ところが、何度が訪れるうちに、四季おりおりの顔をもつ田園、
に魅惑されていった。


春には、菜の花畑が一面に広がり、黄色いじゅうたんがひきつめられ、
夏には、緑も深々とし、色づいた麦の穂が肌色となり、各種の花も加わり
にぎやかになる。
秋には、もちろん紅葉で色とりどり、秋の愁いを演出し、
冬は、雪景色、あたり一面真っ白な広野へと変身する。
いや、ロマンチックだ。
自然がかもし出す、ロマンチックな風景なのだ。

ベートーベンの 交響曲第6番 『田園』
この曲がとても好きだ。
こちらに住む知人から教えて頂いた。
軽快なテンポで、心地よさ、小川のせせらぎ、鳥の鳴き声、雷雨と嵐
など、自然 を奏でる大作だ。
目を閉じて、この曲を聞くと、このロマンチック街道の田園風景が
脳裏に浮かぶ。

ドイツのボンで生まれたベートーベンは、16才で故郷を離れ、
オーストリア、ウィーンに移り住む。
耳が徐々に聞こえなくなり、絶望感に悩まされ自殺まで考えていた中、
自然にふれ、その中から希望を見出し、この作品ができあがった。
音楽家としての運命を呪う中、どうしてこんな明るい曲が
作れたのだろうか。
やはり自然のエネルギーが彼に生きる力を与えたのだろうか。
『田園』という副題も、ベートーベン自身が、名付けたという。

この交響曲 『田園』は、ウィーン郊外のハイリゲンシュタットで
作られた。
でも、きっときっと、おそらくベートーベンのまぶたの奥には
故郷ドイツの豊かな田園風景がしっかり焼き付けられていたに違いない。

そして、今、、ベートーベンが目にしたであろう景色が、
田園風景が200年の時を経て、実際この目で見られるのだから、
やっぱりそれはとってもロマンチックな事なんだと、
強く確信している。

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categoryドイツ便り  time17:30