2017-08-14

南米一の美食都市、リマ

世界のベスト・レストランが集中

ペルーの首都リマは人口約1000万人、南米太平洋側で最大の都市です。
日本の旅行者の方は、マチュピチュなどへの行き帰りの乗継で短い滞在をされることが多いですが、世界の旅行業界では近年、リマ自体が旅の目的地として注目を集めています。

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その理由は、ズバリ、「食」です。
食の専門家が世界の優れた50店を選ぶ「ザ・ワールド50ベスト・レストラン」に、2017年はリマから3店がランクインしました。この数はパリの5店に次ぐ世界2位で、ニューヨーク、ロンドンと同率です。
旅行業界の優れたサービスや観光地に贈られる「ワールド・トラベル・アワード」では、ペルーが2012年から5年連続で美食部門の世界最優秀賞を受賞、世界で最も美食が楽しめる旅先として認められています。
またリマで毎年9月に開催される「ミストゥーラ」は中南米で最大規模の食のイベントで、前回2016年には10日間で約39万人が来場し、食を堪能しました。
まさにリマは南米一の美食の街と言えるでしょう。

ペルー料理の魅力

世界から注目されるペルー料理、その魅力は伝統と多様性にあります。
世界各地から移民を受け入れてきたペルーでは、各国の民族料理とペルー伝統の料理が融合され、新たな味が生まれてきました。
ペルーの国土は海岸と高地、そして熱帯雨林など変化に富み、アンデス原産のジャガイモやトウモロコシ、伝統的な食材のキヌア、そして太平洋の魚介など食材も豊富なことも、食のバラエティーを豊かにしています。

セビーチェ
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ペルー料理の代表とも言えるのが、「セビーチェ」と呼ばれるシーフードのマリネです。
食べやすいサイズに切った魚と薄切りの紫玉ねぎを、たっぷり絞ったレモンや塩で和え、香草や香辛料を加えます。 
新鮮な魚の旨さと、程よい酸味とピリッとした辛さが混じり合い、シンプルながらもクセになる味。
付け合わせでトウモロコシや芋などを添えることも多く、特にカリカリに炒ったトウモロコシの食感はたまりません。ペルーのビールとの相性もぴったりです。

ロモ・サルタド
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Lomo Saltado Craig Nagy

ロモ・サルタドも有名です。直訳すると「ヒレ肉炒め」、牛肉と野菜の炒め物です。
中華とペルー料理が融合したメニューで、牛肉に玉ねぎ、トマト、パプリカなどを加えて炒めます。味付けは醤油や中華風の調味料が使われますが、プライドポテトも一緒に出てくるのが南米風。白米も添えられます。
今ではペルー料理として定着し、ペルー料理レストランには必ずあるといってもよい定番メニューです。日本人にも馴染みやすい味です。

「料理で国を変えた」シェフ

近年では伝統を生かしつつも現代風にアレンジされた「モダン・ペルビアン」が、脚光を浴びています。
このムーブメントを生み、ペルーを美食の国に押し上げた立役者として名前が挙がるのが、シェフのガストン・アクリオ氏です。
フランスで料理を学んだ後、帰国してリマにレストランを開いたガストン氏は、当初は高級フランス料理を手がけていました。しかしペルー人として外国料理を作り続けることに疑問を感じ、自国の伝統食材や調理法にスポットをあてた料理の探求を始めます。
そしてペルー料理に新たなアレンジを加えて世界へ発信し、ペルー料理ブームのきっかけを作りました。

映画「料理人ガストン・アクリオ 美食を超えたおいしい革命」(2014)


最初の店「アストリッド&ガストン」は「ザ・ワールド50ベスト・レストラン」にランクイン。他にもさまざまな業態のレストランをオープンし、今では欧米にも出店して世界にペルー料理の魅力を伝え続けています。
ペルーを美食の国として世界に知らしめ、料理を通じてペルーの存在感を高めたガストン氏。「料理で国を変えた」とまで言われ、ペルーでは国民的なヒーローです。

ペルー料理と和食の融合「コミーダ・ニッケイ」

19世紀末に始まったペルーへの日本人移住。日本の味をペルーの食材で再現しようとした知恵と工夫は、時を経て独自の進化を遂げ、和食とペルー料理が融合した新しいジャンル「コミーダ・ニッケイ」(日系料理)を生み出しました。
日系料理にはいろいろなメニューがありますが、セビーチェに刺身の素材や技を取り入れてアレンジした「セビーチェ・ニッケイ」や、巻き寿司をペルー風にアレンジした「マキ」などが、ペルーの人々にも親しまれています。



リマの日系料理レストランの中でも今、注目されているのが、リマ生まれの日系人シェフ、ミツハル・ツムラ氏の「マイド」です。店名は氏が修業を積んだ大阪の挨拶から来ています。
メニューは独創的な創作料理で、例えばアマゾン伝統の食材や牛肉などと合わせた、斬新な「ニギリ」の数々や、アマゾンの芋を練りこんだ独特のソバなど。和の伝統を生かしつつ、それにとらわれない新しい食の世界を探求し続けています。
「ザ・ワールド50ベスト・レストラン」にも選ばれ、いつも人気で1か月程先まで予約が取れないほど。事前に計画して行きたいお店です。

世界を魅了し続けるペルーの味。
リマ在住の方の話では、ペルーで子供に一番人気の職業は昔は『サッカー選手』、今は『シェフ』なのだそうです。
伝統のレシピが新しい世代に受け継がれ、進化し続けるペルー料理。
ご自身の目と舌で、ぜひ確かめにいらしてください!

レストラン情報

アストリッド&ガストン Astrid & Gaston
ガストン・アクリオ氏が最初に開いたレストラン。
開店当初の場所から2014年に移転して営業しています。
2017年「ラテンアメリカ50ベスト・レストラン」7位、「ザ・ワールド50ベスト・レストラン」33位。
住所 Avenida Paz Soldan 290, Lima 電話 +51 1 4422777

マイド Maido
ミツハル・ツムラ氏の日系料理レストラン。
2017年「ラテンアメリカ50ベスト・レストラン」2位、「ザ・ワールド50ベスト・レストラン」8位。
住所 399 Calle San Martin, Lima 電話 +51 1 4462512

セントラル Central
シェフのヴィルジリオ・マルティネス氏が手掛けるレストラン。
地元の食材を生かし、ペルー国内各地域の特色を出したメニューが特徴。
2017年「ラテンアメリカ50ベスト・レストラン」1位、「ザ・ワールド50ベスト・レストラン」4位。
住所 Calle Santa Isabel 376, Lima 電話 +51 1 2428515

混んでいることが多いため、事前の予約をお勧めします。
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categoryGeneral  time07:07

2017-08-09

南米の新登録世界遺産、ロス・アレルセス国立公園

ロス・アレルセス国立公園とは

アルゼンチンにあるロス・アレルセス国立公園は、2017年7月に新たに登録された世界遺産です。
第41回世界遺産委員会(ポーランド・クラクフ)にて、氷河が作り出した自然の多様性やパタゴニアの森林の重要性が評価され、登録が決まりました。

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ロス・アレルセス国立公園・フタラウフケン湖
Lago_Futalaufquen By Agus mechi (Own work) [GFDL or CC BY-SA 4.0-3.0-2.5-2.0-1.0], via Wikimedia Commons

●樹齢約2,600年の大木と原生林

ロス・アレルセス国立公園の歴史は古く、創立は1937年。
今回、世界遺産に指定された地域は、バッファーゾーン(緩衝地帯)も含めれば約39万haという広さで、埼玉県がすっぽり入る面積です。
国立公園はパタゴニア北部のアンデス山脈東麓の一角を占め、チリ国境に接しています。
この付近のアンデス山脈は比較的、標高が低いため、チリ側から太平洋の湿気を含んだ空気が入り、年間約3,000mの降水がある多雨地帯となっています。
豊富な水に恵まれ、川や湖、氷河、滝、森林、谷など、変化に富んだ景観が広がります。
固有種や絶滅危惧種の生息地でもあります。

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フタラウフケン湖
Futalaufquen_Lake CC BY-SA 1.0, Enlace

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樹齢約2,600年のパタゴニアヒバ
ALERCE_O_LAHUAN_-_Parque_Nacional_Los_Alerces_-_Chubut_-_Argentina_-_panoramio littletroll [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

国立公園の名は、アンデス原産の針葉樹であるパタゴニアヒバ(スペイン語でアレルセ)に由来し、アルゼンチン最大のパタゴニアヒバ原生林があることで知られています。
この木は世界で最も樹齢が長い種類の一つで、樹齢1,000年以上のものも多く見られます。
ここロス・アレルセス国立公園には「エル・アブエロ」(おじいちゃん)と呼ばれる、樹齢約2,600年、高さ60mの大木があります。
2,600年前といえば紀元前、我々の時間感覚からは全く想像がつかない世界ですね。

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樹齢約2,600年のパタゴニアヒバ
Alerce_milenario By PatagoniaArgentina (Own work) [GFDL or CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

●ロス・アレルセス国立公園の楽しみ方

国立公園の真ん中を南北に流れるアラジャネス川に沿う形で、フタラウフケン湖、リバダビア湖、ベルデ湖、メネンデス湖などいくつもの湖が連なり、川で繋がっています。
園内はボートで移動でき、また川と湖に沿って延びるトレイルを歩くのもお勧めです。
樹齢2,600年の大木はメネンデス湖の奥にあり、まずボートで移動し、下船後に原生林の中のトレイルを歩いて向かいます。

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パタゴニアヒバの森
Alerce Andino National Park By Joshua Stone (Own work) [CC BY-SA 3.0 or GFDL], via Wikimedia Commons

トレッキング、自然観察、写真撮影、釣りなど、パタゴニアの手つかずの自然の楽しみ方はさまざまです。
ハイシーズンは現地の夏の12月~2月くらい、夏でも最高気温が25℃前後と涼しいです。

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Los Alerces National Park, Esquel - Argentina Gustavo Perretto

アクセス

最寄りの都市はチュブ州のエスケルで、ブエノスアイレスからは空路で約2時間30分。
エスケルから国立公園入口までは陸路でおよそ40㎞、車や船を使い、公園内の主要ポイントは日帰りで観光可能です。

ちなみにエスケルは、「ラ・トロチータ」の愛称で知られる観光列車、オールド・パタゴニア・エクスプレスの出発地でもあります。
イギリス人作家、ポール・セルーの著書で紹介され、世界の鉄道ファンに一躍有名になりました。
鉄道は大西洋岸まで繋がる計画でしたが廃線になり、現在では一部が観光列車として復活。
レール幅75㎝の小ぶりの蒸気機関車に引かれ、エスケルからナウエルパンまでの約20kmを3時間かけて、ゆっくりと往復します。
エスケルに連泊し、パタゴニアの田舎の車窓を楽しむ、レトロな列車の旅はいかがでしょうか。

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ラ・トロチータ(オールド・パタゴニア・エクスプレス)
La Trochita Jorge Gobbi | Flickr

ロス・アレルセス国立公園の宿泊

前述の通り、エスケル市内のホテルに滞在して日帰りできますが、国立公園に泊まってゆっくり楽しみたい方は、公園内にいくつものキャンプ場があります。
シンプルなキャンプから、食事やティーサービスまである「フルサービス」のリゾート風キャンプまで整備されています。
ちなみに国立公園でキャンプができるのはキャンプ場のみに限られています。



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categoryGeneral  time08:50