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2006-04-17

ブラジル移民・爽快な復讐劇

Amazon.co.jp: 本: ワイルド・ソウルこの本は南米旅行中にお世話になった、
ブラジル・ヴィトリアに住む日本人歯科医Tさんに教えてもらった。
作者・垣根涼介が本書の取材でヴィトリアを訪れたのだそうだ。

海外最大の日系社会を抱えるブラジル。
だがその影に、多くの日本人移民の悲劇があったことを
初めて知った。

この作品は、日本政府に騙されてブラジルへ移民し、
苦難の末に底辺から這い上がった男達のリベンジの物語だ。
ブラジルと東京を舞台に、失った過去を取り戻すかのように、
国家への壮大な復讐劇を繰り広げる。

しかし復讐という言葉から想像される陰湿さは全く無く、
読後には高揚した気持ちと爽快感が残った。
そして「未来の国」「自由の国」ブラジルらしい、
将来は自らの手で掴み取るものだ、というメッセージを感じた。
 
なかでもハイライトと言えるのは、
カーステレオで大音響のサンバをかけながら、
早朝の東京の街を駆け抜ける、官庁襲撃決行のシーンだ。
移民達が過ごしてきた苦悩の長い時間。
それを今終わらせ、自分達が新たな歴史を作るという思い。
それらが軽やかな文体で短い瞬間に凝縮させている。

移民問題という重いテーマにもかかわらず、
個性ある登場人物の描写とスピーディーな展開が読者を飽きさせない。
かなりの長編のため読むのを躊躇していたが、
一度読み出したら早く先を知りたくなる、そんな本である。 

物語の背景となる移民問題もしっかり描かれている。
南米移民史に触れるきっかけとしてもおすすめだ。
 
「ワイルド・ソウル」(垣根涼介著 幻冬舎)


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