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2006-03-21

素顔のフィリピン Ⅲ

先月末にタイとフリピンで発生した政情不安。タイでは総選挙へと向かうようだが、
フィリピンでは国家非常事態を宣言し、今月始めには落ち着いたものの、不穏分子ばかりか民衆の声さえも権力で押さえつけてしまう形になった。僕自身も15年ほど前、マニラ添乗中に軍事クーデターに遭遇した事があるが(その時の首謀者だった元国軍大佐は、今では上院議員になっている)、このようにアキノ政権後時々発生するクーデター騒ぎや今回のような噂は、国民の大統領に対する不信が原因の一つであり、これは殆ど人気投票になっている大統領選挙にも問題があるようだ。
 アジアでは珍しいキリスト教国家であり、約80%の国民がローマカトリックに帰依しているとはいえ、タガログ語やビサヤ語をはじめ、87語もの言葉が話されている国内にはまだまだ不安が多い。

マゼランがセブ島に上陸した今から500年前、7000の島々からなるフィリピン諸島には、バランガイと呼ばれる大小さまざまなコミュニティーが存在していたにすぎず、現在のような国家が形成されていたわけではなかった。しかしながら、大きいバランガイにもなると中国や日本、アラブなどとも交易をし、各バランガイは比較的平和に共存していたようで、あえて国家を形成する必要性がなかったのだろう。その後、スペインの武力により各島々は制圧され、当時のスペイン皇太子、フィリペの名にちなみフィリピンという一つの群島国家が誕生するが、それは長い間に及ぶ植民地支配の始まりでもあった。太平洋戦争終結後には独立はするものの独裁政権下の時代も長く、本当の意味での独立は、数々の試練に耐え抜いてきた民衆の力によって、アキノ政権が誕生したわずか20年ほど前ではなかろうか。
アジア最大のスラムを抱え、貧富の差も大きく、多くの人は日本のような公的年金や医療サービスを受ける事が出来ないが、家族の絆と信仰を大切にし、常に前向きで明るく陽気な人々は将来の不安をも払いのけてしまう勢いがあり、この国の未来に大きな希望を感じさせる。
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