2008-04-29

Ma17 イバン族 ロングハウス

東京ぶんぶん ’00,03,01  ボルネオ島サラワク州の北部の中心都市ミリから約1時間、海岸沿いのイバン族のロングハウスに向かったのは、ガイドのジョニーが強く薦めたからである。彼はイバン族の出身で、遠い親戚の叔父さんがいるからエコロジーの後学のために、是非彼らの生活を見ておいた方が良いという。

2月27日の朝、ガイドのジョニーとぼくの二人で、ミリの町からイバン族の村までワゴン車で1時間あまり走った。最初は普通の舗装道路だったが、脇道に入るとしばらくは凸凹の道で、ようやくイバン族のロングハウスに到着する。ロングハウスの前は畑になっていて、キュウリやトマトを植えてあり、海にも近く、彼らの自給自足のエコロジーな生活がうかがえる。

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昼間は大人の男性達は森や海に、女性達は畑に食料の調達に行っており、ロングハウスの中には人影は無い。中は思ったよりは綺麗に掃除がされていて、100m以上の長い廊下が続いている。

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村の長老のお爺さんが家の中で、ぼく達を待っているらしい。事前にジョニーが話を付けておいたのだそうである。彼は、話を聞くのに、20リンギットのお礼を出して欲しいと言う。長老は酒を飲みながら、マレー語で昔話をした。「フムフム」とジョニーが頷き英語に通訳し、ぼくも「フムフム」と感心した振りをした。昔は、海では魚が豊富に取れたし、近くの森では、イノシシがたくさんいて、食料には苦労しなかった、という話である。

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帰り際に隣の部屋を覗くと、まだ就学前の学校に行っていない子供達が部屋の中にいる。ジョニーが何事か、マレー語で話しかけるとそばに寄ってきて、笑顔で答え、はしゃぎ始めた。

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ジョニーの説明によると、お母さんがもうすぐ畑から戻り、お昼ご飯を作ってくれるのを待っているのだそうだ。どこの国の子供も幼い頃が1番可愛い。畑から子供達の母親が帰ってきたので、表にでて挨拶をすると、遠い親戚が久しぶりに訪問したので、嬉しいと話し込んでいる。記念写真を撮ってもらうことになり、ジョニーとぼくと二人で、ハイ、ポーズ!

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現地の人たちののどかな生活を垣間見たが、日本人はなんてせっかちで生き急いでいるのだろう。イバン族のようにゆったり生活する人生があっても良いね?とジョニーに聞いてみたら。こんな生活じゃあ退屈すぎて、1週間であきてしまいますよ、と英語の早口でまくし立てた。

ロングハウスから車で帰る時に、先ほどの子供達が廊下から手お振り、また来てね、と言っているように感じ、ジョニーに何て言っていたの?と聞いたら、まあね、・・・と言って黙り込んだ。

帰り道、しばらくしてからジョニーが、ぽつりと、さっき子供達は「今度来るときは、お菓子くらいは持ってきて」と言っていたのです。「この頃は、観光客がお菓子をあげているらしい」と、ジョニーは不満そうに言った。

オレンジ色の太陽が揺らめくボルネオの森は、緑が濃く深く静寂である。(完)

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2008-04-27

Ma16 セピロック ORC

東京ぶんぶん  ’99,10,24   ボルネオ島サバ州のサンダカンの町に近いセピロック・オランウータン・リハビリテーション・センターは、森林伐採などで母親を亡くしたりした幼いオランウータンを保護し森に帰ってから自立できるようにトレーニングをする施設である。

その年の10月上旬、ぼくは一人でぶらっと、2泊3日の予定で、ボルネオエコツアーに参加した。メンバーはイギリスを始め世界中の自然が好きなエコ・トレッカー達6人。主な目的はジャングルをトレッキングしながら、野生の動物を観察したり、動物保護育成活動を視察し、将来母国でのエコ活動の実践に役立てるために研鑽を積んだりするスケジュールである。

10月15日の朝、ぼく達はサバ州の州都コタキナバル空港を離陸。今は懐かしいフレンドシップの旧型機で、空路サンダカンの空港に到着。その足で、セピロック・ORCまでは新品のワゴン車に揺られ、直行した。

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セピロック・ORCは、ボルネオの森に溶け込むような平屋建てで、地味な建物である。センターの入り口に入ると数多くの資料や写真が至る所に展示され、マニアには、良い勉強になる材料で埋め尽くされていた。センターから一歩外に出ると、そこはオランウータンの森が広がっている。

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歩きやすいようにプランクウォークが張られていて、観光客の導線が確保されている。このへんは、旧宗主国のイギリス風であり、整然として気持ちが良い。プラットホームの奥に、野生のオランウータンの赤ちゃんを見つけた。

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どうも兄弟らしい2頭のオランウータンが餌を食べているようである。そのうちに運動用のロープを上手にぶら下がりながら、エッサ、コラサと移動する。

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しばらくすると、山の奥からすでにリハビリを終えて一旦山に返した、成人のオランウータンが餌場にやって来た。係りの人の説明では、完璧に野生に戻るのは難しく、時々このように腹を空かせて食事に来る卒業生もかなりいるそうである。

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まあ、色々な苦労はあるけれども、やはり動物好きでなければ長続きはしないよね、と同行のイギリス人の男性に言ったら、君は動物が嫌いなのかい?と言われ、そんなことないけれども、野生動物の世話は大変だよね。と、言って肩をすくめて見せた。ちょっと写真を撮ってくれないかな?OK、ハイスマイル!

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笑えないでいる自分を感じて、笑えないゴメン、サンクスとすまなそうに言って、自分のカメラを受け取り、今日は天気が良くなって良かったね、ととぼけたことを言った。彼は、まあね、と笑って自分のカメラでオランウータンの写真をバチバチと撮り続けた。明るい日差しの中で、オランウータン達は幸せそうに追いかけっこをして遊んでいた。(完)

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2008-04-11

Ma15 KL レイクガーデンズ

東京ぶんぶん ’02,9,14  9月初旬、サラワク州のグヌン・ガデン国立公園へのエコツアーの帰り道の話である。ぼくは6年ぶりに、中年海外協力隊のチョビヒゲの楠元さんに会う事になり、姪のマリと一緒に、KL、クアラルンプールに立ち寄ることにした。

彼は、マレーシア政府と日本政府外郭団体の日・馬親善交流推進プロジェクトに参加したままもう10年もマレーシアに在住している。

9月11日の朝8時、KL滞在の初日、ホテルのロビーに彼が現れた。相変わらず、丸顔に天然パーマ、鼻の下にチョビヒゲがある。
「なんだ、楠本さん。全然変わらないね」
「小宮さんも、お変わりなくお元気そうで、なによりです」
まずは、お互いの顔を見合わせ第一声。ぼくは連れのマリを紹介する。
「この子は珍しく、ジャングルが好きで、近頃一緒にボルネオを探検しているんです」
「おはようございまーす!ぶんぶんの姪のマリでーす。よろしくお願いしまーす」
「こちら、昔ツァーコーディネーターだった楠元さん。6年前、タマンネガラのエージェントファムツアーで、すごく、お世話になったんだ」
「楠本です。宜しく」

取りあえず、お茶を飲みに行こう、ということで、3人でホテルのテールームに落ち着いた。彼は、これから日系私立大学の設置プロジェクトのメンバーとして、9時から仕事なのだそうだ。マア、珍しく仕事に燃えています。相変わらず宮崎訛りを交えて、面白おかしく話し続ける。

ということで、夕方、町のレストランで再会を約束して、彼は、仕事に出かけていった。ぼく達は、かねてから計画していたKLガーデンズの中のオーキッド・ガーデンとバード・パーク、バタフライ・パークを探索する事にした。

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明るい太陽の下。オーキッド・ガーデンは、300種類を超えるランの花が綺麗に整備され、咲き誇っていた。ジャングルもいいけれど、町の中の自然公園もなかなかのものだね。

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次ぎに、バード・パークに向かった。実は、キナバタンガン川で遠い空を飛んでいたホーンビル。あれ以来かな。近くで見ると結構大きな鳥だね。くちばしの上の角に特徴があり、何か変だけど立派な感じがする。

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公園の中程には池があり、ペリカン、フラミンゴ、などの中型の水鳥が休んでいる。え、写真を撮るの、オッケー。

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続いて、バタフライパークを探索する。やはり、中は熱帯の空気が感じられて、摂氏30度に保たれている。

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少し、暑い感じもするが、美しい蝶と花がたくさん。イイ感じ!

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公園の中の、蝶の案内板を見ながら進む。1時間程歩いた後、バタフライパークから外に出ると、空気がひんやりして気持ちが良い。さて、今日のお昼はチャイナタウンで何を食べようかな。(続)

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2008-04-06

Ma14 ダヌン・バレー自然保護区

東京ぶんぶん  ’06,11,24   ボルネオ島サバ州の東端に近いダヌム・バレーの上流は、マレーシア政府により野生動植物の研究と教育を兼ねた「自然保護区」に指定されている。

11月の下旬、ぼくは姪のマリと2人、2泊3日の予定で、ボルネオエコツアーに参加した。メンバーはカダザンドゥスン族のガイド「ジョー」、マリとぼくの3人である。昼は美しい原生林をトレッキング、夜はナイトサファリで野生の象や鹿を探索、大自然を本格的に体験するスケジュールである。

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11月18日の朝、ぼく達はサバ州の州都コタキナバル空港を離陸。空路ラハ・ダトゥの町に到着後、ダヌム・バレーまでは派手な塗装のワゴンに揺られ、2時間余り走る。

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途中、材木置き場の奥に、野生のボルネオ象の赤ちゃんを見つけた。そっと、近づきシャッターを押した。その気配を察したのか、赤ちゃん象は、いちもくさんに、森の中に逃げていった。

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ワゴンに戻り、さらに、走ること30分。ようやくボルネオ・レインフォレスト・ロッジにたどり着く。ロッジ内には宿泊施設として瀟洒なコテージ群が建ち並び、ぼく達は予約していたロッジのバス・トイレ付きの簡素で清潔な禁煙室に落ち着いた。

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夕方からヒルよけのロングソックスをはき、ジョーと自然保護区女性監視員のジェニファーとぼく達2人で、足慣らしのトレッキングに出る。

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原生林に木漏れ日がキラキラと輝き、空気は透明である。落ち葉を踏みしめて歩く道の両側には、巨大な板根のフタバガキ科のデプタリカプス、白い幹のマメ科のメリンガスが聳え立っている。途中の小道を右に進むと突然、目の前が開けキャノピーウオークに出る。吊り橋の上からは、遙かジャングルの黄金色の樹冠が見渡せた。

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翌朝8時過ぎ、ジョーの先導でジャングルを2時間かけ、蛭をよけつつ、山頂近くのビューポイントまで登る。ようやく頂上のテラスにたどりつくと、遙か眼下にレインフォレストロッジが見える。谷から吹き上げる風が心地よい。

気がつくとテラスの下で話し声がする。ロッジの従業員が携帯電話で誰かと話しているらしい。ジョーの説明によると、ロッジには固定電話は無く、山頂に登らなければラハ・ダトゥの町まではモバイルの電波が弱く届かない。文明の利器は便利なようで、場所によっては不便である。

夕食後の夜8時、ハードトップのジープでナイトサファリに出発する。天井のサーチライトを点け、漆黒の山道を疾走する。期待に胸が膨らむ。2時間程走り回り、出会ったのはヤマアラシ2匹。マメジカとルリイロコノハザル。暗がりの中、カメラのフラッシュライトに、両目だけがオレンジ色に反射した。

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期待していたアジアゾウは空振りに終わった。帰り際、ジェニファーがすまなそうに「ソーリー」と肩をすくめた。「ネバ、マイン」ぼくは帽子を取り、笑顔で答えた。宵闇の奥から野鳥の鳴き声が優しく聞こえ、夜霧がひんやりと頬を濡らした。(完)

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2008-04-06

Ma13 グヌン・ガデン国立公園

東京ぶんぶん ’02,09,13   サラワク州最西端に位置する国立公園「グヌン・ガディン」は、クチンからワゴン車で西北西へ約2時間半、南シナ海にほど近いルンドゥの町の先にある。

9月の上旬、ぼくは姪のマリと二人でボルネオエコツアーを計画した。クチンを起点に、ジャングルを歩き回る個人旅行で、3日目は、グヌン・ガディン国立公園まで足を延ばして、ラフレシアを探索するスケジュールである。

9月7日の朝7時、昨日からのツァーガイドの陳さんとぼく達は、クチンのムルデカ・パレス・ホテルを出発。グヌン・ガディンまではワゴン車で2時間半余り走り、ようやくルンドゥの町に到着する。

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公園に隣接して、バッグパッカー用の宿泊施設としてロッジ、ドミトリー群が建ち並び、公園本部の入り口にはジャングルの大きな地図入りの道路案内板があり、その下には世界最大の花、ラフレシアのプラスチック製の模造品が置かれ、動植物の資料を展示したインフォメーションセンターが右手に併設されている。

ウツボカズラ等の植生のパネル写真と動物の剥製などが並んだ、センター内を見学した後、ツァーガイドの陳さんが、中年の公園レンジャー2人を紹介してくれる。ぼく達の為に朝早くから公園内を歩き回り、幻の花ラフレシアを探してくれていたのだ。

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早速レンジャーの案内で、ラフレシアの開花地点に向かって歩き始める。この国立公園内では、観光客がラフレシアを探し回っても、見つけるのは殆ど不可能である。レンジャーの案内の下に、ラフレシアを探索するのが賢明だ。途中、左手に絞め殺しの木を見つけた。

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薄暗いジャングルを1時間余り歩き、午前11時過ぎに山の背を越える。すると、レンジャーの1人が、山の斜面の一カ所を指さした。

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フタバガキ科の巨木の根元に、朽ちかけた落ち葉に浮かぶようにラフレシアが咲いている。

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それはセピア色の巨大な花で、さかりを過ぎたバラを大きく拡大したような肉厚の花弁からは、腐りかけたドリアンのような甘い臭いが、プーンと漂ってくる。その臭さに腰を引き気味ではあったが、花の大きさには感動した。

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公園本部に戻り、レンジャーに別れの挨拶をする。陳さんが小声で、チップをと目配せをした。レンジャー1人あたりの謝礼は20マレーシア・リンギットであり、複雑な思いでチップを渡す。これは公務員への賄賂(袖の下)じゃなかろうかと、陳さんに聞いたら、政府公認のシステムであり、彼らの汗と努力の結晶で、貴重な現金収入なのだそうだ。ジャングルの木漏れ日の中、レンジャー達が手を振る。日焼けした笑顔からは真っ白な歯がこぼれ落ちた。 (完)

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2008-04-05

Ma12 バコ国立公園

東京ぶんぶん ’02,09,12  今年の夏休みに、ぼくは姪のマリと二人、3泊4日のボルネオ個人旅行に出かけた。ボルネオ島サラワク州の州都クチンを起点に、2日目はテングザルなどの野生動物を見にバコ国立公園。3日目は世界最大の花ラフレシアを探しにグヌン・ガディン国立公園。昼間はジャングルトレッキングを楽しみ、夜は猫の町クチン(現地語で猫の意味)の屋台を食べ歩くスケジュールである。

9月6日。2日目の朝8時、ツァーガイドの陳さんとぼく達は日帰りの予定でボルネオ島サラワク州クチンを出発。バコ村まではワゴン車で1時間余り。

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村からボートで公園まで約30分。ようやくバコ国立公園本部があるテロッ・アッサムに到着する。

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公園入口には本部事務所とビジターセンター。隣接してトレッカー用のロッジが数軒、地中海リゾート風に洒落た感じで建っている。

観光シーズンは6月から10月。ピークの8月前後は、毎日のようにエコマニアが訪れ、16あるトレッキングコースはハイカーだらけになる。特にジャングルの野生動物と植生は多様で、1年を通じてその姿が確認される。

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植物はウツボカズラや、マングローブが生い茂り、動物は、カニクイザル、シルバーリーフモンキー、ヒゲイノシシ。天候やコンディションにもよるが、運が良ければまれに、テングザルに会えることもある。運良く、偶然にであるけれども。

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さっそく、ツァーガイドの陳さんの案内で、1時間コースのキャノピーウォークを歩く。まず目に付くのは、ロッジ付近をうろつくヒゲイノシシ。野生の猪が、宿泊客の残飯を漁りに、里に下りてきたという感じである。

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突然、陳さんが立ち止まり、梢の上を指さす。テングザルだ。運がいい。

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その先を歩くと木道の上を走り回るカニクイザルが2、3匹。ちょこまかと、すばしこく動き回る。次に見たのは、水の涸れた川底をのそのそと歩く大トカゲ。

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そこここに、熱帯地方の動物がうようよしている。但し、梢に潜む黄色の毒蛇には要注意。派手な色の爬虫類や昆虫には毒がある。万事、些事にも充分気をつけなければ。

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午後の南シナ海には太陽が輝き、海岸線が美しく、海水は透明である。昼食後、マリとぼくは砂浜でくつろぎ、パラソルの下で日向ぼっこをした。午後3時過ぎ、丘を越え、山の中腹の滝を折り返す最後のトレッキングを楽しむ。帰り際、出迎えのボートの中から遙か水平線を見る。奇岩のシルエットが黒灰色にそそり立ち、その間を緋色の夕日が傾き、ボートの舳先の波が、橙色にきらきら揺らめいている。エコツアー1日目が静かに終わろうとしている。(続) 
     
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2008-04-05

Ma11 クバー国立公園

東京ぶんぶん ’02,02,20  東マレーシア・サラワク州にあるクバー国立公園は、州都クチン市街から西北西へ約30km、ワゴン車で約40分の熱帯雨林の中にある。

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2月の中旬、ぼくは姪のマリを誘い、3泊4日のボルネオエコツアーを計画した。クチンを起点とした個人手配旅行で、2日目にクバー国立公園でジャングル探検とマタン・ワイルドライフ・センターで動植物を観察。3日目には、サラワク・カルチュラル・ビレッジを訪問するスケジュールである。

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2月16日朝9時、小雨の中、ツァーガイドの楊さんがホテルのロビーに迎えに来た。ワゴン車に乗り込み、クバー国立公園までひた走る。公園入り口で車を降り、ジャングルをしばらく歩く。

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その奥に、マタン・ワイルド・センター本部が見えてくる。正面にはコウモリが描かれた案内板があり、その隣には、動植物の資料館と野生生物センターが併設されている。ワゴン車を降り、中に入ると、マメ鹿、ヒゲイノシシ、マレーグマ、ワニ等の檻が立ち並んでいる。

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ぼくとマリは小雨の中、順番にその動物たちを見て歩いた。動物たちは元気なく、寂しげである。やはり野生動物は、ジャングルに棲むべきだと思う。とぼとぼと野生生物センターを出る。「雨がやんだよ」楊さんが明るい声で言った。

翌朝、朝日が眩しい青空の下、ビダユ族を初め、各種族の原住民を集めたサラワク・カルチュラル・ビレッジを訪れた。

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村は大きな池を取り囲んで7つの民族の家屋が建てられている。各種族毎に微妙に言語、服装、文化、風習は違うが、唯一の共通点は、猫好きな所だ。

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各種族毎の家屋には、それぞれ種類や色の違う猫が数匹ずつ居着いている。ぼくも猫好きなので、手を出すと猫の方からすり寄ってくる。国や民族は違えども、猫には猫好きがわかるのかな?

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廊下には観光客が迷わないように、家屋の入り口毎に順路を示す案内板がある。陳さんの和訳を頼りに、園内のガイドの話に耳を傾ける。広場では、先住民の吹き矢や、コマ回し、民族舞踊などのカルチュアルショーが始まっていた。

ボルネオ先住民族の生活実態や文化と歴史をありのままの姿でみせる事こそが、この民族村の設置目的であり、観光客にその文化と歴史の保存を訴え、存在の意義をアピールしている。

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日本では、アイヌ先住民族の祭りや踊りの外面を見せるだけで、本来の生活実態そのものは見せない。ボルネオは自然と先住民族保護の先進地であり、我々日本人が学ぶ事が多い。ぼくは、各民族の融和と共存、文化遺産の存続を願い、村の出口で笑顔の子供達に別れを告げた。(完)

2008-04-05

Ma10 ローガンブヌッ湖畔

東京ぶんぶん ’00,03,01  マレーシア・ボルネオ島サラワク州北東の山の中にある「ローガン・ブヌッ」湖畔は、サラワク州政府により特別保護開発地域に指定されている。

2月の下旬、ぼくは一人でボルネオ個人旅行を予約した。ミリを起点に、ニアとランビル・ヒルズの2カ所の国立公園を日帰りで訪れた後、2泊3日で現在開発中の知られざる秘境、ローガン・ブヌッ湖畔のロッジに宿泊し、昼間は美しい湖で魚釣りを楽しみ、夜は満天の星空を仰ぎ見るスケジュールである。

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2月27日の朝、ぼくはガイドのジョニーと運転手のローニーの3人で、ミリを出発。ローガン・ブヌッ湖畔まではワゴン車で約5時間、途中の小さな町で昼食をとり休憩する。

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さらに川をボートで遡ること1時間余り。切り通しを越え、ようやくローガン・ブヌッ湖畔の簡素な山小屋風のロッジにたどり着く。

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ローガン・ブヌッ湖畔は、高原リゾートの中でもボルネオ・ハイランドに続き、開発後の期待が大きい場所で、1年を通じて気候は安定し、近い将来欧米人の人気スポットになるという。

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シーズンは6月から10月。5年後の営業開始に向け建設中のホテルは、世界中からの予約客で満室になるらしい。今後、ミリからの道路整備にも着手し、湖の枯渇など劇的な自然環境の悪化と投資資金不足などがなく、順調にいけば5年後には新たな高原リゾートが完成する。

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翌朝、手作りの朝食の後、ぼくたちは9時過ぎからボートに乗り込み、湖の中程に繰り出す。湖面が青空を写し、湖水は美しく透明である。ボートから湖に飛び込み、泳いだり、魚釣りをしたり、桟橋で甲羅干しをして過ごした。

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夜中の10時過ぎ、ガイドのジョニーの案内で月明かりに照らされたロッジのテラスに腰かける。星空を仰ぎ見ると西の空に、南十字星が弱々しく瞬いている。その手前に金星が強く光り輝き、地球を取り囲む宇宙の神秘を感じる。

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明け方の水浴びは神聖な儀式である。裏庭に面したシャワー小屋は簡素なベニヤ板で仕切られている。全くの手動式で、雨水を屋根から樋で水瓶にため、水瓶の中から、竹製の柄杓で頭から水をかぶる。トイレも一緒にそこで済ませる。最初はびっくりしたが、郷に入ればなんとやら。ジョニーの指導のもと、生まれたままの姿で、思いっきり元気にシャワーと用足しを済ませたのだ。

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ローガン・ブヌッ湖畔の東の空にオレンジ色の朝日が昇り、ロッジの正面の階段を駆け上がる風に、山吹色の花道がさわさわと優しく揺れている。(完)

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2008-04-05

Ma9 ランビル・ヒルズ国立公園

東京ぶんぶん ’00,02,28  ボルネオ島サラワク州の商業都市ミリから南に約30kmの「ランビル・ヒルズ国立公園」は、1965年からマレーシア政府により、さまざまな動植物の調査対象の国立公園に指定されている。

2月の下旬、ニア国立公園の翌日、ぼくは一人で、ランビル・ヒルズ国立公園エコツアーにエントリーした。同じガイドのジョニーの案内で、ジャングルトレッキング、ツリータワー、3つの滝を日帰りで楽しむスケジュールである。

2月26日の朝、ぼく達2人はミリを出発。ランビル・ヒルズまではワゴン車で約30分。公園入り口には白い屋根のロッジ風の公園本部事務所が建ち並び、ジョニーが事務所で入園手続きをする。何でも、この公園は時間制限が厳しく、滞在時間を事前申告する等の規定が決められている。

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数あるマレーシアの国立公園、自然保護区の中でもランビル・ヒルズは、さまざまな植物のほかに、約200種の鳥類、まめ鹿やテナガザル、ヒゲイノシシ等の動物が確認される。シーズンは6月~10月。ピークの8月前後は、自然マニアの観光客が多く、日本の国際調査団も駐在する。園内には10本以上のトレイルがあり、短いもので片道15分、長いもので4時間ほどである。

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入り口で記念写真を撮り、早速トレイルを歩き始める。ジャングルをしばらくいくと第1の滝にあたる。次に第2の滝を横に見て、川沿いを歩く途中に、五画形の小屋とツリータワーガ見え隠れする。急な木造階段を見上げると、高さ約40mのツリータワーの頂上が見える。木造の階段を螺旋状に何百段も上っていくと、ようやく頂上のテラスにたどり着く。見下ろすと木々の葉の間に小屋が見える。

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見渡すと遙か彼方まで、熱帯雨林の緑の梢が果てしなく続いている。

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テラスの横には粗末なキャノピーが左右にあり、所々壊れかけている。少し危険に見えるが、途中まで、歩いてみる。板張りと太い綱で補強された橋から見渡す緑の森と青い空は格別だ。

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滝つぼでの水浴びは神聖な儀式である。落差10mの滝の水しぶきは神々しくも美しい。深緑色の水の色は少し濁ってはいるが、ぼくは、用意した水着に着替え、ひと泳ぎする。水はびっくりするほど冷たく、気持ちよい。

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帰り際、プランクウォークの手すりに止まっている乳白色で羽化直後のカブトムシを見つけた。ジョニーが「○×△□?」と現地語の名前で説明する。意味不明。

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ジャングルは深緑色の空気で満ちあふれ、風は優しく透明である。(続)

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