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2006-09-24

エルニドリゾート

暑さ寒さも彼岸までというが、ここ山形は朝夕めっきり涼しく、過ごしやすくなった。こう気持ちの良い日が続くと、ここが常秋の国だったらなどと、くだらない事を思うようになる。そんな折、常夏の島、セブで小さな飲食店を営む友人からメールが届いた。彼はフィリピンでは珍しく、シーカヤックに本格的に取組んでいるパドラーでもある。その彼が、以前僕が勧めたパラワンにある、エルニドリゾートへ行ってきたというのだ。彼の感想を簡単に紹介するとリゾートとしての基本的なソフトやハードはもちろんのこと、環境や地域社会に対する責任と取組みがとても素晴らしいというのであった。僕が勧めたのもそれが理由であったので、とても嬉しく思った。今日はそのエルニドリゾートのことを少し書きたいと思う。

「この地球という星の上において、自分自身と自然との関係を真に認識できる場所はわずかしか残されていない。まだあまり知られていない、そして自然に対して謙虚に開発をしているエルニドは私のように海を愛する者にとって、実に心安らぐ心地よい島である。私はエルニドを訪れるたびに、その素晴らしい大自然と完璧に戯れることができる」。こう語ったのは残念ながら僕ではなく、映画「グラン・ブルー」のモデルでもあるダイバー、故ジャック・マイヨール氏である。彼にこう言わしめたエルニド、スペイン語で「海ツバメの巣」という意味ではあるが、ここはまさに桃源郷、シャングリラという言葉が一番似合うリゾートであるように思う。

リゾートが出来る以前、1980年代まで、この地域はパラワン北部の貧しい漁村に過ぎず、海ではダイナマイトや化学薬品を使った漁の影響で資源は枯渇し、わずかな経済上の利益も失われようとしていた。そんな状況の中、ここにリゾート開発の白羽の矢が立ったのは、フィリピン最後の秘境とも言われ、景観もさることながら、ジュゴンや海ガメなどをはじめとする貴重な生き物が棲む豊かな生態系を持つ環境であったからだろう。環境調査が行なわれ、フィリピン観光省のツーリズムマスタープランの指定観光地に選ばれると、リゾート開発に関する厳しいガイドラインのもと、フィリピンと日系製糖会社の合弁企業であるTen Knots Development社(以下TKD)がエルニド・リゾートの開発と運営にあたることとなった。TDKにはエルニド哲学なるものがあり、人間が自然を征服して開発するのではなく、人間が自然の中に入らせていただくという、謙虚な考えのもとにリゾートづくりがすすめられた。スタッフの多くは地元住民から採用され、適切なトレーニングを受けることによりホテル業務ばかりではなく、環境上の課題や解決にも自ら取組み、また地元の高校生に環境保護や資源管理など、持続可能な開発による自然との共生を教えている。
 TDKのリゾート事業は多方面に経済的な恩恵も与え地域全体が大きく変化したようだ。しかし、一番の変化はTDKの事業の成功によりエルニドの住民が、これまでとは違う自然との関わり合いがあることを知り、またそれを実践することにより経済的な利益が生まれることを学び、自然との新たらしい関係を築いたことだろうと思う。
僕はエルニドでのケースはこれからのリゾートとその開発の方向を示しているように思うし、またツーリズムの持つ大きな可能性を感じられずにはいられない。

 エルニド・リゾートは“神々の島”と言われるミニロックと“人魚の島”と言われるラゲンの二つのリゾートから成る。クリスタルブルーやライムグリーンの海からそそり立つ黒大理石の島々。17世紀にここを訪れたスペイン人はあまりの美しさに息をのみ、飛び交う海ツバメからその名だけを残して去っていったという言い伝えがある。それから4世紀後の今でも、エルニドはいささかも変わることがない美しい自然を完璧に楽しむことができる場所なのです。




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