2006-11-23

ハンターバレー ~いつかはペッパーズ~

ペッパーズゲストハウスは、ハンターバレーにおいての私の常宿と言える。
今までハンターバレーには5度宿泊し、全てこのホテルを利用している。

ここに泊まるようになったのには、ちょっとした理由があった。
シドニーで勤めていた頃、会社の同僚のオージーから「友人が京都観光を
するので、日本風の特徴ある宿を紹介してあげたい」との強い思いから、
京都出身の私に宿の選択を求めて来た。
私は、貴船界隈が外国人の目には最もエキゾチックに映るのではないかと思い、
京都に詳しい私の母と相談し、とある、高級旅館を紹介した。
帰国した同僚の友人は、貴船も旅館もよほど彼の嗜好にピッタリ一致したらしく、
同僚を通じて、紹介者の私に対する感謝の意を十二分に伝えてくれた。
同僚も京都出身の私と同じ会社であったことが、自慢になったようだった。

ある日、今度は逆に、私が彼にオーストラリアらしい観光地がどこかと尋ねた。
彼が紹介してくれたところが、ハンターバレーのペッパーズだったのだ。
”古きよきオーストラリア” の雰囲気に浸る為に多くのオージー達が訪れる場所
だと聞き、オーストラリア人の薦めるそんな場所と宿に興味を持った。

ペッパーズゲストハウスは、カントリー風のホテルだ。
カントリー風とはかなりあいまいな言葉なのだが、都会から離れた田舎や郊外の
場所、もしくは、そんな感じの場所、と言うようなイメージがある。
そう考えると、貴船の旅館も日本的カントリー風とも言える。
ようは、オーストラリアの田舎風ホテルである。
日本もそうだが、田舎はだいたいが ”古きよき” という形容が当てはまるので、
例に漏れず、ハンターバレーに建つペッパーズもオージー達からすると、心から
気の安らぐ所なのだ。

ペッパーズの広い敷地は芝で覆われ、遥か遠くのユーカリ林まで続いている。
林の向こうには、遠くヴィンヤードがうねりながら、地平線を生み出している。
ユーカリの木の下に、動く影が見られると思ったら、それはカンガルーだろう。
オープンテラスからは、こんな豪州的風景を眺めながら朝食を取ることができる。
ペッパーズでカンガルーを見るには、早朝が狙い目だ。
早めに起きて、テラス席を確保するように。

ホテル内は、日本では味わえないようなアンティークな雰囲気がとてもお洒落だ。
ディナーの前は、そんなアンティークな趣あるラウンジで、暖炉に灯る火を眺め
ながら、ワインサービスで食欲を高めるのが、至福の時でもある。

ディナーはハンター地区や、ホテルの敷地内で取れた旬の食材を使った7コース
ディナーで、日本人には食べきれないくらいの種類と量がサーブされる。

シドニーに住んでいるオージー達は、週末になると良くハンターバレーを訪れる。
そして、多くは、昔の趣を残すペッパーズのような宿を利用することが多い。
オージーにとって、ハンターバレーは最もオーストラリアらしい場所だ。
しかしながら、オージーが最もオーストラリアらしいと思っているような場所で
あるにも拘わらず、日本人観光客は見向きもしない。
私も長く旅行業に携わっているが、ハンターバレーに泊まる日本人は極めて少ない。
最近では問い合わせもほとんど無い。

残念なことに、日本人の海外旅行の形は未だホリデーと呼ぶには似つかわしくなく、
ネコのヒタイほどの短い休暇をがんばって工面して旅行をしなければならない為、
広大なオーストラリアを観光するには、どうしても主要都市巡りに偏ってしまい、
郊外へじっくり腰を落ち着けて観光するという発想には至らないからだ。
このことは、オーストラリアの魅力を伝える上でとても大きな障害になるので、
私としては、何とも歯がゆいことなのだが、日本の休暇制度に変革が訪れることを
祈りつつ、いつの日か、コアラ、エアーズロック以外にも ”古きよきオーストラリアの
田舎” の魅力を紹介できる日を待ち望んでいるのであった。

hunter valley

2006-11-05

ハンターバレー ~ワイナリー巡り~

ハンターバレーはオーストラリアで最も古い歴史を持つワイナリーである。
このワイナリーは、シドニーからハイウェイを2時間半ほど走った所にある。
ハンターリゾートの古き良きオーストラリアを思い起こさせる雰囲気が好きで、
シドニーに住んでいた頃、仕事で疲れきった心身をリセットさせるのには
絶好の場所だったので、半年に一度の割合で定期的に訪れていた。

大都会のシドニーから程近いリゾートは、ここかブルーマウンテンになる。
ブルーマウンテンは世界遺産にも指定されている国立公園で、ハイキングや
トレッキングなど子供達も楽しむことのできるファミリーリゾートであるが、
ハンターバレーはワイナリーということもあり、大人のリゾートである。

ハンターバレーに到着すると、70余りも点在するワイナリーに迷ってしまう。
初心者の場合、取りあえず一際目立っているワイナリーを目指そう。
「McGuigan Cellars」や「Wyndham Estate」、
「McWilliams Mount Pleasant」などがお勧めだ。
このような大型のワイナリーでは、チーズなどのおつまみも用意されているし、
それより何より、観光客も多く、気兼ねすることなく試飲を楽しむことができる。
私は到着後に、この中の2ヶ所くらいから試飲を始め、徐々に慣れてくると、
新しくできた個人経営のワイナリーを開拓することに決めていた。

デパートの試食に関しては、世界で最も気を使うことの無い日本人ではあるが、
ワイナリーでの試飲となると、まだまだその習慣に慣れていないせいもあって、
よほど肝の据わった人か、よほど人目を気にしない人か、よほど厚かましい人か、
・・・でない限り、とても気を使って、つい購入してしまうのではないだろうか。
私は今でもワイナリーを後にする頃は、両手では持てない程のワインを抱えて
帰路に就くことになってしまうが、こればかりはどうしようもないことだ。

広大なヴィンヤードの中のワイナリーに置かれている作りたてのワインが、
シドニーの街中にあるリカーショップに美しく陳列されたワインと比べて、
実に美味しそうに見えてしまうということも大きな購買要因となっているのだが、
やはり試飲をしている際に、販売スタッフにじっと見つめられると、
思わず「これ下さい」と笑顔で指差してしまうのである。
セラーが愛想の良い女性の場合には、一気に数本と購入してしまうこともある。
ワイナリーには、そんな不思議な魔力がいっぱいあるようだ。
妻は「単に気が弱いだけ」というが・・・

ワイナリーで “本日の一本” を見付けたら、これをレストランへ持ち込めるのも
オーストラリアの楽しい風習だ。
もちろん飲酒運転にならないように、宿の手配は忘れずに。

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